5.点検・補修記録の整理により確認されたこと
(1)荏田第二高架橋
点検・補修記録の整理を行う中で、以下のことが見えてきた。
当該箇所の下面増厚床版は、施工後比較的早い段階で遊離石灰が発生し、その後はく離や浮きなどに進展している。この状況は、5年に1回の頻度で実施する詳細点検で確認されており、必要な対策(ネットによる剥落対策)へ展開してきているという状況が確認された。
(2)新吉野橋
新吉野橋の点検・補修記録の整理を行う中では、床版防水工を行った床版は、変状の進行が抑制されていることが確認できた。
当社における床版防水工は、橋面舗装補修に合わせて実施するケースが多い。橋面舗装にポットホールなどが発生し、この時点では、既に床版に変状が発生していることが想定される。従って、床版防水工により変状の進行は抑制することができても、完全に劣化要因を取り除くことはできていないことから、今後の変状の進行状況によっては、抜本的対策を検討していく必要がある。
(3)その他の橋梁
東名阪自動車道 亀山橋、四日市高架橋などでは、国道等交差箇所に第三者被害を防止する目的で、繊維シートによる剥落対策を実施している。
6.今後の対応
(1)構造物の変状の把握と補修計画への反映
道路法施行規則の一部改正(平成26年7月1日施行)により、近接目視により、5年に1回の頻度で行うことが義務化された。
これを受け、当社の保全点検要領を平成26年7月1日に改訂し点検を実施している。この改訂によって見直された主な点検の内容は以下のとおり
■橋梁・トンネル等の定期点検は近接目視により5年に1回の頻度を基本とし、健全性は4段階に区分。
■定期点検を適正に行うために必要な知識及び技能を有する者が点検。
■健全性の診断結果に基づき、道路の効率的な維持及び修繕が図られるよう、必要な措置(補修・補強・撤去の措置、監視、通行規制など)を講ずる。
■定期点検の結果並びに措置等の内容等を記録し、当該構造物が利用されている期間中は保存する。
また、平成27年4月1日の保全点検要領の改訂では、平成26年7月の一次改訂時に反映されなかった内容について反映をし、点検を実施している。代表的な内容については、以下とおり。
■近接目視の方法(接近が困難な場合は、肉眼と同等の判定・評価が可能な非破壊検査機器※により点検を行う。非破壊検査は、マニュアルを適用し、適用範囲限定で点検を可能とする旨を記述)
■点検対象構造物は、省令を準用して点検する5工種に加えて、省令を準用して行う点検、会社独自基準で行う点検を区分。
※「高解像度カメラ」「赤外線カメラ」「トンネル覆工画像」
これらの点検により、構造物の変状を的確にとらえ、その結果を補修計画へ確実に反映していく必要がある。
(2)予防保全の取り組み
床版防水工を施工することにより、予防保全として床版の変状の発生や進行を抑制することができることが今回の点検・補修記録の整理で確認することが出来た。
2015年3月に事業化された特定更新等事業(大規模更新・大規模修繕)で計画的に床版防水工を実施していく。
(3)変状が著しく進展した場合の対応策
今後の点検により、さらに変状が進行した場合は、抜本的な対策として床版取替(大規模更新)を検討する。