宇治田原トンネルは2班増の4班体制で掘削
2023年新春インタビュー③ NEXCO西日本 新名神京都 本線工事を全面展開、橋梁上部工工事も進展
宇治田原トンネル 地山状況が想定よりも悪く2班増の4班体制で掘削
覆工高流動コンクリートを用いた自動打設の試験施工を実施予定
――宇治田原トンネルは
松本 上り線1,983m、下り線1,923mのトンネルです。6車線での設計が間に合いましたので片側3車線の掘削をしています。そのため、インバートを含む内空断面が標準部で115.8㎡、非常駐車帯部で148.5㎡と大きくなっています。
上り線は東側から2019年12月に、下り線は西側から2020年11月にNATM工法で掘削を開始して、進捗率は上下線あわせて約35%となっています。地山状況が想定していたよりも悪くて、掘削スピードが30m/月程度となっているので、このままでは進捗率があがりません。そこで、上下線とも1班増やして、現在、4班体制で施工しています。
宇治田原トンネル概要図
――具体的には
松本 計画されていた上下線をつなぐ連絡路を活用して、反対側からも2022年8月に掘削を開始して、4切羽で施工しています。上り線を施工する戸田建設が下り線を東側から、下り線を施工する鹿島建設が上り線を西側から、それぞれ新たに掘削しています。
東工事(戸田建設施工)の施工状況。左側の連絡路を活用して4班体制で掘削
――掘削延長はどのくらいになっていますか
松本 上り線が739mと1班追加分で56m、下り線が620mと同24mです。
――地山状況が想定よりも悪いとのことですが
松本 地山は頁岩を主体としていますが、全体的に亀裂が入っていて想定より柔らかい地盤が連続している状態です。そのため、切羽が安定せずにAGF工法を初期段階から採用して掘削しています。その他、補助工法として、鋼製支保工やロックボルト、吹付コンクリート、水抜きボーリングも併用しています。特に東側の状況が悪く、ロックボルトを継続して4段打設して掘削している状況です。
補助工法に時間がかかっていることも進捗率が上がらない原因となっていますが、4班体制としたことで施工スピードが上がると考えています。
――ロックボルト自動打設機を導入すると前回の取材でお聞きしました。また、その他の施工時における取組みは
松本 ロックボルト自動打設機は両施工者とも採用しています、また、コンピュータージャンボを用いて削孔時の抵抗力を計測して、切羽判定を行っています。安定していない切羽が多く、そのデータとともに熟練作業者の能力で作業を進めています。
ドリルジャンボ(左)とコンピュータージャンボ(右)での施工状況。写真はいずれも西工事(鹿島建設施工)
さらに、西側から掘削している下り線では、覆工高流動コンクリートを用いた自動打設の試験施工を行います。高流動コンクリートにより締固め作業を不要とするとともに、配管自動切替システムを用いた自動打設によりワンマン打設を実現して、その効果を検証していきます。
配管自動切替システム概要図
本トンネルで試験施工をすることにしたのは、大断面の大量打設で繊維補強コンクリートや補強鉄筋の適用割合が大きいこと、3車線断面で施工することで2車線断面への適用についても検証が可能などの理由からです。このような取組みを通して、将来の技能者不足が想定されているなかで、さらなる生産性向上を図っていきたいと考えています。
宇治田原第二高架橋 リブ構造を採用して片側2車線で閉合後に張出施工
ワーゲンは現在の3セットから8セット体制にして施工進捗を図る
――宇治田原トンネルの西側に位置する宇治田原第二高架橋は
松本 PRC7径間連続ラーメン箱桁橋で、橋長は上り線が651.5m、下り線が693.5mとなります。下部工工事は完了し、上り線は張出し架設を進めていて、下り線は柱頭部を構築中です。
宇治田原第二高架橋と宇治田原トンネル西坑口
施工状況
下部工が宇治田原第一高架橋と同様に4車線対応となっていますので、一旦片側2車線で閉合して、その後、片側3車線にするために両側を各1m張出します。閉合することで荷重を持つことが検討するなかで分かりましたので、この方法を採用しました。ただ、張出部が長く、それを支えるためにリブ構造を採用しました。
このリブを作るのに意外と時間がかかっています。リブがなければ1ブロック1~2週間で完了しますが、2~3週間かかっていますので、架設スピードとしてはかなり遅くなっています。
6車線化対応のためにリブ構造を採用
