3.名古屋支社管内の橋梁、トンネル、土工の変状状況と対応
3-1.変状の状況
名古屋支社管内の2014年度末時点における変状区分がA判定(変状が進行しており構造物等の性能低下の影響が高い)以上の箇所数をとりまとめたところ、全体の半分以上を橋梁が占めている。また、各構造物において変状を対象部位別に整理すると、多い部位は橋梁では上部工、トンネルでは覆工コンクリート、土工ではのり面であった。(図-5)
橋梁の変状箇所とその状態を確認すると、A判定以上の変状が多いのは上部工であり、中でも特に多いのは「鋼橋のRC床版」で、供用から経過年数が30年~40年経過した「鋼橋のRC床版」に多く発生している。RC床版で特に多い変状は「はく離・浮き」であり、上部工の変状全体の約5割を占めている。また、橋梁付属物の変状では名古屋支社管内で最近増えているものとして、鋼製ジョイントの疲労損傷があげられる。
トンネルではA判定以上の変状が多い部位は覆工コンクリートであり、中でも供用からの経過年数で分類すると1㌔あたりの変状数が一番多いのは50年以上経過したトンネルとのデータがある。同様に、土工においてA判定以上の変状箇所数が多い場所はのり面であり、供用後の経過年数でみると1kmあたりの変状が一番多いのは10年~20年経過した土工となっている。
3-2.鋼橋RC床版の変状と対応
1976年に開通した中央自動車道の伊那IC~駒ヶ根IC間に位置する小沢川橋は、鋼3+5径間連続鈑桁のRC床版橋である。この橋梁には早くから損傷が確認されており、車両大型化対策として、1994年に3径間の主桁増設を行い、翌年の1995年には床版補強として上面増厚を実施している。
しかし、その後下り線の変状が顕著となり、2010年の段階では舗装路面にはポンピングを伴う多くのひび割れやポットホールが頻発し、応急補修時に観察すると床版上面は増厚部と既設床版の界面でコンクリートが土砂化しており、床版下面には漏水とともに遊離石灰が全面的に発生、下面のはく離したコンクリートを除去すると、全面的に腐食鉄筋が露出する状況であった。(写真-1~写真-3)
劣化の要因としては、当時すでに損傷が顕在化していた床版に増厚補強を行っており、その後の経過年数を含めて既設床版では30年以上の経年劣化と、中央道の重交通下における疲労劣化の進行、さらに上面増厚施工時の打継目から雨水とともに凍結防止剤が浸透し、繰り返し荷重の影響と合わせてコンクリートはく離や鉄筋の発錆の進行など、複合的な要因が推定される。2006年度には、排水性舗装に合わせて塗布系床版防水工を施工しているが、床版劣化の進行は止まらなかった。
これらの劣化や損傷状態から抜本的な対策が必要と判断し、2011年に下り線の床版取り替え工事を行い、約1カ月間の対面交通規制においてプレキャストPC床版に取り替えた。(写真-4、写真-5)