6.大規模更新工事の具体的な事例
大規模更新事業にかかる事業費のうち、鋼橋のRC橋梁床版をプレキャストPC床版へ取替える工事は約7,000億円の規模となっている。今後さらなる点検・調査による損傷状況を精査したうえで個別橋梁等の詳細な工事計画を立案していくが、鋼橋のRC床版の取り替え工事の代表的な事例として中央自動車道の小早川橋(長野県)下り線についての工事イメージを紹介する。
① 概要
橋梁名 中央自動車道 小早川橋
位置 中央自動車道 諏訪南IC~諏訪IC
緒元 橋長132m、昭和56年開通、33年経過
② 損傷の状況
重交通(H25年 29,000台/日平均)による床版の疲労に加え、冬期に凍結防止剤(塩化ナトリウム)を散布していることに起因して塩害が発生している。これまでも、床版増厚や部分打替えなどの補強、補修を繰返し実施しているが、架橋から約35年が経過し、通常の修繕ではコンクリート床版のひび割れやはく離などが進行していく状況である。
図12 小早川橋の損傷状況
③ 工事の実施方法
老朽化した鉄筋コンクリート床版を、より耐久性の高いプレストレストコンクリート床版に取り替える。供用中の路線に対しての工事であり、取り替え工事の際の交通影響を軽減させるため、対面通行規制を実施する。
図13 PC床版取替時の対面通行規制
7.大規模修繕工事の具体的な事例
橋梁の老朽化の進展や凍結防止剤や飛来塩分による塩害、重交通による疲労などの影響による変状が発生しており、上部構造(床版、桁)で計画的かつ大規模な修繕を実施することにより変状の進行や新たな変状の発生を抑制する。
① 対策事例1 高性能床版防水工
床版を劣化させる路面からの水、塩化物イオンのコンクリートへの浸透を遮断し、劣化の進行を抑制する。
図14 高性能床版防水工の事例
② 対策事例2 鋼桁の補強
鋼橋の疲労き裂に対して、補強部材により車両走行に伴う応力集中の緩和及び低減を図る。
図15 鋼桁の補強事例
また、旧基準の設計・施工による影響や地盤材料の風化、劣化の影響による変状が発生しているのり面やトンネル全体の長期安定性を確保するため、計画的かつ大規模な修繕を実施することにより、変状の進行や新たな変状の発生を抑制させる。
③ 対策事例3 グラウンドアンカー
防食機能が不十分であった旧タイプに変わり、新タイプアンカーを施工することにより切土のり面の長期安定性を確保させる。
図16 のり面の補強事例
④ 対策事例4 トンネルのインバート設置
トンネル周辺の土圧の増加に対して、トンネルインバートを設置することにより、閉合構造とさせて、安定性を向上させる。
図17 トンネルのインバート設置事例