事業区間の構造物比率は60%、工事の進捗率は61%
NEXCO中日本沼津工事事務所 5連の連続高架橋のうち3連にUコンポ橋を採用
中日本高速道路株式会社
東京支社
沼津工事事務所
所長
川上 哲治 氏
中日本高速道路(NEXCO中日本)東京支社沼津工事事務所は、新東名高速道の御殿場JCTから神奈川・静岡県境間の18.1kmの事業と駒門スマートIC(SIC)の整備を担当している。御殿場JCTから御殿場IC(仮)までの7.1kmは主に連続高架橋となっており、御殿場IC側の高架橋のうち3連では工程短縮と省力化のために、Uコンポ橋を採用している。御殿場JCTから県境までの18.1kmは丘陵地帯から山岳部へと変化し、山岳部では2本のトンネルと3連の連続ラーメン橋の建設を進めている。事業の特徴と進捗について、川上哲治所長に聞いた。
構造別進捗率は橋梁上部工33%、下部工81%
トンネル掘削78%、覆工38%、土工区間51%
――管内の概要から
川上所長 沼津工事事務所は新東名高速道路の現在の東側端末である御殿場JCTから神奈川・静岡県境間の18.1kmを担当しています。行政区分では小山町が9.1km、御殿場市が9kmです。また、新東名高速・御殿場JCTのランプ線形の支障になるため駒門PA(下り線)を約1.7km名古屋方面に移設を行い、その後、駒門スマートIC(SIC)の整備も担当しています。上り線のPAの位置は変わっていませんが、上下線あわせてSICの整備を行っていて、年度内の開通を目指しています。
駒門SIC施工状況(下り線)(NEXCO中日本提供、以下同)
駒門SIC施工状況(上り線)
――全体の進捗率は
川上 用地取得は全体の99%が完了していて、工事着手率は100%に達しています。工事全体の進捗率(契約金額ベース)は61%で、構造別では、橋梁は上部工が78%、下部工が81%、トンネルは掘削が78%、覆工が38%、土工区間は51%の進捗率(出来形ベース)です(2019年8月時点)。
――構造物比率は
川上 約60%となっています。土工延長が7.2km(40%)、橋梁延長が7.5km(41%)、トンネル延長が3.4km(19%)です。
――事業区間の構造概要と地形について御殿場JCT側から教えてください
川上 御殿場JCTから約1kmがJCTを含めた高架区間で、そこから先の約1kmが土工(盛土)区間となり、さらに約5kmにわたる5連の連続高架橋で御殿場ICに至ります。この区間は富士山の裾野で御殿場JCTからは緩やかな上り勾配となっていますが、概ね平坦な地形です。ただ、細かな交差物が多く、県道や市道の切り回しや生活道路の安全を確保しながら、高架橋の下部工と上部工の施工を行っていることが特徴です。
御殿場ICを過ぎると、御殿場市と小山町の市町境付近に新東名高速の最高地点(標高540m)があります。丘陵地帯を低盛土の土工区間が続き、開削トンネルの用沢トンネルを過ぎると小山PAとなります。小山PAにはスマートインターチェンジを整備します。この間の橋梁は3橋です。
小山PAからは丘陵地帯の切土区間と一部盛土区間の後、御殿場JCT側の最初のトンネルである湯船原トンネルがあります。このトンネルを越えると山岳地帯に入り、3連の連続ラーメン橋の高架区間があり、県境の谷ヶ山トンネルとなります。
管内図
橋梁一覧表
トンネル一覧表
御殿場JCT部は橋脚の9割が完成済み
桁架設は3割が完了
――御殿場JCT含めた約1kmの高架区間について
川上 本線では東京側から新駒門東第三高架橋(上り・下り1,016m)、新駒門東第二高架橋(上り・下り470m)、新駒門東第一高架橋(上り302m、下り202m)の3橋があります。御殿場JCTのランブ橋は、上り線の東名高速と新東名高速を結ぶBランプ橋(903m)、下り線の新東名高速と東名高速を結ぶCランブ第一橋(358m)、Cランブ第二橋(358m)です。御殿場JCT部の橋梁については、東名高速と新東名高速のランプを横過することもあり、橋脚高が30m前後の鋼橋形式を採用しています。
御殿場JCT概要図
――昨年11月に施工された東名高速を跨ぐ桁架設時には取材をしました(記事「NEXCO中日本 東名高速道路交差部直上の桁を4夜間で架設」)
川上 事業区間のなかでも、重交通路線である東名高速を跨ぐ桁架設ということで非常に困難な現場でした。3年前に起きた桁崩落事故を受けて、より安全で確実な工法に見直して、2017年11月には新東名の通行止めを2夜間、昨年11月には4夜間の東名高速通行止めを実施して、新駒門東第二高架橋の上下線とCランブ第二橋の東名高速本線上(昨年)と新東名高速Aランプ上(2017年)の架設を行いました。
昨年11月に行われた新駒門東第二高架橋の架設
――進捗状況は
川上 JCT部には橋脚が約70基ありますが、9割が完成済みです。桁架設は3割が終わっています。ランプ橋はBランプ橋が下部工施工中で、Cランプ橋の下部工は完了しています。
御殿場JCT施工状況
――基礎工、下部工の施工にあたり、特徴的なことがありましたら
川上 新駒門東第一~三高架橋の基礎工で、地質が溶岩堆積層ということもあり、場所打ち杭の施工でケーシングのなかに岩が根詰まりして抜けなくなるという難工事がありました。対策としては、ダウンザホールハンマー工法で先行掘削をしてケーシングの摩擦を低減させて、工程促進を図りました。また、新駒門東第一・二高架橋には大口径深礎杭もありましたが、異常湧水が発生して、東名高速に近接しているなかで厳しい施工となりましたが、水の汲み上げ処理を行い、解決しました。2017年春から基礎工に着手して、昨年11月にすべての杭基礎が完了しました。
新駒門東第三高架橋基礎工(左:ダウンザホールハンマー工法での先行掘削/右:場所打ち杭の施工)
新駒門東第三高架橋下部工の施工