シールド発進・到達立坑の総打設量は約13,000㎥に達する
NEXCO西日本新名神大阪東事務所 枚方トンネルと淀川橋では周辺環境に配慮して事業を進める
淀川東高架橋P2~P4の送出し架設・桁降下は2023年6月中旬までの非出水期に完了予定
P2~P4以外は2024年春までに架設完了予定
――淀川東高架橋の京阪電気鉄道を跨ぐ桁架設については、以前に取材をさせていただきました。その施工を含めた上部工施工についてお教えください
岩村 京阪本線を横過するP2~P4は京阪電気鉄道に委託を行って工事を進めています。送出し工法を採用して、2022年5月に1回目を実施し、2~3カ月程度に1回の頻度で送出しを行っています。送出し回数は上下線あわせて14回におよびます。P4橋脚が河川区域内となることから、2023年6月中旬までの非出水期内に送出しと桁降下を完了させる予定です。
【関連記事】京阪電気鉄道 新名神高速道路 淀川東高架橋 鉄道や府道などを跨ぐ約180mの桁を送出し架設
淀川東高架橋 P2~P4径間架設状況
当社が施工するP1~P2およびP4~P8は200t吊クレーン+ベントでの架設を行っていきます。同じく2023年6月中旬までの非出水期にP6~P8、2024年6月中旬までの非出水期にP4~P6およびP1~P2の架設を行います。
淀川東高架橋 P4~P8径間架設状況(左:P8側から/右:P4側から)
淀川橋は最大支間長210mのエクストラドーズド橋
鵜殿ヨシ原の改変範囲を可能な限り低減
――事業区間の西端となる淀川橋の橋長と形式は
岩村 橋長920mのPRC7径間連続エクストラドーズド箱桁橋で、最大支間長は210mです。淀川橋工事として上下部一体施工となっています。
――環境保全のために同形式を採用し、施工も環境保全に配慮しながら進めていると聞いています
岩村 淀川右岸の河川敷には「鵜殿ヨシ原」と言われるヨシの群生地があります。そこで採取される良質なヨシは雅楽で用いられる楽器「篳篥(ひちりき)」のリード(吹き口)として珍重され、宮内庁の楽部の方々も代々、鵜殿のヨシを使われてきました。自然環境だけでなく歴史文化的にも重要な場所ですので、そこを阻害しない支間長とすることができる形式で、経済性を比較したうえで決定しました。
施工では、鵜殿ヨシ原の改変範囲を可能な限り低減し、篳篥用ヨシ採取エリアの改変を避けた計画としています。淀川右岸には橋脚2基(P11・P12)を配置しますが、P11はヨシ原と淀川の間となり鵜殿ヨシ原は避ける形になっています。P12は鵜殿ヨシ原内になりますが、橋脚はその1基のみとなり、施工時の改変範囲はより少なくすることができます。
工事用道路についても、既設の管理用道路を利活用させていただき、迂回する形で河川側に設置しています。
淀川橋概要図
マスコン対策で温度応力解析を実施し、低熱ポルトランドセメントを採用
橋脚躯体構築ではSPER工法を採用して現場作業の省力化を図る
――施工状況は
岩村 下部工は、2023年度の非出水期(2023年10月16日から2024年6月15日)内に完了予定です。
河川区域内にはP9~P12の4基があり、P9は橋脚躯体が完成して柱頭部を施工しています。P10はP9側から113mの桟橋を構築して施工し、今期(2022年度)の非出水期で頂版及び橋脚躯体の施工を実施する予定です。P11及びP12は橋脚躯体を構築中です。
河川区域外のP13~P15の3基については、P13とP14が橋脚躯体を、P15がフーチングを施工中です。
左からP9・P10・P11の施工状況
左からP13・P14・P15の施工状況
――基礎形式は
岩村 P9およびP13~P15が鋼管ソイルセメント杭、P10~P12が鋼管矢板基礎となります。
鋼管ソイルセメント杭の施工(P9)
――下部工施工での課題や工夫点がありましたらお教えください
岩村 上下線一体の大規模な橋脚となりますので、マスコン対策として温度応力解析を実施し、低熱ポルトランドセメントを採用しています。
また、河川区域内の橋脚は非出水期での施工という制約がありましたので、現場作業の省力化を図るため、P10~P12でSPER工法を採用しています。あらかじめ帯鉄筋を埋め込んだプレキャスト部材で橋脚表面を形成して、内部にコンクリートを打ち込むことで、橋脚の急速施工が可能となります。
SPER工法を採用して橋脚を構築
――上部工の架設方法は
岩村 中央径間が張出架設、側径間が支保工架設を予定しています。
淀川左岸線延伸部新設工事 東側の延長1.1kmを担当
道路と鉄道が輻輳しているなかでの施工が課題に
――淀川左岸線延伸部の新設工事について概要をお願いします
岩村 延伸部は延長8.7kmで、当事務所は東側の門真JCTからシールドトンネル入口まで延長1.1kmを担当しています。門真JCTでは第二京阪道路と近畿自動車道とが接続しますが、第二京阪道路と接続する本線と近畿自動車道に向かうランプを整備することとなります。
事業区間の特徴は、インフラが周辺に密集していることです。具体的には近畿自動車道、府道大阪中央環状線、門真JCTのランプ橋、国道1号バイパス、都市計画道路都島茨田線(花博通り)です。今後、これらのインフラが近接しているなかで、下部工構築や上部工架設を行っていかなければなりません。さらに、花博通りの地下には地下鉄長堀鶴見緑地線が通っており、2029年の開業を目標にすでに大阪府で事業化されている大阪モノレール延伸事業もあります。このため、モノレール延伸事業との調整もしながら進めていく必要があります。既設のインフラに影響を与えないように事業調整を行っていきます。
門真JCT付近。下側が整備を進める淀川左岸線延伸部。上側が第二京阪道路で、左右に横断しているのが近畿自動車道
――現状は
岩村 現在、調査・設計を進めています。
――新設ランプは何本になりますか
岩村 4本です。既設ランプとの取り合いが難しいと考えています。
――都市部でヤードの確保も大変ですね
岩村 地権者と協議をしていますが大きな課題となっています。
――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)