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阪神高速道路の維持管理報文連載

⑥赤外線による鋼道路橋に発生する応力計測

阪神高速道路株式会社
建設・更新事業本部 
神戸建設所 設計課

藤林 美早

公開日:2017.07.18

3.実橋計測

(1)計測の目的
 赤外線技術を活用し、発生応力を数値化し抽出する手法として、パナソニック(株)の保有する赤外線応力測定システムを使用した。赤外線応力測定システムはこれまで、パナソニック(株)にて室内での家電製品の設計検証などに使用されてきており、室内ではひずみゲージとの相関は高く、実績もあり信頼性の高い技術である。

 鋼道路橋を対象にした屋外での計測は、室内と異なり、対象部位までの距離が離れており、気象条件等の外乱の影響を受けるため、ひずみゲージとの相関を確認する必要がある。しかし、赤外線応力測定システムによる鋼道路橋を対象とした屋外での計測実績は少なく、ひずみゲージの代替手法となり得るのかどうか判断できるデータが揃っていない。そこで、赤外線応力測定システムがひずみゲージによる計測の代替手法となり得るかどうかを判断するための基礎データ収集を目的とし、実橋計測を行った。

(2)計測条件
 計測対象は図-1に示すような鋼道路橋の主桁下フランジ下面に発生する橋軸方向の応力振幅とした。試験車通過(総重量200kNのダンプトラック、約60km/h)時に赤外線とひずみゲージにて計測した。計測対象橋梁諸元を表-1に示す。着目断面は単純桁では支間中央近傍、連続桁では中央径間中央点近傍、側径間L/4点(3L/4点)近傍とし、G1・G2桁を対象とした。
 なお、対象橋梁の高架下には図-1と同様に一般道が位置しており、赤外線カメラによる計測はこの一般道の中央分離帯に設置して対象部位を真上に見上げるような角度で実施した。計測時の状況を図-4に示す。


(3)応力振幅値の算出
ひずみゲージは橋軸直角曲げの影響を考慮し、図-5のように主桁下フランジ下面に1軸ゲージを左右2箇所に塗膜を除去した後に貼り付け、応力振幅は2箇所の平均値を用いて算出した。また、赤外線カメラはひずみゲージ貼り付け位置がカメラの視野内に入るよう図-6に示す赤点線枠内を路下から測定し、応力振幅は図-7にて赤点線枠で示される領域のピクセルの平均値とした。

(4)計測結果
本システムとひずみゲージの比較結果を図-8に示す。比較は試験車以外の通行車両の影響を受けていない12ケースで行った。この結果、ひずみゲージにより計測された応力振幅は6~19MPaに対して本システムは8~19MPaであり、両者の差は-4~2MPaであった。差が生じた要因として、計測結果より応力振幅を抽出する際のデータ処理方法の違いが考えられる。具体的には赤外線ではごくわずかな温度の差を評価しているため外乱の影響を受けやすく、環境を考慮したデータ処理が必要となる。しかし、このような外乱の多い環境下でも、この程度の差で計測可能であり、今後比較可能なデータを蓄積すればデータ処理方法を改良していくことができ、ひずみゲージに対する精度はより向上させることができると考えている。

4.まとめ

赤外線とひずみゲージにより計測した実橋での応力振幅を比較した結果、その差は小さく、赤外線はひずみゲージによる計測の代替手法となり得る可能性があると評価している。今後は実橋での計測データを増やし、ひずみゲージに対する精度向上を図りつつ、鋼道路橋の維持管理における具体的な活用方法が提案できるよう引き続き検討していく。最後に、本共同研究の実施に際してはパナソニック(株)渡邊氏、入江氏に貴重なご意見を頂いている。ここに記して感謝の意を表します。

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