5.床版の劣化損傷調査
2.で述べたような床版の劣化損傷は、定期点検等においても発見することが難しい。そのため、現場において床版の劣化損傷状況および要因を把握するために基礎調査を効率的に且つ効果的に行うことが肝要である。ここでは、電磁波レーダ法(非破壊試験)および小口径削孔法(微破壊試験)による内部欠陥の調査事例を紹介する。
5.1電磁波レーダ法による床版の調査
積雪寒冷地の床版では、写真-9に示すような床版上面におけるコンクリートの砂利化が広く進行し、床版コンクリートの陥没を招く。床版上面の劣化損傷は、舗装表面からの目視による検出が困難な場合が多いことから、より迅速かつ広範囲に脆弱部の範囲や深さを調査することが求められる。電磁波レーダ法による床版の調査状況を写真-10に示す。なお、当該調査には、ニチレキが開発した「床版キャッチャー」3)を使用した。
調査結果の事例を写真-11に示す。赤枠は電磁波の不連続な反射(異常反射)が確認された箇所、砂利化や水平ひび割れ、滞水を表していると推察する。また、当該床版では劣化が全面ではなく部分的に生じているものと推察する。
5.2小口径削孔法による床版の調査
積雪寒冷地における床版の凍害やASRには、写真-12に示すような床版内部で水平のひび割れが進展する特徴がある。また、凍害は舗装面に変状が生じないまま劣化が進行する場合もあることから、床版内部における水平ひび割れの発生状況を把握するため、Single-i工法6)を用いた小口径削孔法による内部観察を行った(写真-12)。
調査結果の事例を写真-13に示す。削孔内部の側視画像を示しており、赤色の樹脂がひび割れ箇所もしくは砂利化発生箇所を示しておる。当該床版ではアスファルト層の下側に劣化損傷が存在することがわかる。また、深さ方向の複数の位置で水平ひび割れが発生していることも確認された。
6.おわりに
積雪寒冷地における床版の耐久性向上に向けた取り組みを紹介した。今後も凍害をはじめとする複合劣化等を受ける床版のメンテナンス技術の確立に向けて重点的に取り組んで行く予定である。
本検討の実施にあたっては、松井繁之大阪大学名誉教授に貴重な意見を賜っている。ここに記して深く感謝の意を表する。
[参考文献]
1) 松井繁之:道路橋床版 設計・施工と維持管理、森北出版株式会社、2007.
2) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説、Ⅰ共通編、pp.102-103、2002.
3) 日本道路協会:道路橋床版防水便覧、2007.3
4) 小浦貴明、大西弘志、松井繁之:道路橋床版における防水システムの付着耐久性評価手法の開発、土木学会第59回年次学術講演会講演概要集、pp.249-250、2004.9.
5) 北海道開発局:平成27年度道路設計要領第6集標準設計図集
6) 渡邉晋也、谷倉泉、佐藤智:コンクリート床版内部に発生した水平ひび割れの微破壊調査方法、土木学会第70回年次学術講演会講演概要集、CS10-006、2015.