4 金沢支社管内における新しい取組み
4-1鋼桁端洗浄
金沢支社管内で実施された桁端洗浄の事例を写真7に示す。付着塩分の多い下フランジ近傍における改善が著しく、雪氷対策期間の終了後に実施することで大きな効果が望める。
4-2 RC連結ジョイント5)
桁端部の損傷はジョイントからの漏水が主たる原因であるため6)、伸縮装置からの止水対策あるいは損傷した伸縮装置の交換を計画的に実施している。その中で中小橋の伸縮量20mm以下の遊間部においては橋台と桁端部を鉄筋コンクリートで連結するRC連結ジョイント（図9）を基本工法として採用している。RC連結ジョイントは、NEXCO中日本と中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋が共同開発したノージョイント工法である。金沢支社管内においてRC連結ジョイントが適用できるジョイント数は約700カ所あり、平成26年度末までに約200カ所が完了している。
RC連結ジョイントは中小規模の既設コンクリート橋を対象に、路面水の漏出を防止し、走行性改善、維持コストの削減および環境負荷低減ができる。本工法は、温度変化により桁は伸縮するが、基礎構造や下部構造の変形がそれに追従する構造特徴を持つ。
4-3複合防食工法7),8)
複合防食工法は、亜鉛線を鉄筋に沿わせて設置し、高濃度の防錆剤混入で断面修復するもので、中期的には犠牲陽極材（亜鉛線）による防錆効果が発揮され、長期的には防錆剤による防錆雰囲気形成が図られる工法である。本工法の基本的な考え方を図10に示す。
5 おわりに
金沢支社管内では、北陸自動車道に開通後40年を経過した区間が含まれており、損傷、劣化は多種多様であり、土工、トンネル、舗装といった橋梁以外の構造物やガードレール、情報板、遮音壁などにも及ぶ。また各々が潜在的なリスクも抱えている。このため金沢支社では、四半期に1回の頻度で支社長を座長に構造物のリスク検討会を現地で行い、構造物に潜在したリスクの洗い出し、対策を継続的に行っている。
多くの課題に直面しながらも、金沢支社では、「より科学的、合理的かつ説明できる保全」を目指して、安全への意識改革、抜本的な組織の改革、業務プロセスの見直し、安全管理体制の確立、点検・補修技術の高度化、人材育成など多方面なアプローチによる改善を図っている。今後も高速道路のさらなる安全性に寄与すべく、取り組みを続けていく所存である。
【参考文献】
1) 青山實伸，松田哲夫：凍結防止剤によるコンクリート構造物への塩分浸透性状，コンクリート工学年次論文集，Vol.26，No.1，2004.
2) 青山實伸，松田哲夫，野村昌弘：凍結防止剤によるコンクリート構造物中への塩分浸透状況，土木学会第58回年次学術講演会，V-030，2003．
3) 石川 裕一，青山 實伸，倉戸 伸浩，西尾 守広：劣化した道路鋼橋RC 床版の凍結防止剤による塩分浸透特性，コンクリート年次論文集，Vol.32，2010.7
4) 中日本高速道路㈱金沢支社：平成22年度 金沢支社管内土木構造物等調査検討業務，コンクリート構造物調査検討業務 報告書，2011.2
5) 特許開2012-1974，｢橋梁ジョイント構造｣，2012.1
6)熊谷和夫，高橋秀喜，青山實伸：北陸地方の橋梁けた端部のコンクリート部材の損傷特性と劣化推移，土木学会論文集，Vol.798/IV-68，2005.9
7) 特許第4091953号，｢既設鉄筋コンクリート構造物の断面修復構造｣，2008.3
8) 特許第43200403号，｢鉄筋コンクリート構造物の断面修復構造｣，2009.6
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