道路構造物ジャーナルNET

供用中の本線に影響を与えないよう工夫した施工

NEXCO西日本和歌山工事 完成2車を4車線化する特殊な現場

西日本高速道路
関西支社 和歌山工事事務所
所長

北川 誠

公開日:2020.05.18

本線との離隔は最小20㎝ 民家が張り付くため防音養生
 様々な工種が狭いヤードの中で同時並行に進む

 ――取り壊す既設ランプ橋と供用中の本線橋との離隔は
 北川 将来の4車線化を見越さずに整備されていたため、クリアランスは極めて小さい(最小20㎝)です。さらに、有田南ICは付近に民家が張り付いており、防音シートを張って騒音対策を施して工事に入りました。


民家が近いため防音シートを張って施工している/料金所施設も拡幅する(井手迫瑞樹撮影)

 プレテンT桁の撤去は、壁高欄を撤去した後に、床版を含む主桁の撤去を行い、現時点(令和2年2月)で撤去はほぼ完了しています。本工事は若築建設が担当しました。
 ――撤去工の工種も音を減らす工法が必要になると思うのですが
 北川壁高欄の撤去は、クレーンで吊るためのコア削孔をまず行います。削孔は昼夜連続で行いましたが、音が発生するため、防音シートで囲った小屋を作り、そこに機械を入れ込んで施工しました。


壁高欄の撤去(コア削孔)

 新しいランプに交通を切り替えてから、既設のランプ橋を撤去するのが本来の手順ですが、既存のランプ橋を撤去する際、新しいランプ橋の上を越さなくてはならなくなります。そのためには、結局供用したランプ橋を再度、通行止めにしなくてはなりません。夜間だけで言うと通行止め期間は逆に長くなってしまうため、安全かつ急速に施工できるよう、12~2月の3か月終日通行止めを行い、昼夜連続で施工を行うことで既設のランプ橋撤去を優先して行いました。


有田南IC~水尻高架橋付近の錯綜した状況/本線部拡幅図面(拡大してみてください)

有田南ICの現況と完成イメージ/同ICの施工ステップ

 ――新しいランプは並行して架設しているのですか
 北川 架設は撤去に先んじて行い、舗装や付属工は、撤去と並行して施工していました。
 ――撤去の手法をもう少し具体的に
 北川 壁高欄の撤去については、ワイヤーソーを用いて縦方向に切断したのちに、横方向に切断し、小割してクレーンで吊って出しました。ワイヤーソーでの切断も防音シートで覆いながら施工しましたが、聞きなれない音が連続で出るため、できるだけ切断作業は深夜に及ばないように工夫しました。



壁高欄の切断

 桁自体は、550t吊オールテーレンクレーンを新設ランプ橋のさらに外側に据え付け、新設ランプ橋の桁を超す形で吊り上げ撤去しました。クレーンは据え付け直しをできるだけ防ぎながら(据え付けは2回程度)施工しました。旋回半径は30mに達します。桁撤去時の激突防止対策として、古タイヤを桁に設置し、コンクリートの直接接触を避けるようにしました。また、吊り上げ時は介錯ロープも使用、撤去後はヤード内において、トラックにて運べる大きさにワイヤーソーで小割に切断していきました。





桁の撤去状況

 先述しました通り、既設ランプ橋の橋脚も撤去しています。撤去は桁と同じように、吊撤去できるようにコアドリルで吊り孔を施工し、クレーンで吊った状態にした上でワイヤーソーにより小割に切断し、上から順に吊り撤去していきました。


既設ランプ橋脚の撤去概要図

橋脚撤去の際のコア抜き/切断した部分を吊って撤去(井手迫瑞樹撮影)

 ――1ブロック当たりの大きさは
 北川 ヤード内はトレーラーもなかなか入ってこられないため、重量で10tを目安にしました。幸いにも作業による苦情はありませんでした。


運びやすくするため、さらに小割に切断している(井手迫瑞樹撮影)


 

有田南IC付近 ミニ現場ルポ 4~5業者が現場に犇めく
 橋脚の耐震補強・梁の拡幅伴う

 本線橋である水尻高架橋では、上部工についてはRC床版を5mほど拡幅している。拡幅前には橋脚の耐震補強とRC橋脚の梁の拡幅も行っている。
 場所によっては、橋脚へ250mmのRC巻き立てを行った。基礎を施工する際に、施工ヤードが狭小かつ桁下空間も確保できない箇所では、超低空頭場所打ち杭工法を採用し、専用機械を用いて施工した。


橋脚の拡幅(井手迫瑞樹撮影)

超低空頭場所打ち杭工法/狭いヤードを様々な工種がシェアして使っている(右写真:井手迫瑞樹撮影)

 有田南IC ONランプ橋付近の現場では、ノバック(水尻高架橋本線部下部工)、戸田建設(同橋上部工)、若築建設(有田南IC ONランプ橋撤去及び新設ONランプ橋の舗装工)、協和エクシオ(有田南IC施設工事)の4社が狭いヤードに犇めき合って施工していた。1月20日までは、駒井ハルテック(新設ONランプ橋上部工)も桁架設にかかわっており、狭いヤードを効率的に用いるため、施工前日のお昼前(11時45分)までに翌日の工事方針を4者間で決めて、その後、各社の下請けに通達していた。
 また、湯浅ICに隣接している熊井第一および第二高架橋は1車線拡幅が必要で既存壁高欄を撤去した上で、床版端部をはつり出し、1車線分の桁と床版を建設する必要がある。
 特に熊井第二高架橋の下部工は、令和2年9月で上部工に引き渡さなければならなかった。ピークでは深礎杭が2パーティー、矢板工が1パーティー、抑止杭工が1パーティー、足場、鉄筋、コンクリート打設工がほぼ毎日入っている状況だ。


熊井第二高架橋の施工


 

3ページ 管内最長の施工中橋梁は野口高架橋の753m

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