3.実施した業務の概要
保全部門においては、構造物の供用開始後に実施した点検・補修記録を電子媒体(古い点検データについては、紙媒体)で保有している。
上郷大成高架橋のように環境対策のために、あと施工した下面増厚床版は伊勢湾岸自動車道の4橋に限定されるが、車両大型化対策としてあと施工した下面増厚床版は13橋存在するため、下面増厚床版と増厚を実施していない床版で発生している変状の種類、進行度合いを把握した上で点検や保全計画を策定することが重要であると考え、保有する点検・補修記録を活用し、変状進行対比を行った。
対比を行う橋梁は、床版下面に繊維シートによる剥落対策を実施しておらず変状が継続的に確認できる橋梁で、供用年度(経過年数)が比較的近い橋梁の中から東名高速道路、中央自動車道の2路線において、それぞれ1橋選定した。
4.データ整理結果
床版で発生している変状の種類、進行度合いを把握するため、選定した橋梁に対し、
①供用年、主な補修履歴など経緯の整理
②下面増厚前後の変状発生位置の確認
③下面増厚床版と未実施床版の変状進行対比を行った。
(1)東名高速道路 荏田第二高架橋(上下線)
①経緯の整理
②下面増厚前後の変状発生位置の確認
【上り線】
・増厚前(1988年度点検)は、10パネルで遊離石灰が発生。そのうち、増厚後(2013年度点検)は、4パネルで剥離や浮きなどの変状が発生している
・床版防水の施工済み範囲でみると、増厚前は、1パネルで遊離石灰が発生していたが、増厚後、その部分で変状は発生していない
【下り線】
・増厚前(1988年度点検)は、31パネルで遊離石灰が発生。そのうち、増厚後(2013年度点検)は、10パネルで剥離や浮きなどの変状が発生している
・床版防水の施工済み範囲では、増厚前(1988年度点検)5パネルで遊離石灰が発生していたが、そのうち、増厚後(2013年度点検)は、1パネルで浮きが発生している
③下面増厚床版と未実施床版の変状進行対比
・下面増厚を行っていない東名多摩川橋は、1988年度点検において、変状(遊離石灰)15を確認したが、その後の点検において確認した変状数の変化は少ない
・下面増厚を行った荏田高架橋は、施工後4年後に変状(遊離石灰)6が現れ、19年後に変状(遊離石灰・はく離・ひび割れ・剥落・うき)は49となった。なお、はく離、うきの規模は、平均すると1箇所当たり0.25平方㍉であった
2)新吉野橋
①経緯の整理
②下面増厚前後の変状発生位置の確認
・増厚前(1999年度点検)は、17パネルで変状(ひび割れ・鉄筋露出・遊離石灰)が発生し、そのうち、増厚後(2010年度点検)は1パネルでの変状(遊離石灰)が発生している
・増厚後(2011年度点検)の点検では増厚前(1999年度点検)に変状を確認していない2パネルで遊離石灰が発生している
③下面増厚床版と未実施床版の変状進行対比
・増厚を行っていない床版は、変状数1(漏水)で推移したが、33年後に変状数(遊離石灰・鉄筋露出、漏水、はく離・剥落)が17に増加した
・増厚した床版は、施工後3~5年後に変状(漏水・遊離石灰)が発生しているがその数は少なく、また、床版防水工施工後の変状数は減少した