道路構造物ジャーナルNET

含浸材でも異なる

シラン系およびけい酸塩系表面含浸材の適切な使い方

独立行政法人土木研究所
寒地土木研究所 
耐寒材料チーム 研究員  

遠藤 裕丈

公開日:2014.10.16

 近年、コンクリート構造物の維持管理、長寿命化の必要性の高まりを受け、ライフサイクルコストを最小化するための耐久性設計、劣化の進行を抑制するための対策工が広く行われています。対策工の種類や材料は様々ですが、その一つに表面含浸材があります(写真-1)。


写真-1 表面含浸材の施工状況(道路橋の地覆)

シラン系けい酸塩系に大別 
施工後も目視により点検可能

 表面含浸材は、吸水抑制といった所定の性能をコンクリートの表層に付与し、表層の改質を図ることを目的に使用される浸透性の保護材です。①短期間で施工ができ、簡便で安価である、②コンクリートの外観を大きく変えないため、施工後も目視による点検が可能である、③(有機の場合)表面は紫外線の影響を受けるものの、内部の含浸域は影響を受けにくい、④部材改修の際に発生する産業廃棄物の量が少ない、といった長所を有しています。
 表面含浸材の種類は、シラン系けい酸塩系その他に大別されます。改質のメカニズムはそれぞれ異なり、種類の選定を誤ると期待する性能を得ることができません。選定にあたっては、それぞれの特徴を正しく理解する必要があります。ここでは、一般に広く使用されているシラン系とけい酸系の特徴について平易に解説します。
 シラン系には疎水性のアルキル基が含まれています。表面に塗布し、含浸させるとコンクリートの表面や空隙壁面にアルキル基が固着し、含浸域が疎水化され(写真-2)、吸水抑制機能が発現します。水や塩分、炭酸ガスの侵入に起因する塩害、凍害、アルカリ骨材反応、炭酸化の進行抑制(防止ではありません)に効果的です。なお、空隙は充填されませんので、水蒸気透過性は保持されます。そのため、コンクリート内部での水分の滞留に起因する劣化の抑制も期待されます。


写真-2 疎水化した表層(部材から採取したコアの側面に水を噴霧)

 しかし、厳寒地の場合、水中に常時浸かっている部位に塗布すると、凍結時に水がコンクリートの表層に圧入され、圧力が増大して表層に微細なひび割れが多く発生し、表層が早期に欠損(スケーリング)する場合があります(図-1)。水の供給形態が降雨、飛沫、流水程度でしたら、寒さの程度にもよりますが、スケーリングの進行を一定期間、遅らせる効果は期待できます。なお、スケーリングが軽微で、疎水化している部分(写真-2)が残存しているのであれば、吸水抑制効果は基本的に継続されますが、スケーリングの抑制効果を長期にわたって持続させたい場合は塗布量の増加もしくは供用後、劣化がさほど進行していないうちに定期的に再塗布を行う必要があります[1][2]。


図-1 常時水中に浸かる厳寒地の部材で懸念される表層の早期欠損のイメージ

【関連記事】
「水の供給によるコンクリート構造物表面被覆材の剥がれ防止に向けて」
「-凍害の進行予測- 凍害に対するコンクリートの耐久性設計の課題と展望」
「実環境でのシラン系表面含浸材の効果の持続性について考える」
「JR西日本 RCラーメン橋の横梁、縦梁に含浸材塗布を検討」
「けい酸塩系表面含浸材の特徴を暴露試験の結果から探る」

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム