大規模更新は切土法面の補強工事など施工中。耐震補強も紫川や遠賀川渡河部などで対策進める
NEXCO西日本北九州高速 関門橋リニューアルが補剛桁を完了し、終盤へ
2地区総計258本のグラウンドアンカーを施工
防食性能が高い新タイプアンカーによる増し打ち
――切土のり面対策のグラウンドアンカーについて、対策場所(KP)概要、考え方などについて教えてください
本山 九州自動車道の新門司IC~古賀IC間におけるのり面補強工事で大規模更新工事としてグラウンドアンカー工を行っています。主な施工数量は、A地区(九州自動車道 上り線 KP7.8 付近)がグラウンドアンカー工 92本、B地区(九州自動車道 上り線 KP9.8 付近)がグラウンドアンカー工 166本、それぞれ施工しています。
切土のり面対策のグラウンドアンカー施工状況
旧タイプアンカー(1991 年以前)は防食性能が不十分なため腐食による破断等の変状が報告されており、そのままの状況では劣化に伴う健全性低下のリスクが高い状況にあります。アンカーは全体の抑止力によりのり面の安全性を保つことから、数本の機能不全が確認されても即崩壊に至るわけではありませんが、機能不全アンカーが増えるほど崩壊リスクは増大します。
グラウンドアンカー増し打ちの施工概要と新旧グラウンドアンカーの違い
そのため、防食性能が高い(十分な防食機能がある)新タイプアンカーによる増し打ちを、大規模修繕事業として行っているものです。
関門橋ではアンカレイジ部の変状も発生
WJはつり及び断面修復工等補修を実施する予定
――関門橋のアンカレイジ部における損傷状況及び補修方法は?
本山 塩害等により躯体の内側・外側にコンクリートの浮き・剥離・ひび割れ等の変状が発生しているため、ひび割れ注入工・断面修復工・コンクリート表面被覆工等により補修する計画としています。
アンカレイジ部コンクリートの損傷状況
――アンカレイジの補修についてコンクリートをはつる場合、WJを用いると思いますが、関門橋のアンカレイジの側壁補修に関しては塩害により損傷がかなり進んでいる可能性があります。WJによるはつりやその前の詳細調査をどのようにしていきますか
本山 過年度に壇之浦PA側外壁の施工を実施しており損傷状況について確認を行っています。今回の施工箇所においても補修前に打音調査等を十分に行い損傷状況に応じて、WJはつり及び断面修復工等補修を実施する予定です。
2015年に対策していた壇之浦PAに面したアンカレイジ部分のコンクリート補修状況(左)/WJによりはつった(中)/
(右)場所によっては深くはつれてしまったところもあった。(井手迫瑞樹撮影)
ジョイント対策 22年度は12橋18箇所で施工予定
鋼橋塗替え 既設塗膜除去にIH(RPR)と重曹ブラストを採用
――支承やジョイントの取替について、2021年度の実績及び22年度の予定箇所数、取り替える際の工法・種類などをお答えください
本山 ジョイント対策は21年度は九州道で6橋11箇所、椎田道路で2橋4箇所施工しました。22年度は関門道で6橋7箇所、九州道で4橋7箇所、椎田道路で2橋4箇所で施工する予定です。支承は1橋1支承線で交換する予定です。
ジョイント対策状況(左、中左)九州道小倉池橋上り線の施工前後の状況/(中右、右)同九州道沼高架橋上り線の施工前後の状況
――塩害、ASRなどによる劣化の有無はありますか・劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを教えてください
本山 管内においてASRによる損傷はありません。塩害については、伸縮装置からの漏水に伴い、凍結防止剤の影響によるものが、床版端部、橋台等の浮き・はく離の損傷として発生しています。
――2021年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、2022年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、2014年5月30日にでた文書以来、昨年の厚生労働省・国土交通省から出た通達などを受けて、PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。
本山 2021年度の実績としては、2橋(関門橋、本町高架橋)で約2万9千㎡(それぞれ2万4千㎡、5千㎡)を塗り替えています。22年度の予定としては、関門橋リフレッシュ事業の中での主ケーブル改良工事のみで、約3千㎡を実施予定しています。
主ケーブルの点検状況
主ケーブルのIH工法による剥離(左)、同塗替え(中、右)
ハンドロープの取替も進む(左、中(井手迫瑞樹撮影))、ハンガーロープの塗替え(右)
主ケーブルおよびハンガーロープの塗替え内容(井手迫瑞樹撮影)
下関側主塔上から門司側主塔を望む。長大な主ケーブルの補修が進んでいる様がわかる(井手迫瑞樹撮影)
