■ 増毛での暴露実験
増毛の暴露実験では、4種類のけい酸塩系表面含浸材を選定しました。この4種類をa、b、c、d、そして比較対象の無塗布をNと記します。10×10×40cmのコンクリート供試体を作製し、材齢14日に温度20℃、湿度60%の恒温恒湿室において、各メーカーが推奨する手順に従って供試体の打設面に塗布しました。そして、材齢28日に暴露実験場の架台に設置し、5年間、気中に曝しました。実験場は日本海に面しており、塩分が飛来する環境にあります。塗布面以外の5面は劣化因子の侵入を防ぐため、エポキシ樹脂でコーティングしました。この実験では、暴露2、4年目に塩化物イオン量、暴露5年目に超音波伝播速度と圧縮強度および静弾性係数の測定を行っています(図-4)。
図-5は、深さ0~5cm間における塩化物イオンの濃度分布です。暴露2年目に調査したところ、塗布と無塗布の間に明確な差はみられませんでした。暴露4年目に再度、普通ポルトランドセメントを用いた供試体の塩化物イオン濃度を調べてみました。しかしながら、傾向は2年目と同様でした。
図-5 塩化物イオン量の測定結果(増毛、暴露2年目および4年目)
図-6は、暴露5年目に調べた超音波伝播速度です。回収直後に測定したところ、塗布した供試体は無塗布に比べると速度は大きい傾向にありました。なお、超音波伝播速度はコンクリート組織の緻密性と密接な関係にある一方で、コンクリートに水分が多く含まれていると速度は大きく表示されることも知られています[6](超音波は空隙内を伝播しませんが、空隙が水分で充填されていると伝播します)。そこで、供試体を1日乾燥させ、水分を除外した上で再度、測定を行いました。乾燥温度は、コンクリートの細孔容積に大きな変化を与えないとされる40℃[7]としました。同じく図-6に示すように乾燥させても、速度は塗布した方が大きい傾向に変わりはありませんでした。
図-7は、暴露5年目に調べた圧縮強度と静弾性係数の測定結果です。塗布した供試体をみると、無塗布よりも値が高いことがわかります。緻密化を示唆する図-6とも対応しています。
けい酸塩系表面含浸材を適切に塗布することで、生成されたC-S-Hゲルによって空隙がある程度充填され、コンクリート組織の固化が期待されることは確認できました。しかし、塩化物イオンの侵入を抑える効果は、本試験で塗布したけい酸塩系表面含浸材では確認できませんでした。