中日本高速道路リレー連載⑤
八王子支社管内の構造物の維持管理 国内初 床版更新と外ケーブルによるPC桁補強の併用工法
中日本高速道路
八王子支社
保全・サービス事業部
更新チームチームリーダー
長谷 俊彦 氏
5.八王子支社の大規模補修工事の取り組み紹介
①中央自動車道上長房橋(上り線)
中央自動車道上長房橋(上り線)は、八王子JCT~相模湖東IC間に位置し(図1)、昭和43年に供用開始したRC床版を有する鋼鈑桁橋です。本橋は、供用開始から45年以上が経過しており,近年では、首都圏中央連絡自動車道と交差する八王子JCTの供用により、交通量も交通形態が変わり、また、日交通量約5万台を超える重交通路線となっています。
このような状況下において、上長房橋において、劣化したRC床版の抜本的な補修対策としてプレキャストPC床版を用いた床版取替工事を実施しました。床版取換え工事は,国内の高速道路では初めての取り組みとなる車線運用により、上り線側の通行止めを行なわずに、1車線ずつの車線規制により断面分割プレキャスト床版による段階施工で実施しました。
上長房橋(上り線)の特徴は、上部工形式として鋼3径間連続非合成4主鈑桁(2連)で,昭和39年鋼道路橋設計示方書により設計され,床版支間3.2㍍に対して床版厚が170㍉と薄く設計されており、昭和43年5月の建設当時から既に縦桁補強も実施されています。(図2)
上長房橋(上り線)は、老朽化や重交通による劣化の影響により、特にA1-P1間において,床版下面のひび割れと、鋼桁ハンチ部からの漏水や遊離石灰の析出が確認され、橋面においてもポットホールが頻繁に発生する変状が確認されていました(写真2)。
図3に床版下面のスパン別劣化度判定結果を示します。A1-P1間は、床版下面における平均ひび割れ密度が進行しており、漏水および遊離石灰の発生箇所も存在するため、本橋の床版補修は、A1-P1間をプレキャストPC床版への取替、P1-A2間を床版上面増厚工法で行うこととしました。
従来、高速道路の床版取替工事では、一般的には反対車線を対面通行としながら施工車線の通行止めを行い、プレキャストPC床版等の全断面施工で実施されるのが標準的な施工方法となります。上長房橋を含む区間は、道路構造が橋梁とトンネルを含む区間で上下線の間隔が離れた分離断面構造であり、また、約1.4㌔上流側に小仏トンネル、約1㌔下流側に八王子JCTが位置することから、床版全断面取替施工に必要となる上り線側の通行止めを行うための下り線側への対面通行規制が実施できないことから、中央道集中工事期間を活用して、平日の昼夜間連続車線規制のみによる床版取換工事を実施しました。
集中工事の交通規制は、例年通り5月のゴールデンウィーク明けに実施することとし、その間で、平日の昼夜連続車線規制により1車線を確保しながら半断面ずつ床版取替を実施します。なお、週末の土・日曜日においては、全断面のうちの半断面のみの床版を取替えた状態で、仮舗装により一時的に2車線で交通解放させ、2週目の平日昼夜連続車線規制により、床版取替え工事を完成させる2段階施工としています。今回の断面分割施工は、既設の幅員構成において左路肩幅員が2.7㍍と広いことから、規制時に供用車線をシフトさせ、交通解放時に施工目地部をゼブラゾーンに配置させることで一時的に交通解放することが可能となりました。また、橋梁の高架下にクレーンを配置する施工ヤードが確保することが出来たことから、このような施工が可能となりました。
本橋は、供用当初、対面通行による暫定2車線での運用をしていたこともあり、現在の上り線2車線運用では、構造センターと車線センターに750㍉のずれがありますが、断面分割による施工は、交通に影響を与えないような位置として、1次施工と2次施工の接合部を車線センター近傍に設けることとしました。また、接合部を構造センターに設けるため、床版取替の施工区間で1.95㍍左側に走行車線をシフトし、なお、車線シフトは、本橋を含む前後区間(412メートル)において適切に実施し交通運用を行いました。図5に実施した車線シフトを示します。図中の青色点線部が現行の走行車線を、赤色実線部がシフト後の走行車線を示しています。このように、高速道路の規制工事については、工事による渋滞の発生を必要最小限度に抑えることが大変重要な要素となってきます。