■ 喜茂別での試験施工
喜茂別では、図-3に示すように道路橋の地覆に塗布し、凍害の進行状況とコンクリート組織の改質の程度を調べました。コンクリートは2005年9月に打設し、その1ヶ月後の2005年10月に塗布を行っています。喜茂別では7種類のけい酸塩系表面含浸材を選定しています。内訳は、けい酸ナトリウム系が6 種類、けい酸リチウム系が1 種類です。それぞれのカタログや技術資料には、製品の成分やその含有量について詳しく書かれておりませんが、ゲルが生成され、やがて結晶体へ成長し、コンクリートの細孔を充填する旨の改質機構が解説されています。1種類を除き、施工の際は材料と水を併用する仕様となっています。
地覆を幾つかの区間に分け、各メーカーの担当者に施工していただきました。工法として評価するため仕様は統一せず、施工は各メーカーの独自仕様に基づいて行われました。なお、比較のためシラン系表面含浸材も1種類、塗布しています。いずれの区間においても塗布後、コンクリート表面を一定期間マットなどで覆って保護する作業は実施されておりません。部材は塗布終了直後から気中に曝されています。
図-8は、塗布から4年経過した地覆のスケーリング状況をスケッチしたものです。道路側の垂直面にスケーリングが多くみられます。天端面は雪で覆われやすく、凍結融解作用を受けにくいためと考えられます。無塗布区間およびけい酸塩系表面含浸材を塗布した区間ではスケーリングが確認されました。シラン系表面含浸材を塗布した区間ではスケーリングがほとんど確認されませんでした。
次に、コンクリート組織の改質の程度を確認するため、5年経過した地覆からコアを採取し、超音波伝播速度を調べました。調査は、塗布区間を代表して4箇所と無塗布区間の計5箇所で行いました。図-9に結果を示します。深さ5㌢までの範囲をみますと、塗布した方が全体的に超音波伝播速度は大きくなっています。けい酸塩系表面含浸材による空隙の充填や、無塗布区間で凍害が早く進行している可能性などが示唆されます。
スケーリングを抑えるには、コンクリート表層組織の緻密化や、表層への水分の侵入抑制といった対策が必要となります[8]。前者の緻密化を期待してけい酸塩系表面含浸材を塗布したものの、成分が十分に反応せず、スケーリングを抑制できる程の緻密化には至らなかったと考えられます。シラン系表面含浸材を塗布した区間は、後者の水分侵入抑制が十分発揮されたためにスケーリングが抑制されたと思われます。