ゴム支承の耐オゾン性の性能評価試験の規格値を見直し
耐用年数100 年間相当を満足する試験規格値
――ゴム支承の耐オゾン性能評価について
⻑⾕ これまでの品質管理試験規格値を適用した積層ゴム支承(被覆ゴムタイプ)において、供用中の橋梁ゾンクラックが発生する事象が発生したことから、耐オゾン性の性能評価試験の規格値を見直したものです。【構造物施工管理要領】[Ⅱ建設編](5-2-1 ゴム支承 表5-2、表5-3)
従前はJISの試験条件において最も厳しいものを規格値として運用していましたが、その耐用年数までは明確に示されていませんでした。今回は、平成29年の道路橋示方書改定により、橋の供用年数が100年間と規定されたことから、100年間相当の促進試験条件を定めたものです。室内での劣化促進試験と、点検調査結果を基に自然環境におけるオゾン濃度とゴム支承の被覆ゴムのクラック発生時間の関係を調査し、耐用年数100年間相当を目標とする試験規格値に改訂しました。
――数値はかなり厳しくしていますね
⻑⾕ 現在、ゴム支承メーカーにおいては、すでに被覆ゴム材の耐オゾン性向上の改善対策が実施済みで、今回改訂の試験規格値は満足できることを確認しています。
あと施工アンカー 引張力を常時受けていない箇所は接着系も可
鋼製ブラケットはせん断が卓越する形状を標準に
――あと施工アンカーおよびブラケットの照査方法の改定について
⻑⾕ 橋梁に添架する標識などは、あと施工アンカーを用いて設置することがどうしても多くなっています。あと施工アンカーを使用するにあたって、注意喚起も含めて、ある程度照査方法を明確にしたものです。設計要領第二集の第2章「アンカーボルト」で、金属系アンカーを標準とする旨を追記しました。吊構造などの常時引張力を受ける箇所は原則として金属系アンカーを使うことを明確にしています。
――接着系あと施工アンカーの使用緩和措置といえますね。鋼製ブラケットにあと施工アンカーを使う際の設計上の留意点も明確にしたようですが
⻑⾕ 使用緩和措置ではなくて、RC巻立てにおいてフーチングに定着させるアンカーの場合は、引張力を常時において受けないため、接着系あと施工アンカーを使用することに問題ないと考えています。
【設計要領第二集】[橋梁保全編]「7章 付属物」に(8. 鋼製ブラケット)の項を新規記載しました。あと施工アンカーを何本も多列配置して使うような場合などへの設計の考え方を追加しました。あと施工アンカーにおいて、大型標識などに対応した場合の配置や定着長さに関する設計法が明確に示されていませんでした。
――それは意外ですね
⻑⾕ 土木学会などで、あと施工アンカーに関する設計法はあり、現在の施工においては、それを参考にしております。今回の新規記載も基本的には土木学会の「コンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工指針(案)」を標準としています。そのうえで、あと施工アンカーを大型標識の基礎の取り付けなどで多列配置する場合の設計上の留意点について知見を示しました。
――鋼製ブラケットといってもさまざまな構造がありますが、その対象範囲と適用区分、知見について教えて下さい
⻑⾕ 今回対象とする「鋼製ブラケット」は、門型標識や情報板などを橋梁下部構造に取り付けて支持するものを対象としています。検査路や耐震補強などに使われるものは対象外です。設計上の配慮ですが、大きく分けて3点あります。
1点目は、対象となる鋼製ブラケットに用いるあと施工アンカーの軸引張は、引張領域の最大荷重で照査することにしました。圧縮力は、コンクリートのみが抵抗するものとし、FEM解析などによる詳細な検討を行わない場合は、下記の図芯位置から軸引張が作用する領域にある端部までのアンカーが軸引張を負担することとしました(図7-8-1)。
2点目は、多列配置する場合の留意です。金属系(拡張)アンカーの場合、製品サイズから埋め込み長さが決定されます。そのため、被りコンクリート内に定着される金属系アンカー製品においては、大型標識のような比較的重い付属物の取り付けに使うと過密な配置になり、群効果による耐力低下をもたらします。また、アンカー1本に作用する荷重が設計荷重と乖離し、不均等荷重が発生する可能性もあります。そのため埋め込み長の長い金属拡底アンカーを採用することで、過密配置を回避するよう記載しています。
3点目は、ブラケットに対するねじりが大きい場合、アンカーにせん断力の作用が卓越するようにブラケット形状とアンカー配置を決定することを明記しました。
鋼製ブラケットは、アンカーボルトの締めを考慮して開断面構造であることが多いため、作用点がせん断中心からずれる場合には、ねじりモーメントが生じます。ねじりモーメントによる影響が大きい場合とは、鋼製ブラケットが支持する標識柱などが風荷重や地震の影響などを受けた場合が想定されます。さらにねじりモーメントの載荷位置がブラケットとコンクリート躯体との固定位置から離れるにつれてその位置に生じる反り直応力は大きくなり設計で想定していなかった軸力がアンカー部に作用してしまします(図7-8-2)。
そのため、あと施工アンカーを用いてコンクリート構造物に固定する鋼製ブラケットは、せん断が卓越する形状を標準としました。その目安は、荷重作用点から固定箇所までの距離が鋼製ブラケットの高さを下回る形状としています。