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中日本高速道路リレー連載⑧

中日本高速道路が抱える保全上の課題(土工編)

中日本高速道路株式会社 
構造技術・支援部

緒方 健治

公開日:2016.02.16

4. 自然斜面

 図7は高速道路での土工構造形態ごとの被災土量を示したものである2)。1件あたりの被災土量は、土石流などの区域外自然斜面からのものが最も多いことがわかる。区域外からの災害の発生件数は切土や盛土の災害と比較すると少ないが、発生した場合は長期間の通行止めや復旧工事を余儀なくされるなど影響が極めて大きいため、自衛手段として対策を検討する必要があると言える。
 土石流災害は時間降雨量が大きい短期集中型の豪雨によって発生することが多く、近年、短時間強雨発生回数が増加傾向にある4)ことを考えると土石流被害の危険性は今後一段と増していくものと思われる。
 また、高速道路では流域面積が0.1平方㌔以下の小さな沢で発生する土石流によって被害を受ける場合が多いことや道路構造別には切土区間における災害事例が多いことが特徴として挙げられる5)。こうした箇所は土石流危険渓流に指定されていない場合がある上に、発生源が道路管理区域外にあるために広範囲な調査が必要であり、災害発生の予知予測が現状では困難であると言える。
 国や県等関係機関との綿密な連携のほかに、解析雨量を活用した短時間強雨の予測、航空レーザ測量を活用した土石流の危険性の調査などの新しい技術の活用が今後必要になってくると思われる。

5. おわりに
 本稿で記述した旧タイプのグラウンドアンカーと崩壊による周辺への影響が大きい盛土に関しては、平成27年3月に更新計画が策定され、大規模修繕を実施することが決定された6)。今後詳細な調査や設計を行い、着実に事業を進めていく予定である。
 高速道路は維持管理の時代から更新事業の時代へと移行してきているが、高速道路以外の道路においても同様に大規模な更新や修繕が必要になる箇所が増加していくことが予想される。これから進めていく新たな更新計画事業や通常の維持管理業務を通して得られた経験や知見を基に、保全技術力をさらに向上させ、情報を社会に広く発信していく必要があると思われる。

1) 高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会 第1回委員会資料、平成24年11月
2) 高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会 報告書、平成26年1月
3)高木ほか、東名牧之原地区における盛土のり面災害の実態、第55回地盤工学シンポジウム、地盤工学会、2010.
4) 気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/heavyraintrend.html)
5) 日本道路公団、土石流対策の手引き、平成15年.11月
6)中日本高速道路ホームページ(http://www.c-nexco.co.jp/koushin/pdf/20150325_keikaku.pdf)

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