成合第一高架橋張出架設では超大型移動作業車を採用して通行止め回数を削減
NEXCO西日本新名神大阪西事務所 新名神建設の集大成として複数の重要路線を跨ぐ難工事に挑む
成合第一高架橋 上下部工の施工が進捗
新名神上に防護工を設置して安全を確保
――成合第一高架橋について、橋長と形式から教えてください
徳田 橋長は上り線が697m、下り線が757mで、PRC6径間連続波形鋼板ウェブ箱桁橋です。
――桁高は
徳田 柱頭部で最大9.5m、支間中央部で4.5mとなります。なお、最大支間長は下り線P1~P2径間の162mです。
――防食上の工夫は
徳田 新名神上の波形鋼板ウェブはAl-Mg溶射を採用しています。
成合第一高架橋全景
成合第一高架橋(上り線)橋梁一般図
成合第一高架橋(下り線)橋梁一般図
――施工状況は
徳田 同橋は上下線で10橋脚となっていますが、そのうちの5橋脚(上り線P2~P4、下り線P2・P3)は、現在供用中の新名神建設時に高槻インターチェンジ中工事(施工:鹿島建設)として建設し、完成しています。開通済みとなる新名神と近接し、橋脚の基礎が路面の下となるため、供用後に建設することが困難だったためです。
残り5橋脚と上下線橋台4基および上部工を成合第一高架橋工事として進めています。橋台は未着手、橋脚は5基のうち3基の構築が完了しています。上部工は上り線P3からの張出架設が完了し、上り線P2とP4、下り線P3からの張出架設を施工中です。
架設状況(撮影=*)
――橋脚高は最大で何mになりますか
徳田 下り線P4橋脚で58mです。
――橋脚の構造と施工方法は
徳田 柱式橋脚で中空断面となります。施工は、場所打ち施工を採用しています。資材をクレーンで吊上げる時に供用中の路面上にかかる箇所には、躯体工事に先立ち小さなシェッドのような囲いを設置して施工時の安全を確保しています。この防護工により、通行車両から視認できなくなる標識がありましたので、それらを移設する対応も行いました。
また、上下線のP1は高槻IC料金所のランプ北側の山の斜面に位置し、工事用進入路の確保が困難だったため、延長430mにおよぶ仮桟橋を構築して施工しています。
本線上に設置した防護工/仮桟橋構築では、SqCピア工法とプレガーター橋を採用(撮影=*)
1ブロック最大8mの超大型トラベラーを採用して通行止め回数を削減
中国道リニューアルプロジェクトとの工事調整も必要に
――上部工の張出架設はどのように施工していますか
徳田 同橋はP1~P4径間で新名神の高槻JCT・IC連絡路およびランプ上を横過しています。そのため、移動作業車の移動時には供用中の路線を通行止め等の交通規制を実施しなければなりません。一般的な移動作業車(2主構200t・m級)は1ブロック最大4mの上部工を構築したら移動しますが、通行止め回数を減らすためにP2、P3、P4からの張出では1ブロック最大8mの超大型移動作業車(2主構1,000t・m級)を採用して施工しています。この取組みにより通行止め回数を約半分に減らすことができます。
架設では、2主構1,000t・m級の超大型移動作業車を採用した(撮影=*)
――移動作業車は夜間通行止めで移動させているのですか
徳田 各張出ブロックの供用線への影響範囲によって、最適な規制方法を使い分けています。
新名神(供用線)の上り線への影響範囲では、現場から約10kmの位置にある神戸JCT側の茨木千提寺ICから管理用パトロールカーで通行車両の先頭を抑えて時速50km程度で走行させることにより、前を走る車両との間隔を空けることができ、6分程度の時間が作りだせます。この先頭固定誘導の間に移動作業車を移動させています。
しかしながら、新名神(供用線)下り線が影響範囲に入るブロックは、高槻JCT方面からの先頭固定規制が困難になりますので、夜間通行止めを実施して移動作業を実施しています。
――架設完了までに通行止めは何回予定していますか。また、先頭固定規制の回数は
徳田 通行止めは合計20回、先頭固定規制は3回を予定しています。通行止めに関しては、現在、当社で実施している中国道リニューアルプロジェクトとの調整も必要になっています。同プロジェクトの吹田JCT~中国池田IC間では断続的に約1カ月から1カ月半の終日通行止めを実施していましたが、これは新名神の高槻JCT・IC~神戸JCTが供用されて迂回路として活用できるため、可能となりました。
中国道リニューアルプロジェクトの迂回路として新名神を活用
新名神を通行止めにすると迂回路として機能が果たせなくなりますので、年間計画を立てて双方の工事調整を行っています。しかし、気象条件や生コン等のさまざまな事情でブロック打設が遅れて移動作業車の移動が中国道の通行止め期間と重なってしまうと、その期間は工事を中止にしなければなりません。そこが工事の進捗上では大きな負荷がかかるところであり、超大型移動作業車を採用したのはその負荷低減のためでもあります。
