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圧縮強度は170N/mm2 ひび割れ幅が小さく、水が浸透しにくいことが特徴

大成建設・大成ロテック UHPFRCを用いた既設RC床版上面打換工法『T-Sus Layer』を開発し、輪荷重走行試験実施

公開日:2022.01.11

 大成建設は、大成ロテックと共同で、UHPFRC(超高性能繊維補強セメント系複合材料)を用いた既設RC床版上面打換工法『T-Sus Layer』を開発した。対象は大規模修繕などで想定される床版上面の全面的な打ち換えで、床版上面の脆弱部をWJなどではつった後、30~40mm厚のT-Sus Layerを全面施工する。T-Sus Layerは、コンクリート床版の上面増厚に従来用いられているSFRCと比べて、ひび割れが発生しにくく、ひび割れが発生しても内部に混入している短繊維の架橋効果によりひび割れ幅が小さく(最大でも0.06mm程度)、水が浸透しにくいことが特徴だ。圧縮強度は170N/mm2、ひび割れ発生強度は8.6N/mm2、ヤング係数は53.9kN/mm2(いずれも28日経過時)を有しており、より緻密な補修層を構成でき、ひび割れ開閉や土砂化現象など防水層への負荷も生じにくく、「長期耐久性に優れた上面打ち換え補修を提供できる」(同社)としている。材料の現場での練り混ぜはモバイルプラント『T-ITAN』を用いる。(井手迫瑞樹)

床版の損傷状況例

T-Sus Layerの材料特性/T-Sus Layerの概要図

最大10%勾配にも対応可能 専用モバイルプラント『T-ITAN』を開発
 湿潤面に直接打った方が付着強度を確保できる

 性能的には優れたUHPFRCであるが、現場への適用性については3つの課題があった。①セルフレベリング性を有する材料であることが特質のUHPFRCが、様々な勾配を有する既設橋の床版へ施工できるか、②モービル車やフィニッシャ等の汎用機械による施工が可能か、③既設床版との一体性を確保できるか、である。

 ①については、低流動タイプで早期の強度発現性を高めた配合を選定(材齢24hで49N/mm2)し、フロー値を140~180mmと小さく設定することで、最大10%勾配がある箇所でも適用可能にした。

最大10%勾配がある箇所でも適用可能

 ②については、UHPFRCなどの高性能材料の効率的な練混ぜを可能にしたT-ITAN(タイタン)というモバイルプラントを開発した(右写真)
 750lのミキサーと、計量装置を有する製造プラントからなるもので、10tトレーラー2台に搭載できるため、特車申請を必要としない。UHPFRCはSFRCに比べて粉体量が多い配合であり、練混ぜに時間がかかるため、SFRC用に用いられるモービル車では時間内製造が難しいと判断した。T-ITANは、500l~700lの UHPFRCを12~15分で練り混ぜて供給することができる。


ミキサ下部/UHPFRC排出状況/UHPFRC荷下ろし状況

 製造されたUHPFRCは、ホイールローダーを用いて小分けに運搬され、独自の締固め装置を装着したコンクリートフィニッシャで敷均し、締固めを行いビニールシート等で養生する。敷均し・養生作業は粘性が高い材料に配慮して、バイブレータなどの敷均し装置の仕様をUHPFRC用に変更するなど、一部改良している。


コンクリートフィニッシャの施工

 ③については、むしろ施工性の点で良い工法といえる。ある程度規制時間が確保できる大規模修繕においては床版上面をWJで施工するが、その際に従来製品では、湿潤面を乾燥させる必要があった。しかしT-Sus Layerでは、むしろ湿潤面に直接打った方が付着強度を確保できる。もちろん既設床版のひび割れが多い箇所には乾燥させたうえで、ひび割れ浸透プライマーを塗布し、さらに接着材を全面塗布した上で施工する。

⾧期に亘って、UHPFRCと既設RC床版の一体性を維持

現在は水張り状態で輪荷重走行試験実施中
 既に床版疲労耐久性100年相当に当たる250kN×10万回をクリア

 現在は、輪荷重走行試験機を使って、耐疲労性や防水性、補強効果についての検証を行っている。試験はS47年道路橋示方書に拠って製作したRC床版を変状グレードⅡ-2相当に損傷させたものにT-Sus Layerを施工(上面50mm厚を打換え)したものを用いた。T-Sus Layerの施工は模擬床版をWJではつり、湿潤状態を維持した上で、勾配5%を付加し、専用の小型フィニッシャを用いて施工している。


模擬床版と予備載荷試験状況(変状グレードⅡ-2相当に劣化させた)
模擬床版への上面打換状況

 輪荷重走行試験は水張り状態で行った。模擬床版は幅2800mm×長さ4500mmとし、車輪幅500×走行範囲3000mmで試験した。実験は既に床版疲労耐久性100年相当(乾燥状態)である250kN×10万回を、条件の厳しい水張条件で漏水なく完走した。このことにより、「輪荷重走行下において,施工目地も含めてT-Sus Layerの防水性を検証ができた(大成建設)」としている。現在は、T-Sus Layerの補強効果や破壊状況を確認するため、更なる荷重を与えている状況だ。



本試験概要

実際の輪荷重走行試験状況①(左は裏面のひび割れ状況、右は水張り状況)(井手迫瑞樹撮影)

輪荷重走行試験状況②(井手迫瑞樹撮影)

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