計画では上り線で用いるワーゲン3セットを下り線に転用して施工することになっていましたが、新たにワーゲンを5セット追加して、全体で8セット体制とすることで進捗を図っていきます。これで、ほぼ全径間同時に張出していくことが可能になります。そのため、下り線の柱頭部施工を急いで行っています。
――8セット体制にすることで、今後の架設工程はどのようになりますか
松本 2023年春以降にほぼ全径間での張出を計画しています。上り線は、2023年春に中央閉合、同秋には側径間の閉合を行う予定です。下り線は、中央閉合が2024年になると思います。
――柱頭部と支間中央の桁高は
松本 柱頭部が7.5m、支間中央が約3.5mです。
――ワーゲンの仕様、打設1ブロックの長さ、ブロック割について教えてください
松本 1基13tのものを用いています。1ブロックは3.5m、3m、2.5mの3種類で、ブロック割は最大で16ブロック(P2・P3・P4)となっています。
宇治田原第二高架橋(上り線)上部工構造一般図(一部)(拡大してご覧ください)
――過密鉄筋となる柱頭部などのコンクリート打設にあたって、どのような品質確保を行っていますか
松本 マスコンになりますので、温度応力解析を実施して、ひび割れ抑制を図りました。また、脱型後に躯体を気泡緩衝材で覆うことで、湿潤養生期間を規定より延長し水分の逸散をより防ぐほか、緩衝材の断熱効果により外気温による躯体表面の急冷を防ぎ、躯体内部と外部の温度差を小さくすることで温度ひび割れの発生を防ぐ試みを実施しました。
――張出床版の施工はどのように行っていきますか
松本 別の加工用作業車を持ってきて、現場打ちで施工していきます。上り線の張出部の施工は2023年秋以降を予定しています。
宇治田原ICの切土量は約200万m3
山砂利採取跡地の土工部は地盤改良も必要に
――宇治田原第二高架橋の西側は土工部が続き、宇治田原ICとなりますね
松本 IC部には民間施設があり、それが移転してから着手する予定になっています。先に申し上げましたが、物流施設がICと直結する形で計画されていますので、事業調整をしながら工事を進めていくことになります。切土が多く、その量は約200万m3となっています。
宇治田原IC概要図
――工事着手予定は
松本 2023年秋頃には本格着手できる予定です。
――IC部の構造物は
松本 ランプ橋2橋と東側に跨道橋があります。町道を付け替えて跨道橋としますが、ライフラインが通っているのでその移設が課題になります。ランプ橋は現在、詳細設計中です。
橋梁一覧②
――ICから西側はどのようになっていますか
松本 丘陵部でしばらく土工区間となりますが、山砂利採取地域となっていました。山砂利を採取後に建設発生土で埋め戻して、造成後に別の事業を行っていました。そのため、この区間は現在、採取後の穴が開いている箇所や、埋め戻しが完了している箇所が混在している中途半端な状態となっています。切土と盛土を行っていきますが、埋め戻し部は地盤が柔らかいため、地盤改良が必要になっています。
また、本線部が陸上自衛隊の演習場の敷地となっていた箇所もありましたので、演習場の北側の土地を当社で取得し造成後に本線用地と交換しています。
丘陵部の土工区間。山砂利採取の跡地となっている
この土工区間を経て、城陽スマートICに至ります。同スマートICはランプ部が切土で、他は盛土構造で、本線直結型の全方向(フル)対応となっています。
城陽スマートIC
その西側が、富野高架橋で、その後一部盛土区間があり、市街地は城陽JCT・ICまで城陽高架橋となっています。
富野高架橋 基礎工を施工中
山砂利採取跡地で杭の位置が1本ずれると原地盤の深さが約5~10mも変わる
――富野高架橋は
松本 橋長633.5mの鋼11径間連続3主鈑桁橋で、現在、基礎工を進めています。
――富野高架橋は6車線での建設ですか
松本 そうです。
――基礎形式は
松本 鋼管ソイルセメント杭と場所打ち杭です。ここも山砂利採取の跡地ですので、埋め戻しを行った箇所では杭の位置が1本ずれただけで原地盤の深さが約5~10mも変わってしまいます。埋め戻し土の中に杭を打つことは把握していましたので事前調査を行い、40m程度の杭長であれば支持層に到達するという設計をしていました。しかし、前述のような状態ですので、再調査と照査を行っている状況です。
富野高架橋_下部工構造図(P6~P8)
施工状況
――現状、最大の杭長は
松本 44mに達しています。
――橋脚高は
松本 15m程度です。
――上部工はどのように架設していきますか
松本 トラッククレーンでの架設を予定しています。