3-4 ASRによるコンクリート構造物の変状と対応
金沢支社管内においてアルカリ骨材反応(以下ASR)が最初に顕著に現れたのは砺波IC~富山IC間であり、昭和57年頃から橋梁下部工やC‐Boxを中心にポップアウトや亀甲状のひび割れが発生した。調査は、昭和60年に跨道橋(杉谷第2跨道橋:小杉~富山間)で実施したのが始まりである。その結果、滲出物はアルカリシリカゲルであること、コンクリート中のアルカリ量はアルカリ総量規制値の3kg/m3を上回る5.6kg/m3が検出されたことから、ASR膨張によるひび割れと判断された。
金沢支社管内における本格的な補修は、昭和63年よりひび割れ注入とコンクリート塗装が実施された。しかし、補修後まもなく塗装材のふくれ、はがれやひび割れの発生等のASRの再劣化が生じ、ASR膨張がまだ進行中であることが推察された。平成12年より、コンクリート片の落下が懸念され構造物のはく落対策が始まった。富山保全・サービスセンターでは、はく落対策として連続繊維シートによる補修を行うとともに劣化が顕著な橋台に対しては、平成13年度よりASR膨張を拘束するために鉄筋量を増筋する工法や、ポリマーセメントモルタルによる断面修復が取り入れられている。
平成20年には、宮川高架橋(立山~滑川間)の橋脚において、鉄筋の破断が発見された。NEXCOでははじめての事例であり、原因の究明と他の橋梁の同様部位における鉄筋破断の可能性の有無を調査するとともに、ASRに関する調査指針案を作成した。
また、平成20年度から平成23年度にかけて、NEXCO金沢支社と金沢大学とによる「ASRコンクリート構造物の合理的な維持管理手法の確立に関する共同研究」が行われた。本研究では、約10年前に実施した促進養生試験(カナダ法およびデンマーク法)や薄片観察を実施した構造物からコアを採取し、同様な試験を行うことでASRの進行状況を確認するとともにEPMAによりアルカリシリカゲルの成分を分析することでASR残存膨張性の傾向を見出すものであった。この結果、富山県で多く使用されている常願寺川水系や神通川水系の砂利を使用した構造物はASR膨張が収束していないのに対して、福井県で主に使用されている九頭竜川水系の砂利を使用した構造物はASR膨張が収束していると判断した。金沢支社管内におけるASRは以下のような特徴がある。
(1) ASRは、主として福井IC~金沢西ICおよび金沢東IC~朝日IC間で発生している。
(2) ASRの発生している構造物の多くは、下部工およびC-Boxである。
(3)下部工では、橋台や掛け違い橋脚の隅角部、中分開口部等で凍結防止剤を含む漏水
の影響を受ける部位でASRの発生が顕著である。
ASRした構造物の補修対策は、ひび割れ注入やコンクリート塗装が一般的である。しかし、ASRした構造物の補修は、ASR膨張と補修実施時期のタイミングで写真6のような再劣化がみられるため、ASR膨張が収束した構造物は、構造物の長寿命化を図るためひび割れ注入やコンクリート塗装による補修を計画的に実施している。またASR膨張が収束していない構造物は、第三者被害を防止する観点からはく落対策として連続繊維シートの貼付けによる補修を計画的に実施している。