道路構造物ジャーナルNET

プレキャストPC 床版接合部分の性能試験方法、床版上面断面修復工法など

NEXCO3社が2年ぶりに橋梁に関わる技術基準を改定

NEXCO総研
道路研究部
橋梁研究室長

長谷 俊彦

公開日:2019.07.31

WJによる斫り処理を行えば断面修復材でも恒久対策として認める
 厚さ190mmの実物大床版で実験

 ――次にコンクリート床版上面断面修復材の適用範囲について。以前の改定では、大規模な損傷に対する恒久対策にはコンクリート系材料による部分打替え、小規模な損傷の応急復旧にはモルタル系材料による断面修復といった使い分けが示されていましたが
 ⻑⾕ 仰るように以前の改定では、床版上面の断面修復についてモルタル系材料は小規模な劣化部の応急的な補修に適用範囲が限られていました。そのため大規模修繕などにおける高機能床版防水施工においては、舗装切削後に必要な箇所を補修しなければなりませんが、切削後の確認により広範囲な断面修復が必要になった場合、限られた時間内で損傷に対する手当が難しい場合もあります。

 ――確かに、ジェットコンクリートを手配するにせよ現場では時間が限られています。しかし従来の応急復旧用のモルタルでは恒久的な対応策にはならないのではないですか
 ⻑⾕ そのため母材にマイクロクラックが生じないよう、WJによる斫り処理を行った場合は、比較的大きな面積におけるモルタル系材料による断面修復による恒久的な対策として効果が確認されましたので【設計要領第二集】[橋梁保全編]「5章 床版」(2 床版の補修・補強対策工法の選定)には、施工方法、はつり処理方法、補修範囲、補修深さにより対策工法の適用を明確化したものです。その中で従来の打撃工法による斫りの場合は、以前と同様に応急対策と位置付けています。
 ――実際にWJ で斫ってモルタル系材料により断面修復した場合でも割れを⽣じないのですか
 ⻑⾕ 昭和39年道路橋示方書に準じて製作した厚さ190mmの実物大床版(幅2.8m×)長さ4.5m)にWJで上段鉄筋の下側まで斫り、断面修復した床版で輪荷重走行試験を実施したところ、断面修復部が先行破壊するような損傷は発生しませんでした(図4)。
また、この実験では既設RC床版を模擬するために床版下面にひび割れを導入後、断面修復し、乾燥および水張り状態で走行試験を行っています。試験終了後に断面修復部からコアを抜き取り、引張試験を行いましたが、破断箇所は既設コンクリート部で生じ、断面修復材と既設RC床版の境界部の引張付着強度は1.5N/mm2以上を確保しています(図5、図6)。


 ――今後はどのような使い分けを行いますか
 ⻑⾕ 一か所の損傷がパネル単位(主桁間隔と横桁または対傾構間隔による範囲)以上生じているものについては従来通りコンクリート系材料による床版打換え(部分打換えまたは全断面打換え)を行いますが、小規模な損傷はもちろん、1か所ごとは小さい損傷が点在しているような損傷に際しては、マイクロクラックが発生しないWJ等による斫り処理をすれば、モルタル系材料で適切に断面修復すれば恒久対策と同等の補修効果が期待できると考えています。

 ――ただ、WJ を使うと設備面も大きくなりますし、施工後の乾燥養⽣の時間も取らなくてはならない、どこまで使われるでしょうか
 ⻑⾕ そこは、橋梁ごとの既設床版の劣化状況や工事の車線規制計画などの制約条件等に応じて、適切な工法を選択した計画立案を行う必要があると思います。

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