中日本高速道路金沢支社が管理する高速道路は北陸自動車道を中心に厳しい環境にさらされている。海岸区間は厳しい飛来塩分、その他の路線は凍結防止剤に含まれる塩分に起因して、それぞれ塩害の影響を受ける。さらに富山管内では骨材起因によるASRが発生し、劣化が進む橋梁も有している。大規模更新・大規模修繕、耐震補強、手取川橋の架替えなども含め伊藤公一保全・サービス事業部長(2020年6月取材当時)に聞いた。(井手迫瑞樹)
3路線340.3kmを管理
構造物は1026橋、トンネル61チューブ
――支社管内の橋梁、トンネルの内訳について
伊藤部長 建設管理を含めて3路線を管理しており、北陸自動車道(北陸道)が木之本IC~朝日IC間258.7km、東海北陸自動車道(東海北陸道)が白川郷IC~小矢部砺波JCT間42.6km、舞鶴若狭自動車道(舞若道)が小浜IC~敦賀JCT間39.0kmで合計340.3kmとなります。東海北陸道も一部の区間では供用後20年以上経過していますが、老朽化のリニューアルの対象として中心的に対策を行っているのは、北陸道になります。北陸道の最初の開通は1972年で小松IC~金沢西IC間となり、供用後48年経過しています。最後の開通区間は北陸道 東端の滑川IC~朝日IC間で1983年ですので、37年が経過しています。
橋梁は、北陸道が908橋、東海北陸道が64橋、舞若道が54橋で、合計1,026橋を管理しています。トンネルは、北陸道が38チューブ、東海北陸道が8チューブ、舞若道が15チューブで、合計61チューブとなります。
橋梁延長比は鋼橋が最も多く42%
経過年数は北陸道が31年以上
――橋種別では
伊藤 橋梁連数比で鋼橋が27%、RC橋が38%、PC橋が33%、PRC橋が1%です。北陸道は鋼橋、RC橋、PC橋ですべて構成されています。橋梁延長比では鋼橋が最も多く42%、RC橋33%、PC橋23%となります。
管内橋梁の各種割合
――経過年数別では
伊藤 31年以上の橋梁がすべて北陸道、10年未満がすべて舞若道で、11年から30年までが東海北陸道となります。
――点検を進めてみての構造物の管理状況は。九頭竜川橋ではSFRCで増厚を行ったとのことですが、凍結防止剤散布の影響で再劣化して大きな範囲で打替えしている形跡がありました
伊藤 車両の大型化対応は、損傷対策とあわせて行っています。九頭竜川橋では1996年に行いましたが、当初、損傷したものを優先するために、床版厚が比較的薄い鋼橋について床版の上面増厚を進めてきました。その後、塩化物イオンにより再劣化して、床版の取替え、打替えを行っています。
凍結防止剤散布の影響で再劣化して再補修した箇所(白い部分)
――全体的な状況では
伊藤 管内は雪氷地域にあたりますので、基本的には塩化ナトリウムを凍結防止剤として散布しています。これにより鋼材などの腐食や、コンクリート内部の鉄筋への塩化物イオンの浸透により鉄筋が腐食してはく離などを引き起こす事象が出ています。非排水性を保てるようにジョイントを設置していますが、やはりそこから塩分交じりの水が漏れることで桁端部に損傷が多くみられています。
――支承などの損傷は
伊藤 鋼橋についても端部の桁に錆が発生しているほか、鋼製支承にも錆の発生が見られています。
橋梁の部位別損傷 上部工が約4割占める 次いで下部工、伸縮装置
手取川橋(橋長547m)は上下線とも上部工のみ架替え
――部位別の損傷割合では
伊藤 上部工に変状が多くみられ、約4割を占めています。端部からの塩化ナトリウムを含んだ水の浸透で下部工にも損傷が約1割あります。そのほか、伸縮装置9%、支承7%などとなっています。
――凍結防止剤散布による塩害のほかに、手取川橋のような飛来塩分によるものは
伊藤 片山津IC~金沢西IC間の橋梁は飛来塩分の影響もみられます。
――手取川橋以外では
伊藤 大慶寺川橋の対策のほか、単純桁の橋梁2橋(大川橋・山島川橋)の架替えを行っています。
――今後の架替え予定の橋梁は
伊藤 塩害が顕在化しているのは手取川橋しかなく、架替え予定は同橋しかありません。昔は浜辺でしたが、渚線が後退して、親不知海岸高架橋のように海の中に入ってきています。
――手取川橋梁は今後、どのように進めていきますか
伊藤 架替えになりますので、お客様へ影響しないように情報提供を含めてしっかり架設計画をしていかなければならないと考えています。
――いつぐらいに受注会社が決まるのでしょうか
伊藤 年度公表はしていますが、まだ発注時期を含めてスケジュールを調整している段階です。
――上部工のみ架け替えですか、それとも下部工も再構築ですか
伊藤 上部工のみです。
――上下線はセパレートですか
伊藤 分離タイプです。
――対面通行規制で上下線施工ですか
伊藤 そうです。
――平面線形は
伊藤 ほぼ直線です。
――形式は
伊藤 ヤードをそれほど必要としない形式が望ましいですね。
――橋長は
伊藤 547mです。
トンネル 部位別変状割合は内装版が37%、覆工が34%
北陸道 今庄トンネルで覆工背面空洞注入
――トンネルの損傷状況は
伊藤 北陸道の矢板工法で施工したトンネルの覆工に漏水とひび割れが見られていて、漏水がほとんどです。部位別変状割合では、覆工が34%となっており、内装板37%です。内装板はタイルの剥がれやハンドレールの腐食となっています。下地材をステンレスに変えている箇所もありますが、坑口付近で凍結防止剤散布の影響を受けているところもあります。
トンネルの各種割合
――ひび割れは目地方向に発生していますか、それとも道路軸方向ですか。漏水が多いということは目地方向だと思いますが、地山の影響での道路軸方向のひび割れが発生しています
伊藤 地山からの影響を受けたひび割れは見られていません。ただ、覆工と地山の間に空洞が確認されたところについては、空洞注入の工事も順次実施しています。
――覆工背面空洞注入の今年度の工事は
伊藤 北陸道の今庄トンネルなどで実施しています。
今庄トンネルの損傷状況