NEXCO中日本敦賀保全・サービスセンターは、舞鶴若狭自動車道(以降、舞若道)の橋梁において、舗装が傷んだ箇所における床版防水の再施工を行っている。舞若道は暫定2車線で2014年に供用しており、未だ8年しか経過していないが、路面にポットホールなどが点在するようになり、調査の結果、GⅡで施工した高性能床版防水と基層であるSMAの接着がうまくいっていなかったことが分かった。そのため、既存舗装とGⅡの床版防水をビッグスクレーパーなどで撤去した上で、床版上面を研掃し、周縁部と地覆高欄立ち上げ部はGⅡ、床版中央部は橋梁レベリング層の新たなグースアスファルト舗装BLG(Bridge Levelling Guss asphalt)で床版への水の浸入を防ぐもの。
BLGは床版との間にプライマーを介して打設した40mmのレベリング層がGⅡ相当の防水性能を併せ持つため、、床版防水と基層との間の養生も不要であり、速やかに施工できる。流し込みによる舗設で転圧も不要のため施工性が良く、40mmという層厚のため、舗装面の仕上がり高さの変更も無い。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
既設防水工をビッグスクレーパーで剥ぎ取り、WJで研掃
BLG施工量は2橋で2,000㎡強
今回の現場は、若狭美浜IC~敦賀南SICの間の野坂岳トンネルを挟んだ箇所にある金瀬川橋と井の口川橋の2橋である。現場は暫定2車線であることから、若狭美浜IC~敦賀JCT間について4月17日0時から22日6時までの間、全面通行止めし、橋梁の舗装補修や床版防水の再施工を行った。昨年春から同様の規制を行い、同秋と合わせて2橋の施工を完了しており、今回が3、4橋目となる。
金瀬川橋と井の口川橋の着手前状況(NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)
舗装補修は金瀬川橋で1,018㎡、井の口川橋で1,533㎡が対象となるが、周縁部とトンネル出口付近のロードヒーティング設置個所は、従来のGⅡで施工する。
高性能床版防水工の施工(井手迫瑞樹撮影)
BLGを施工するのは金瀬川橋で760㎡、井の口川橋で1287.8㎡である。
両防水工ともまず、既存のGⅡ防水層を乗用型のビッグスクレーパーではぎ取っていく。ビッグスクレーパーは30cmほどの幅であり、床版面に付着している防水層をこそぎ落としていくわけであるが、「刃の摩耗は尋常ではなく」(元請の日本道路)、幅5×20mごとに刃を交換し、「1橋あたり25枚ほど必要になった」としている。施工効率を上げるためスクレーパーは1橋あたり2台使用した。また、スクレーパーの刃は左右に位置を変えて付け替えられるようになっており、端部もきちんと剥がすことができていた。
調査工/車線分離索の撤去/舗装切削
ビッグスクレーパーによるアスファルト舗装の撤去とWJによる表面研掃
スクレーパーによって剥がし落とした後は、端部も施工できる表面処理タイプのWJで全面を研掃し、GⅡまたはBLGによる施工へと移った。
クッキング温度は190℃、舗設温度は140℃以上を確保して1分1mの速度で施工
表面含水率は3~4%以下にすることを推奨
BLGの施工は、まず地覆立ち上がり部のGⅡの施工から始まる。その後、GⅡと中央部のBLGが重なる継目部分に成型目地材を設置し、BLGを舗設していく。BLGは製造したことがあるプラントが少ない。その製造に当たってはプラントに元請の技術者を入れて、「プラント側と協力して品質を確保」(同)している。
BLGの施工状況1(井手迫瑞樹撮影)
BLGの施工状況2(井手迫瑞樹撮影)
BLGの舗設はクッカー車によりクッキング温度を190℃に設定(右写真、井手迫瑞樹撮影)した上で、舗設温度140℃以上を確保して、専用フィニッシャを用いて1分1mの速度で施工していく。GⅡとBLGのシーム部分も生じるが、BLG舗設前に200mmラップさせるようにGⅡを床版面へ施工している。さらにBLGとG2の立ち上がりの継目には成型目地材を配置して、継目からの劣化が起きないように配慮している。
。BLG上面の舗装は、養生を行うことなく、表層への施工に移行することが可能になるため、プライマーの塗布や養生を含め、10時間ほど施工時間を短縮できる。
BLGの舗設に当たっては、表面含水率を3~4%以下にすることを推奨している。1㎝以下の水膨れは自己収縮して直す性能も有しているため、従来のように針で刺して修繕して回るということが不要であることも魅力だ。
シーム部分の構造
GⅡとBLGのシーム部分(左)、同完了状況(右)
表層の施工(左)/2橋の完成状況(中、右)
元請は日本道路。出荷プラントは岐建。下請は中西鋼機、フタミ、松村建工、常盤工業、スリーエス。二次下請はシガテック、ユナイト(既設床版防水撤去工)。