関門橋は21年度の桁補修工事の施工数量として約2万1千㎡を塗替え、桁の塗替えは完了しました。また、主ケーブル改良工事の施工数量として約3千㎡、行っていますが、引き続き22年度も関門橋の主ケーブル改良工事として約3千㎡の塗替えを実施していきます。
また、関門橋の既設塗膜にはPCBが含有されていることや、塗膜厚が非常に厚いため、廃棄物処分量を低減できるIH工法(RPR工法)を採用し、アンカレイジ内へ一定量保管したのちに計画的に運搬・処分する予定としております。
IH工法を用いた既設塗膜の除去①
IH工法を用いた既設塗膜の除去②
今次の塗替え塗装内容、重層ブラスト、下塗りから上塗りまで6層に達することが記されている(井手迫瑞樹撮影)
大規模更新事業である本町高架橋(上り線)床版取替工事では、鋼桁部分にも塗膜の剥がれや発錆などの損傷が確認されたことから、効率的な補修を行うため、床版取替工事に使用する橋桁下の足場(システム足場)を利用した鋼桁の塗替え塗装工事も合わせて実施しました。ここでもIH工法を採用しています。
――関門橋の塗替え塗装工事では、旧塗膜の下地に亜鉛溶射層があります。これを削らないよう、柔らかい重層を使ったバキュームブラストを採用して研掃していましたが、その結果について教えてください
本山 重曹を使ったバキュームブラストを実施する際、懸念されたのが、塗膜下地である亜鉛溶射層まで削ってしまうことや、逆に既設塗膜を除去できない不十分な塗膜除去及び素地調整状態になってしまうことでした。
そのため、実構造物のうち、撤去する部分を用いて、実施工前に、ブラスト作業に従事する技能者全員に対して技量試験を実施しました。さらにブラスト時間や圧力を変化させた施工試験を技量試験と同時に実施し、金属溶射表面の状態について検証確認を行いました。
素地調整の清浄度確認は、素地調整程度の見本版を作って、現場ではそれと比較することで確認すると共に、清浄度を定量的に確認できる「WAクリーン」(IKKショット製)を用いて測定および判定することで、測定者によるばらつきを抑えるようにしています。測定頻度は、1日に施工した範囲の5箇所としました。
また、高力ボルト部などについては、より確実な塗膜除去及び素地調整を行うため、レーザー光照射による鋼材表面の清浄や表面粗さを形成できる「レーザークリアー」(IHI検査計測)を採用しています。
――同橋の主塔塗装の方法は?
本山 主塔の塗替は、補剛桁等と同様にIH工法及び塗膜剥離剤による旧塗膜の除去及び、研掃材に重曹を用いたブラストによる素地調整を行った後、重防食塗装を行う計画としています。
なお、主塔塗替時の仮設工については現在計画中です。
供用状況を考えると主塔部の塗替えの難易度は高そうだ(井手迫瑞樹撮影)
盛土のり面においては浸透水排除を目的とした水抜きボーリングを施工
東九州道(椎田道路)築城IC~椎田南IC間7.7kmの4車線化に着手
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、NEXCOでも道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。
本山 今後も、定期点検や詳細調査の結果に基づき、大規模修繕事業の一環である盛土安定対策を順次進めてまいります。具体的には高速道路リニューアルプロジェクトとして、のり面の長期安定性を確保するため、切土のり面の旧タイプグラウンドアンカーの更新を行います。
盛土のり面においては浸透水排除を目的とした水抜きボーリングの施工を行っています。のり面の小段排水強化として集水ますの跳水対策、第一小段のたて排水溝が呑みきれなくなり、集水ます部で溢水することを想定し、第一小段に止水壁を設置し、断面確保を行っています。
本州と九州を結ぶ重要交通区間である関門自動車道 下関IC~門司港IC間においては、本州と九州をつなぐ重要路線であるため、今後、のり面の耐力を向上させることで、異常降雨・災害による通行止めを低減し、交通確保を目的とするためにのり面の補強(吹付法枠工(1.5m*1.5m)による表層崩落対策)を実施していきます。
――新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について
本山 関門橋リフレッシュ事業として取り組んでいる新技術としては、関門橋主ケーブルの防錆対策として、乾燥空気を送り込むことで湿度低減を図ることが出来る送気システムの設置を行っています。
主ケーブルの防錆対策として、乾燥空気を送り込むことで湿度低減を図ることが出来る送気システムのを設置
――その他、付言して
本山 2021年3月30日に事業許可を受けた東九州道(椎田道路)の築城IC~椎田南IC間7.7kmの4車線化事業についてですが、21年度より、関係自治体や地域住民の皆様へ事業説明を開始しており、22年度から測量等調査、施工計画検討、各種設計を進め、早期着工を目指して事業を進めていきます。
――ありがとうございました