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成合第一高架橋張出架設では超大型移動作業車を採用して通行止め回数を削減

NEXCO西日本新名神大阪西事務所 新名神建設の集大成として複数の重要路線を跨ぐ難工事に挑む

西日本高速道路株式会社
関西支社
新名神大阪西事務所
所長

徳田 尚器

公開日:2023.04.10

名神高速の間の幅約15mのスペースに橋脚を構築
 工事用進入路として約1,900㎡の仮桟橋を構築して施工

 ――P16~P18橋脚の基礎形式は
 徳田 P16橋脚からは山間部となることから、大口径深礎を採用しています。口径は約10m、杭長は10~20mとなります。
 P16橋脚は斜面に位置するため、基礎工では竹割土留め工法を採用して施工を進めています。


P16橋脚の施工

 P17橋脚は山の頂上に構築しますので、工事用道路を整備してからの着手となります。上り線の杭長は約10mですが、下り線は約20mとなり名神高速の梶原トンネル(下り線左ルート)の脇まで掘り込みますので、計測管理が重要になります。
 高槻高架橋の下部工工事のなかで一番の難工事と言えるのがP18橋脚です。名神高速の間の狭小なスペースに構築しなければなりません。具体的には、上り線のP18橋脚が名神高速上り線の右ルートと左ルートの間、下り線の同橋脚が上り線の右ルートと下り線の右ルートの間となります。
 各ルート間の幅は約15mで、大口径深礎の口径が約10mですから、本当にギリギリのスペースでの施工となります。(編集部位注:同橋脚は名神高速梶原トンネルの高槻JCT側坑口付近に位置しており、同トンネルとその前後区間は上下線各右ルート(内側・Ⅰ期線)と左ルート(外側・Ⅱ期線)に分離している)


P18橋脚の一般図/模型でも難工事であることが伝わってくる(撮影=*)

P18橋脚(上り線)(左)と同(下り線)(右)の現場(撮影=*)

 供用中の名神高速の間となりますから、工事用進入路もなく、高速道路脇の道路から現場まで大規模な仮桟橋を構築しています。名神高速右ルートの通行止めを都度行いながら、1年以上かけて施工しました。


現場全景。名神高速を跨ぐ形で仮桟橋を構築した

 ――仮桟橋の延長と面積は
 徳田 延長は約220m、面積は約1,900㎡です。
 ――仮桟橋構築にあたり採用した工法は
 徳田 高知丸高のSqCピア工法を採用しています。名神高速を横過する箇所などではヒロセのプレガーター橋を用いています。


仮桟橋はSqCピア工法で構築。名神高速を横過する箇所などはプレガーター橋(ヒロセ)を用いた

 ――基礎工はどのように進めていきますか
 徳田 上り線のP18橋脚の位置には、Ⅱ期線施工時に埋め戻した梶原トンネルの旧換気塔が地中にあり、これを貫通させる形で大口径深礎の施工をしなければなりません。
 基礎構築では、上り線P18橋脚において旧換気塔埋め戻し部の空隙等が確認されていることから、土留施工時の崩落防止対策として土留め背面に薬液注入を実施し、空隙を充填した後、土留め及び深礎の構築を進めていく予定です。


旧換気塔の状況調査

 ――躯体構築ではどのような方法を予定していますか
 徳田 名神高速の間に橋脚を施工するため、供用路線に対して十分な安全対策を実施しながら施工していく必要があります。また上空には高圧線が走っており、施工の難易度が非常に高いです。
 ICT技術を活用し、供用路線および高圧線への影響のない施工計画検討を立案し、実施工においてはレーザーバリア等の複数のシステムを活用しクレーンの旋回範囲を制限しながら施工していく予定です。
 ――本当に大変な工事ですね
 徳田 難しい施工となりますが、P18橋脚がないと支間長が約170mとなってしまいます。そのため、桁架設時のリスクと完成時の構造上の安定度を考慮して、名神高速の間に橋脚を設置することを決定しました。施工時だけでなく、50年、100年先を考えての設計とも言えます。

 ――重要路線を跨ぐ箇所が多い上部工の架設方法はどのようなものを予定していますか
 徳田 道路上と鉄道上は送出しで、それ以外はトラッククレーンベントでの架設を予定しています。
 ――交差部の防食上の工夫は
 徳田 道路上(国道171号・名神高速)はAl-Mg溶射を行います。鉄道上(東海道新幹線・阪急京都線・JR東海道本線)は常設足場を設置する予定です。

梶原トンネル 6車線断面で施工
 上り線を東側から掘削

 ――梶原トンネルは
 徳田 上り線が延長1,341m、下り線が同1,328mのトンネルで、NATM工法で掘削していきます。設計・発注は4車線(片側2車線)断面で行いましたが、6車線(片側3車線)断面への設計変更が間に合い、施工も6車線断面で行います。
 ――地山状況は
 徳田 地層は丹波層群と大阪層群で、破砕帯がいくつか存在していることが事前の調査で判明しています。すべてC及びDパターンとなっており、補助工法として長尺鋼管先受工法の採用を予定しています。土被りは最大約150mです。
 ――掘削はどのように進めていきますか
 徳田 東側から片掘りで上り線を掘削して、上り線完了後に下り線を施工します。2023年2月に掘削を開始しました。


上り線の掘削が開始された

 ――掘削にあたりDXや新技術の活用がありましたら教えてください
 徳田 3Dスキャナによるデジタル出来形測量など3次元CIMモデル等を活用したデジタル出来形管理を予定しています。

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