架設 架設桁架設とエレクションノーズ式を併用
架設桁架設 耐風安定性を確認して施工
――架設工法は
浦 陸上部が支保工施工(P12~P14)、海上部右岸側が架設桁架設、同左岸側がエレクションノーズ式張出し架設を採用しています。道路線形がカーブしており、水深の深い左岸側は台船を使用したエレクションノーズによる吊り上げ架設(A1~P5)、道路線形が比較して緩く水深が浅い中央から右岸側にかけては架設桁架設(P6~P12)を用いるものです。架設桁架設はこの4月から施工を開始しました。エレクションノーズによる吊上げ架設部は架設を進めています。
エレクションノーズによる吊上げ架設①(左:井手迫瑞樹撮影)
エレクションノーズによる吊上げ架設②/左岸から撮影。曲線が入っていることが分かる(井手迫瑞樹撮影)
――架設桁架設の具体的な進め方は
浦 隣接する製作ヤードから台車で運び、門型クレーンで吊り上げて架設桁に載せ、P12を起点に施工していきます。柱頭部に架設桁を載せるベントを配置して、架設桁を送り出していきます。その架設桁の間にセグメントを通して所定の位置まで運びます。運んでいる間セグメントは橋軸ではなく橋軸直角方向に向いた形になっていますが、所定の位置に到達した後はセグメントを回転させて、架設させていきます。それを繰り返していきます。
架設桁架設は風による影響を受けるため、耐風安全性を検証すべく、50分の1の模型を使った風洞実験を徳島大学の長尾文明教授の指導のもと行いました。その結果、架設桁の下部に幅1mの耐風スカートを取り付け、風による振動を防止する施策をとっています。
架設桁架設
左岸側から見た架設桁(井手迫瑞樹撮影)
右岸側から撮影した吉野川大橋の現況(井手迫瑞樹撮影)
――この2種類の架設方法を採用した理由は
浦 工期を短縮する必要があるのが1つと、橋全体に曲線が入っているため、直線の部分は架設桁でかけ、曲線が入っている部分は海上からのエレクションノーズによる施工を採用しました。
――干潟もあり浅瀬のため、台船による架設は難しそうですね
浦 確かに全体的に水深は浅く1~3mほどですが、P1~P4部分は、澪筋に位置しており水深も7m程度と比較的深くなっています。大きな浚渫を行うことなく、桁を運ぶことができるため、エレクションノーズによる吊上げ架設を採用しました。同地は環境に関する委員会を毎年開いて助言を受けながら施工しており、極力浚渫は避けたく考えています。
――全体の緊張作業はどのように行うのですか
浦 プレキャストセグメント同士は接合キーを合わせて、接着剤を塗布し、引き寄せ鋼棒で仮緊張後張出内ケーブルの緊張を行います。そして1径間の架設完了後外ケーブル(床版は内ケーブル)で緊張します(引き寄せ鋼棒は張出架設完了後に開放し、グラウト充填)。最後にせん断変形している支承を調整するため、ポストスライドを行い、架設完了となります。
PCの緊張にあたっては、光ファイバーを組み込んだPCケーブル(鹿島建設と住友電工、ヒエン電工の共同開発)を使用することで、緊張力分布をケーブル全長に渡って直接計測できます。本技術を活用することで、緊張時の施工管理だけでなく、光ファイバーは高い耐久性を有するため、維持管理にも活用が可能です。
剥落対策 バルチップやSAMMシートで対応
塩害対策 サークルハンチや斜ウエブを採用 CFCC用いたU字側溝も
――上部工の剥落対策は
浦 セグメントでは非鉄繊維補強コンクリート(バルチップ混入)の施工、現場打部においては連続繊維シート(SAMMシート)を設置し剥落対策をしています。
バルチップ混入(左)およびSAMMシート貼付け(右)で剥落を防止する
――上部工の塩害対策は
浦 基本的にプレキャストセグメントを現場ヤードで製作していますので現場打と比べて、品質は飛躍的に向上しています。それに加えて、塩分が浸透しやすい箱桁の隅角部にR=500とR=200のサークルハンチを付け、さらに斜ウエブを採用することで主桁表面積を3%削減することで飛来塩分を防止しています。また、排水設備も桁の外側に配水管を設置すると腐食劣化しますし、景観も考慮して、高欄の外側に腐食を生じないCFCC(炭素繊維複合材ケーブル)を補強材として入れたプレキャストコンクリートのU字側溝を採用する予定です。
――CFCCを入れたプレキャストコンクリートのU字側溝というのはあまり例がないですね
浦 そうですね。吉野川河口部に架かる橋ですので、メンテナンスもなかなか難しいため、今後の維持管理にできるだけ手間がかからないように設計段階から配慮しました。
――今後の施工の進め方について
浦 吉野川大橋は特に厳しい現場条件等の影響を受けています。当該橋梁は吉野川河口付近に架橋するもので、強風や高波による厳しい気象条件や吉野川からの流水や海波に伴う浚渫作業の追加など、当初計画以上に厳しい状況となっており、施工の効率を上げることも難しい状況となっていますが、引き続き関係機関との調整を行い、地方自治体などの協力もいただきながら、一日も早い完成を目指して事業を進めてまいります。
――現場はどれくらいの人々が従事していますか
浦 一番多い時期で作業員250人、JV職員で30人程度が働いています。
――設計および元請は
浦 設計会社はエイト日本技術開発、施工会社は鹿島建設・三井住友建設・東洋建設特定建設工事共同企業体がそれぞれ担当しています。
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