3.橋梁の補修補強について
3-1. 鋼橋の疲労き裂と対応
高速道路上を通行する大型車等の影響により、溶接部で応力集中による疲労き裂が発生している。その中でも、支承の可動不良により発生するソールプレート部の疲労き裂(SP型)は、進展すると主桁下フランジを貫通し、主桁ウェブにまで達する場合には落橋につながる可能性がある。そのため、サンドルやベント等の仮受けにより応急対応すると共に、主原因である鋼製支承の可動不良も合せて補修していく必要がある。(図-7参照)
東京支社では現在、東名高速道路の相模川橋(横浜町田IC~厚木IC)、栗原川橋(厚木IC~秦野中井IC)、坂部高架橋(吉田IC~相良牧之原IC)、勝間田高架橋(吉田IC~相良牧之原IC)の4橋でSP型疲労き裂の補修工事に着手している。これら4橋はいずれも鋼製支承が可動不良になっているため、ゴム支承に取替る。
3-2. 飛来塩分による変状と対応
東名高速道路の由比PA付近(富士IC~清水JCT)は海岸沿いに橋梁が建設されており、飛来塩分によるPC桁の劣化が著しい。海側に建設されている下り線は、コンクリート内部に蓄積された塩分量が多く、表面被覆工法では鉄筋の発錆限界を超えているために電気防食工法を施工している。(図-8参照)電気防食工法とは、コンクリートに設置した陽極システムから鋼材へ電流を流すことにより鋼材の電位をマイナス方向へ変化させ、鋼材の腐食を電気化学的に抑制する工法である。今後は大規模更新・大規模修繕事業と合わせてPC桁の塩害対策に取り組んでいき、橋梁の長寿命化を図っていく。
3-3. 床版の損傷と床版取替
NEXCO中日本は平成27年3月25日に国土交通大臣から更新事業の実施について事業許可を受け、今年度より着手している。東京支社管内でも老朽化、並びに厳しい使用環境による著しい変状が顕在化しており、これまで実施してきた従来の修繕のみでは重大な変状に進展し、通行止め等が発生する恐れがある箇所について大規模更新・大規模修繕を実施していく。
今年度は橋梁の健全度調査、施工計画検討を行なうとともに、東名高速道路の用宗高架橋(静岡IC~焼津IC)で床版取替工事に着手する予定である。用宗高架橋は床版厚が薄く、大型車交通量により床版に劣化が発生しているものの、I形鋼格子床版(グレーチング床版)であり床版下面が鋼板で覆われているため床版の状態を目視で確認できない状態であった。そのため、鋼板漏水調査、鋼板打音調査、衝撃弾性波試験(CTM)、一部鋼鈑を撤去しての内部調査及びコア採取にて床版の劣化状況を調査したところ、床版を貫通したひびわれや空洞が確認された。(図-9参照)