7.おわりに(保全事業において重要なこと)
多種多様な事象が発生し、また、緊急を要することの多い保全の現場においては、過去の点検データや補修履歴などを含めスピード感を持って現状を把握することは最も重要なことである。しかし、今回の業務では、点検データ管理システムに記録・保存されていたデータ(変状数など)のうち一部の古いデータについては、紙媒体であり、集計は手作業で行われ相当の時間及び人数を要した。
任意時期における変状項目、変状数の抽出などはシステム側で対応できるようにシステム改善を行い、業務効率化を図っていくとともに、記録・保存したデータ活用の動機付けを行っていく必要がある。
また、道路構造物の点検・補修記録は、構造物の供用期間中保存し、その記録を活用して点検計画、補修計画を立案することが重要であるが、点検・補修記録を整理することに追われており、点検結果を分析し、他橋梁との比較などを実施する段階までは至っていない。非常に多くの点検結果を保有している中で、点検結果だけでなく、その分析結果についても補修計画へ反映してゆく必要がある。
『トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会』報告書2)において以下のように記されている。
「供用後に道路構造物に不具合が生じることも想定し、維持管理履歴や補修補強履歴を管理することが重要である。」
ここで言う『管理』とは、単に記録保存することではなく、その記録を計画に反映することである。保全業務に関わる人すべてが、こういった意識を持って業務に取り組んでいただくことを期待する。
【参考文献】
1)国土交通省 社会資本整備審議会道路分科会:国土幹線道路部会資料
東・中・西日本高速道路の更新計画について 2015.1.15
2)トンネル天井板の落下事故に関する調査検討委員会:
トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書 2013.6.18
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