4車線で閉合後に路肩側を拡幅して6車線対応を実施
架設時のアンバランスモーメント発生は施工順序の変更で対応
――6車線化対応については
徳田 下部工6車線、上部工4車線で発注していますが、上部工も6車線に設計変更しています。しかし、供用済みの新名神建設時に構築した橋脚は開通後に6車線に拡幅することを想定していましたので、6車線施工の架設時の荷重に耐えられないものとなっています。このため、神戸JCT側の分合流部に向かう拡幅部を中心に一旦4車線で閉合して、その後に路肩側を拡幅する追加工事が必要になっています。
――拡幅方法は。また、どのように施工していきますか
徳田 張出床版をコンクリート製ストラットで支持する形とします。施工については通行規制回数を減らすための最適な方法を検討中です。
ストラットを用いた張出床版の拡幅
――張出ブロック長は
徳田 超大型移動作業車では5.6m~8mです。柱頭部付近のブロックが6.4m、支間中央へ向けて7.2m、8mとなります。
――超大型移動作業車(2主構1,000t・m級)での1日の打設量は
徳田 約100m3です。
――橋脚高が最大で58mになるとのことですが、打設にあたっての圧送などの工夫や高耐久化の取組みがありましたら教えてください
徳田 圧送作業や配筋量を考慮したコンクリートのスランプ設定を行っています。
打設状況
――通行止め回数を低減するために超大型移動作業車を採用した以外に、張出架設での施工上の課題はありますか
徳田 下り線P5からの張出では、神戸JCT側の分流部に向かって拡幅されていることと、交差条件から不均等な張出長となっていることから、架設時に大きなアンバランスモーメントが発生します。具体的には、A2側の幅員が広く、P4側が狭くなっていて、張出長はP4側が58.4m、A2側が66.4m、ブロック数もP4側17ブロック、A2側18ブロックとA2側が1ブロック多くなっているため、均等に両側へ張出すことが困難でした。
下り線P5張出架設時の課題
上り線張出ブリック割図
下り線張出ブリック割図
その対策としては、施工順序の工夫を行っています。その順序はまず、P4側の中間隔壁および最終17ブロックを先行施工した後に、A2側の17ブロックを施工します。その後、P4~P5径間を先行閉合した後に、A2側の最終18ブロックを施工します。
成合第二高架橋 完成6車線で施工
A2橋台では沈下対策を検討中
――成合第二高架橋は
徳田 成合第一高架橋から土工部を挟み、当事務所事業区間の西端に位置する、橋長が上り線115m、下り線146.5mの橋梁となります。現在は、上下線P1と上り線P2を施工中です。
下部工施工状況
――基礎形式は
徳田 橋台と下り線P2が場所打ち杭、上り線P1、P2、下り線P1が大口径深礎です。
――下部工施工での課題がありましたら
徳田 A2橋台の位置は、もともとの地山がすり鉢状でした。そこに供用中の新名神(高槻JCT・IC~神戸JCT)建設時に橋台を設置するために約300万m3の盛土を行っています。しかし、用地取得が難航した関係で、地盤の強度増加を図るプレローディング工法を用いずに急速施工しています。通常の地盤よりも地盤が軟弱で、沈下対策を検討しなければなりません。
成合第二高架橋全景。手前側が盛土部
場所打ち杭(φ1,500mm、15本)も元の地山の支持層まで打込む必要があり、杭長が40mとなっています。
A2橋台背面の土工部も前述の盛土の上にさらに盛土をしなければならず、沈下する可能性がありますので、その対応を検討中です。
――付言して
徳田 新名神は名神と交通機能を補完することにより、東西を結ぶ大動脈として国民生活・産業・経済の更なる発展に寄与することを目指し整備が進められています。加えて、昔から淀川を渡河する橋梁は少なく、現在建設中の新名神(八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC)が完成することで関西の活性化のためにも重要な役割が果たせると考えています。
また、新名神大津JCT~城陽JCT・IC間約25kmは八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC間よりも先に開通する予定で整備中ですので、新名神としても最後の開通区間となります。新名神建設の集大成と開通時には見られる意識を持って、日々事業に取り組んでいます。
――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)