道路構造物ジャーナルNET

鉄道交差や下水処理場、淀川との離隔などを考慮しながら慎重に施工

2023年新春インタビュー② 阪神高速大阪建設部 淀川左岸線(2期)、同延伸部の建設にまい進

阪神高速道路株式会社 建設事業本部 大阪建設部
大阪建設部長
北澤 俊彦 氏(左)

事業調整担当部長 
坂井 康人 氏(右)

公開日:2023.01.01

豊崎入路 大阪万博開催前の完成が至上命題であるランプ部
 橋長438mの連続鋼床版箱桁橋

 ――豊崎IC付近で、大阪市から阪神高速道路が受託している豊崎入路の構造物の概要は
 坂井 国道423号、いわゆる新御堂筋から分岐して淀川左岸線に入るランプ部で、新大阪駅から万博会場に向かう入路として大阪・関西万博開催前の完成が至上命題であるランプ部です。
 橋長および形式は河川部が橋長173mの2径間連続鋼床版箱桁橋で、橋脚は川の中に3基(ON-P1~P3)あり、全てRC橋脚、基礎は鋼管矢板井筒基礎となっています。

豊崎工区の工事概要

 ――河川部から陸上部についてはどのような形式ですか
 坂井 橋長および上部工形式は橋長438mの連続鋼床版箱桁橋です。橋脚は堤防上に設置されるものも含め、いずれもRC橋脚で、基礎は堤防上が杭基礎で回転杭(ON-P4)、Ⅱ-P1がPCウェル、Ⅱ-P2~P5およびⅡ-A2が鋼管ソイルセメント杭を採用しています。淀川左岸線延伸部と共用の豊崎換気所の施設も建設しますが、海老江JCT部と違い、淀川南岸線に換気所の敷地が南北に分断されるため、換気所と換気塔、変電所を地下ダクトで繋ぐ構造としています。


豊崎換気所の完成イメージ

 ――同地は施工前に地下埋設物の撤去も必要で大変だったようですね
 坂井 そうですね。元々はゴルフの打ちっ放し練習場があったようです。施工前に現場を調べたところゴルフ場の支柱が100本以上ありました。支柱の深さは実に30mに達しており、これらの撤去には骨が折れました。

豊崎工区 淀川渡河部は鋼管矢板井筒基礎、淀川堤防部は回転杭、陸上部は鋼管ソイルセメント杭及びPCウェルを採用
 鋼管矢板井筒基礎 日本で初めてカプセルホウパイラ+脚付き鋼管杭を用いる

 ――陸上部の進捗状況は
 坂井 橋脚基礎工が全て完了しており、今後、柱部の施工に入っていきます。


陸上部の進捗状況①

陸上部の進捗状況②

 ――淀川渡河部の構造は
 坂井 橋長173mの2径間連続鋼床版箱桁橋です。基礎工は河川内のP1~P3が鋼管矢板井筒基礎を採用しました。


鋼管矢板井筒基礎を採用した

 鋼管矢板井筒基礎の施工は、支持層が60m以上に達するため、周辺地盤の締め付けによる施工不良を避けるべく、日本で初めてカプセルホウパイラ+脚付き鋼管杭を用いた手法を採用しました。


日本で初めてカプセルホウパイラ+脚付き鋼管杭を用いた手法を採用

 導枠を使ってまず半円状に杭を配置していきますが、杭は1本飛ばしで施工していきます。その施工も支持層(60m前後)まで達する杭と中間支持層(40m前後)の杭長を交互に配置するものとしました。60mを超える杭長のため、その鉛直精度が重要になりますが、センサーを下ろしていくスピードと超音波の強さをゲージで調整して測定する、国土交通省徳島河川国道事務所が新町川橋の下部工で用いた手法を採用しました。

 超音波孔壁測定方法は鋼管矢板打設後に鉛直精度を測定するものであり、打設時の鉛直精度確保に寄与するものでは有りません。ここでは、陸上部と同様に測量架台を河川内に構築し杭心をXYに方向から確実に視準したこと、及び導杭導材に杭心と離隔をマーキングし、精度管理を行ったことで、その課題をクリアしました。超音波式孔壁測定の結果、設計精度は1/100でしたが、P1では1/600、P2では1/1205、P3に至っては1/1840という高精度で施工することが出来ました。


カプセルホウパイラ工法を採用

 ――鋼管矢板井筒基礎に用いる鋼管杭の本数は
 坂井 P1が22本、P2が32本、P3が30本の合計84本となっています。杭長を考慮して溶接継手部は3~4か所としました。


P2橋脚図面

 ――施工に用いた設備は
 坂井 各橋脚基礎とも200tクレーン付き台船で鋼管杭を施工しています。また、鋼管杭の中詰めコンクリートはバケット、底版、頂版、柱部のコンクリートは、河岸から配管圧送により打設していきます。現在は鋼管杭の施工、頂版や底版コンクリートの打設が完了した状況です。P2橋脚は柱部の施工を開始しており、2023年4月ごろには3基の橋脚部の施工が完了します。


淀川渡河部進捗状況






淀川渡河部施工状況(最下部の2枚のみ井手迫瑞樹撮影)

渡河部上部工の架設はまずP2~P3間を先行架設予定
 貴重な植生にも配慮しながら施工

 ――渡河部上部工の架設については
 坂井 非出水期のみの施工が求められているため、まずは2023年の5月頃迄にP2~P3間の鋼床版箱桁を台船で架設する予定です。
 ――同河川部に関しては環境にも非常に配慮していると聞いています
 坂井 同地には貴重な植物であるチガヤやヨシ群落があり、その植生等に配慮しながら施工を行っています。
 ――豊崎入路の施工会社は
 坂井 下部工が清水・東亜・大豊JV、上部工がJFE・横河JVです。

工事の急速な進捗と安全・安心を両立させる

 ――付言して、今後の進捗について
 北澤 海老江JCTや豊崎入路に関しては、大阪・関西万博までの完成が期待されており、それに間に合わせるため、工事を急ピッチで進めなくてはいけません。しかし海老江JCT直下の海老江下水処理場への操業に悪影響を及ぼすことは絶対に回避しなければいけません。また、協力を頂いている近隣の住民の皆様への影響も最小限にする必要があります。また、工事を進める一方で、工事の安全・安心にも大きく配慮する必要があります。それらを両立して事業を進めていく必要があると考えています。

 --ありがとうございました

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