1.はじめに
NEXCO中日本・東日本・西日本の高速道路会社では、日本の産業・経済に不可欠な存在である高速道路ネットワークの機能を今後も永続的に活用できるように、高速道路の大規模更新・大規模修繕計画をたて、2015年3月25日に国土交通大臣より事業許可を受け事業をスタートさせた。本報告では、NEXCO中日本で今後取り組んでいく大規模更新・大規模修繕の計画についての概要を説明する。なおNEXCO中日本では、中央自動車道笹子トンネル天井版落下事故を受け、「安全性向上3か年計画」を策定し、再発防止と安全性向上に向けた取り組みを行い、安全を何よりも優先し、安心・快適な高速道路空間を提供することにより地域社会の発展と暮らしの向上、日本経済の活性化、そして世界の持続的な成長に貢献することを目指している。
2.NEXCO中日本が管理する高速道路の現状
2015年7月1日で名神高速道路は、全線開通から50年目を迎える。名神の開通を皮切りに、日本の高速道路ネットワークは順次拡大し、現在では9,000㌔を超えた。また、利用台数は一日当たり約700万台に達し、いまや高速道路は、我が国の国民生活や多様な社会経済活動を支える重要な道路インフラとなった。さらに、東日本大震災をはじめ、豪雨・豪雪など最近の経験から明らかなように、災害時の緊急輸送路としての重要な役割を担うなど、国民の安全・安心な暮らしにとって重要な役割を担っている。(図1)
<span”> 図1 日本のGDPの推移と名神高速道路の利用台数の推移</span”>
NEXCO中日本は、首都・中部・北陸圏の1都11県において、東名・名神・東海北陸道など、2,007kmの高速道路を維持管理している(2015.3時点)。東名・名神など大都市圏を結び、大型トラックが数多くご利用いただいている路線や、東海北陸道や北陸道など狭隘な地形を通過し、冬季は多くの降雪がある路線など、お客様のご利用形態・供用環境はさまざまである。
一方で、高速道路の老朽化も着実に進行しており、NEXCO中日本の管理する高速道路では、図2から図4に示すとおり開通後30年以上の供用延長は約6割を超え、道路構造物の経年劣化によるリスクは高まっている。また、総延長2,007㌔のうち、橋梁が448㌔(22%)、トンネルが249㌔(12%)と、NEXCO東日本・西日本に比べて構造物比率が高いことが特徴である。
図2 中日本高速の供用延長と経過年数
これまで、開通以来、きめ細やかな点検を実施し、補修を繰り返してきているものの、大型車両の増加や総重量超過車両の走行、凍結防止剤の使用量の増加、短時間異常降雨など自然環境の変化により、橋梁・トンネル・土構造物などに種々の変状が発生してきている。