中日本高速道路リレー連載第3回は和久田明・本社保全企画本部保全企画チームリーダーに中日本高速道路が抱える保全上の課題(橋梁編)と題して下面増厚したコンクリートの一部落下事故とそれが起きた理由、床版防水工の効果などについて記していただいた。床版防水の有無、施工時期によってどのような状況になっているか数か所の橋梁を調査して対比しており、今後の同社の大規模更新・大規模修繕について示唆に富む報文である。(編集部)
1.はじめに
2014(平成26)年9月2日、伊勢湾岸自動車道 上郷大成高架橋において、環境対策のためにあと施工した吹付けコンクリートが落下する事象が発生した。
現場は四方を遮音壁で囲われており、第三者被害は生じなかったものの、事象の重要性に鑑み、原因究明・再発防止策の整理を行うことを目的に「鋼少数主桁橋の床版下面吹付コンクリートはく離・落下事象調査検討委員会」が設置され、原因究明と再発防止策の審議を行い、4月23日、その結果を当社ホームページで公表した。
(http://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/survey/)
当該吹付けコンクリートは厚さが230㍉であったが、当社管内には、車両大型化対策のためにあと施工した70㍉以下の吹付けコンクリートが多数存在する。厚さ70㍉以下の吹付けコンクリートを有する橋梁を安全に管理していくための点検計画や保全計画の策定に向けて、これまでに蓄積した点検・補修記録(データ)を活用し、吹付け(増厚)を行った橋梁(床版)と吹付けを行っていない橋梁(床版)との変状進行を対比した。
変状進行の対比を行うため、点検・補修記録(データ)の整理を行い、点検・補修記録保存の重要性を痛感した。
橋梁を題材とし、保全上の課題である『点検・補修記録保存の重要性』について報告するものである。
2.事象の概要
(1)路線及び橋梁概要
①道路名 伊勢湾岸自動車道
②橋梁名 上郷大成高架橋
③橋梁型式 鋼7径間連続3主鈑桁橋
(橋長422.5㍍、最大スパン75㍍、床版は橋軸方向長さ2.5㍍ピッチのプレキャストプレテンションのPC床版)
④当該区間の供用年月日 2004(平成16)年12月12日
⑤当該区間の交通量 79,132台/日(2013年平均)
(2)事象の概要
①発生場所 伊勢湾岸自動車道 下り線 豊田JCT~豊田南IC 7.3KP付近
②発生日時 2014(平成26)年9月2日16時20分頃
③発生状況 ジョイント近傍に環境対策のため、あと施工した(下り線)追越車線側の床版下面吹付コンクリートがはく離し、高速道路用地内に落下したもの
・吹付けコンクリート版 1枚(長さ10㍍×幅5.25㍍×厚さ0.23㍍ 約30㌧)
・検査路及び排水管に下面吹付コンクリート版が落下した時に付いた傷痕が認められた
④第三者被害 なし
(3)当社における増厚床版を有する橋梁
①環境対策として主桁間の床版下面を表面処理後、吹付コンクリートで増厚したもの
伊勢湾岸自動車道 上郷大成高架橋(上)他3橋(3箇所)
②主桁間の床版下面を表面処理後、吹付けコンクリート又はコテ塗りで増厚したもの
・東名高速道路 荏田第二高架橋(上)A1~P1、P3~A2
・東名高速道路 荏田第二高架橋(下)A1~P1、P3~A2
・中央自動車道 新吉野橋(上)P3~P4
・中央自動車道 新吉野橋(上)P4~P5
・中央自動車道 新吉野橋(上)P5~P6
他7橋(7箇所)
③張出部の床版下面を吹付けコンクリートで増厚したもの
・東名高速道路 十日市場高架橋(上)
以下、①~③を「下面増厚床版」と言う。