⑤本線料金所の撤去
平成24年1月の距離料金への移行による旧料金圏撤廃に伴い、圏境を跨ぐ車両に対して、料金徴収を本線料金所で行う必要がなくなった。しかし、近隣の入口に料金所施設がない箇所では、同入口を利用されているお客様の料金を徴収する必要があるため、本線料金所を引き続き運用している状況にある。阪神高速道路では、同入口に料金所施設の設置を進めており、設置が完了した箇所から本線料金所の撤去を実施している。
昨年の3号神戸線フレッシュアップ工事においては、尼崎料金所の手前にある武庫川入口に新たに料金所施設を設置したことにより尼崎本線料金所の撤去が可能となり、同工事期間中に料金所施設を撤去した。またスムーズな走行となるよう線形を見直し、横断勾配修正を含めた舗装工事を実施し、安全性と走行性の向上を図ることができた(写真6)。
⑥大規模更新・修繕事業の実施
阪神高速道路は昭和39年の開通以来、50年以上経過し、10年後には半数以上の構造物が開通から40年以上経過するなど、新たに「構造物の老朽化」という課題に直面している。構造物の老朽化に対する抜本的対策として、平成27年度より大規模更新・修繕事業(リニューアルプロジェクト)が始動している。
これまでのフレッシュアップ工事においても、舗装・伸縮継手補修と合わせて、鋼桁のき裂損傷に対する抜本的対策として桁連結化工法を実施したり、鋼床版の疲労耐久性向上対策として、上面対策工の鋼繊維補強コンクリート舗装(SFRC)などの修繕工事を実施している(図4、写真7)。
今後のフレッシュアップ工事においても舗装・伸縮継手補修の他、大規模修繕工事として床版取替工事やSFRC施工などもあわせて取り組む必要があり、今後益々、短い期間の中で多種多様な工事が輻輳することになり、より綿密な工程調整が必要となる。
【SFRC舗装のよる補強工事】
・既存のアスファルト舗装を剛性の高いコンクリートに置き換えることにより鋼床版の応力を軽減させ、鋼床版の疲労耐久性を向上させ、超寿命化図る工事。
・SFRCとはSteel Fiber Reinforced Concrete(鋼繊維補強コンクリート)の略で、コンクリートにスチールファイバーを混入した複合材料であり、コンクリートのひび割れが生じにくくなる特徴がある。
(舗装撤去)
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(接着剤塗布)
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(SFRC敷設)
写真7 SFRC敷設状況
4.フレッシュアップ工事に係る情報提供について
フレッシュアップ工事は、期間中の交通影響が非常に大きいため、工事の実施について、いかに広く多くの人々に周知し、交通影響を最小限に抑えることができるかが非常に重要である。
主な広報媒体としては、高速道路や街路上の門型柱等に掲示する横断幕やPAや料金所に設置する看板、テレビ・ラジオCM及び新聞広告などがあげられるが、近年ではインターネットのバナー広告なども行っているところであるが、よりお客様に認知していただくため、新たな広報を展開している。
① 高速道路橋脚への通行止め工事を案内するマグネットシートの貼り付け
従来より、周辺の一般街路に横断幕等を設置することにより事前広報を実施してきたが、高速道路と並走する一般道路を利用されているお客様への周知をより充実させるため、鋼製橋脚に可能な限り大きなマグネットタイプの工事案内を設置している。横断幕より大きく、わかりやすいデザインとなっている(写真8)。
② フレッシュアップ工事期間中における限定乗り継ぎルート
及び迂回経路所要時間の提供
フレッシュアップ工事においては、渋滞等の影響を緩和すべく既設の乗り継ぎルートに加え、工事期間限定の乗り継ぎルートを設定している。(※乗り継ぎルートとは、阪神高速道路を一旦降りて一般道路を利用し、再び阪神高速をご利用された場合にETC車については、阪神高速を連続して利用したものとして実際の通行距離に応じた料金を徴収、現金車は再度の料金をいただかないルートのことをいう。)
工事期間限定の乗り継ぎルートを周知するため、工事リーフレットに乗り継ぎルートを明示した他、平成27年度に実施したフレッシュアップ工事より、工事期間中において、お客さまが乗り継ぎルートを簡単に選択できるよう工事期間限定の乗り継ぎルートの所用時間の提供を試験的に実施した(図5)。
工事後に行った認知度調査においては、工事期間中に阪神高速をご利用になられたお客様のうち、「所要時間比較看板について気づいた」方は全体の7割強に上り、「参考にして走行ルートを決めた」方は35%にも上ることから一定の効果があったものと考えている。
③ NAVITIMEを活用した通行止め工事迂回ルート案内
平成28年度に実施した3号神戸線フレッシュアップ工事より、一般道路も含めた情報提供が可能な民間媒体(㈱ナビタイムジャパン)と連携し、迂回ルート案内を提供した。具体的にはNAVITAIMEのサービス(パソコンサイト、スマホサイト)において、通行止め工事区間を通るルートを検索すると、通行止め工事区間を除外したルート検索結果が表示されるものである(図6)。
5.現場での取り組みについて
フレッシュアップ工事は昼夜連続の施工であり、夜間作業も実施することから沿道にお住いの方にご迷惑をお掛けすることが想定される。また期間も限られているため、工法変更など現場で起こり得る技術的な課題等に関しても瞬時に判断していく必要がある。
そのため、現場近くに現地対策本部を新たに設置し、さまざまな課題に24時間いつでも対応できるような体制を構築している。
本工事においては、期間が限られている中で多くの土木工事と施設工事が輻輳するため、工程調整が非常に重要となる。現地本部においては1日1回、全施工業者との工程調整を行うとともに、必要に応じて工程の再調整を行っている。また現場における注意事項等について情報共有を行い、工事の円滑化と安全の確保を図っている(写真9)。
6.さいごに
阪神高速道路は昭和39年の開通後、およそ50年が経過し、構造物の劣化も顕著となる中、いかにしてお客様や沿道の皆様にご迷惑をお掛けしないように道路を補修・補強し、安心・安全・快適な走行を確保することが使命である。さまざまな補修方法を検討した結果、長い年月をかけ、規制工事を繰り返すよりも短期間に集約して補修した方が、お客様や沿道の皆様に与える影響を最小限にできるとの判断から生まれたのがフレッシュアップ工事である。
平成27年度に実施したフレッシュアップ工事後に実施したアンケートでは、およそ8割の方に「車線規制により長期間に断続的な工事を実施するよりも、短期間の通行止めにより集中的に工事を実施したほうがよい」とご回答いただいており、短期間通行止めによる工事方法についてご理解をいただいていると考えている。
阪神高速道路においては、フレッシュアップ工事に寄せられたご意見やこれまで培ってきた経験により、工事の内容だけでなく情報提供や広報のあり方などに至るまで幅広く蓄積しており、今後もこれらを基に、より良いフレッシュアップ工事を目指して行く所存である。(次回は5月中旬に掲載予定です)
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