道路構造物ジャーナルNET

中日本高速道路リレー連載①

中日本高速道路における大規模更新・大規模修繕事業の取り組み

中日本高速道路株式会社 
保全企画本部 
保全担当部長

森山 陽一

公開日:2015.05.16

5.高速道路の本体構造物の変状発生要因と対策の必要性整理

 高速道路の本体構造物は、経過年数や使用環境の影響が一因とみられる劣化に伴う変状が顕著になっており、近い将来これらを要因として、取り替え等の更新を必要とする構造物が増加していくものと考え、構造物の変状状況の発生状況などから劣化進行に大きく影響を与える要因を整理し、対策の必要性と内容を構造物毎に整理した。
 橋梁の鉄筋コンクリート床版(以下「RC床版」という)を事例として以下に整理過程を紹介する。
 ① 変状の分析図5 橋梁におけるPC鋼棒の破断事例
 RC床版について、疲労、塩害、アルカリシリカ反応に関わる各要因及びその組合せ別に健全度を分析した(図8)。この結果、劣化要因が無い「劣無」場合と比較し、何れかの劣化要因がある場合、健全度が低下している。特に「内在塩分かつ飛来塩分」の影響がある場合は、現時点で95%以上床版で健全度がⅢ・Ⅳ・Ⅴと、著しく低下している事が把握できた。また、図9には供用年数別の健全度の推移と予測を示す。この図から、劣化要因 が有る場合には健全度が急激に低下する傾向がうかがえる。また、劣化要因が無い場合でも永続的な健全性の維持は難しいことも把握できた。

         図8 RC床版における劣化要因に対する主な健全度分布

                図9 RC床版の供用年数別の健全度の推移と予測

 

② 大規模更新等事業の必要要件の整理
 「内在塩分+飛来塩分」の影響がある場合は、健全度がと著しく低下しており、早い段階で、耐久性の高いプレストレストコンクリート床版に取替えが必要である。また、何れかの劣化要因があるものは、健全度が今後急激に低下することが想定され、いずれ床版取替えが必要と考えられる。健全度が比較的良好(Ⅰ・Ⅱ)な床版は予防保全(高性能床版防水)並びに床版増厚等により性能の向上を図るが、既に変状が顕在化している場合(Ⅲ~Ⅴ)は、予防保全の効果が十分期待できないと考えられることから、劣化が進行した時点で更新することとした。以上の考え方を基に整理したRC床版における大規模更新等事業の判定フローを図10に示す。

          図10 RC床版の大規模更新等事業の判定フロー

 

 ③ 実施時期検討の考え方
 大規模更新・大規模修繕の実施に当たっては、実施対象となる本体構造物の現在の状態や変状の進行度などにより適切で効果的な対策時期を検討する必要がある。実施時期の検討に当たっては、変状の進行状況の分析及び点検サイクルを踏まえて対策実施時期の期間設定を15年とし、図11に示す流れで優先順位を設定した。

                    図11 対策実施優先順位検討の流れ

 

 なお、委員会において検討した内容は現時点における技術的な知見に基づき検討したものであり、顕在化していない変状や劣化メカニズムが明らかになっていないもの等については含まれていないため、今後とも点検やモニタリングに係る技術向上を図るとともに、適時見直しを実施する必要がある旨が合わせて提言されている。

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