3.有識者委員会における検討と事業許可
様々な損傷が発生している状況を踏まえ、2011.11より高速道路3会社において学識経験者による「高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会」(以下委員会という)を設置し、将来にわたって高速道路ネットワークの機能を確保していくために、高速道路資産の適切なタイミングでの維持管理・更新のあり方について検討を進め、2014.1に最終報告書を公表した。その後2014.2および2015.1の国における社会資本整備審議会国土幹線道路部会での審議等を経て、2015.3に国土交通大臣の事業許可を受け、大規模更新・大規模修繕事業に着手した。
委員会での検討を踏まえ、2015.3に国土交通大臣より事業許可を得た大規模更新等事業を表1に示す。NEXCO3社では約3兆円の総事業費であり、NEXCO中日本では1兆101億円である。なお、NEXCO中日本では、円滑な事業執行を推進するため、4支社に更新チームと先行着手する5か所の保全サービスセンターに更新工事担当課を、2015.4に設置した。
4.道路構造物の変状の現況
委員会では、検討にあたり、構造物の変状発生要因として考えられる事象について以下の①~⑤の項目について整理した。
①過年数の増大
②使用環境の変化(車両の大型化等)
③維持管理上の問題(凍結防止剤使用量の増加)
④外的環境の変化(短時間異常降雨の増加等)
⑤その他の変状リスク
また、橋梁・トンネル・土構造物において、高速道路で発生している損傷・劣化事例について以下に示す。
経過年数の増加に伴う老朽化の進展や大型車交通の増加、総重量等を超過している違反車両の走行、凍結防止剤の使用量の増加により、コンクリート床版の塩害やPC鋼材の損傷が進行している。(図5)
地中の湧水や地下水を起因とするトンネル周辺地山の風化・劣化による強度低下や給水膨張により、トンネル周辺の土圧が増加し、路面の隆起や覆工のひび割れ等が発生している。特に、インバート未設置区間において路面隆起が顕著である。(図6)
グラウンドアンカーの基準類の変遷により1991年以前の旧タイプのアンカーでは、防食機能が不十分であり腐食による変状が発生している。(図7)
排水構造物の設計基準の変遷より1982年以前は、小断面の排水溝を使用しているため排水能力が低い。このため、近年の短時間異常降雨などにより、排水能力を超過した雨水がのり面に流出するリスクが顕在化している。
図5 橋梁におけるPC鋼棒の破断事例
図6 トンネル周辺の土圧が増加し、路面の隆起や覆工のひび割れ等が発生
図7 グラウンドアンカーの旧タイプアンカーの損傷