道路構造物ジャーナルNET

鉄道交差や下水処理場、淀川との離隔などを考慮しながら慎重に施工

2023年新春インタビュー② 阪神高速大阪建設部 淀川左岸線(2期)、同延伸部の建設にまい進

阪神高速道路株式会社 建設事業本部 大阪建設部
大阪建設部長
北澤 俊彦 氏(左)

事業調整担当部長 
坂井 康人 氏(右)

公開日:2023.01.01

海老江JCT バリエーションに富む橋脚8基建設
 戦前から使用されている海老江下水処理場の上空に複雑な本線およびランプの橋を架設

 ――さて、次に橋梁区間について構造物の概要を教えてください
 坂井 2期事業で新たに構築する橋脚は全部で8基あります。鋼製橋脚が4基、鋼管集成橋脚が1基、RC橋脚が3基あります。また、鋼製橋脚は上空を通過する海老江下水処理場などに影響を与えないよう複雑な形状をしております。ほかRC橋台が4基(本線1基、JCT2基、海老江北出口1基)となっています。基礎は圧入ケーソンが7基、鋼管集成橋脚基礎が1基、杭基礎5基となっています。


橋梁基礎の施工状況


通常形状の桁(左)の横にあるのは変わった形状かつ極めて低い鋼製橋脚に、それに追従するような形状の桁がかけられている


様々な形状の橋脚がある

 上部工は全て鋼桁で連続非合成箱桁が多く、一部で合成鈑桁(RC床版)構造もあります。海老江JCTの工事を担う「海老江工区鋼桁及び鋼製橋脚工事」(MMB・横河・宮地JV)は鋼製橋脚の製作・架設が完了し、現在は鋼桁の架設を進めています。
 ――本現場の基礎および下部工の特徴は
 坂井 戦前から使用されている海老江下水処理場の上空に複雑な本線およびランプの橋を架設しなければいけないという点です。処理場の施設や基礎に影響を与えないように基礎もコンパクトになるように設計しました。例えば鋼管集成橋脚では、4本の柱部と大口径鋼管杭基礎をつないで一体化するコンパクトな構造を採用しています。そもそも橋脚を軽量な鋼製橋脚を多く採用しているのも、基礎をコンパクトにできるようにするためです。P本7、P本8は本線橋とランプ橋を架設するためラケット構造にしています。PB2とPB1(ともに鋼製橋脚)はその間に下水処理場施設の濃縮槽があるため、既存施設に影響しない間際を狙って圧入ケーソン基礎を採用しました、それ以外にも曲線的なジャンクション線形に対応するため複雑な形状の鋼製橋脚を採用しています。


P本7、P本8は本線橋とランプ橋を架設するためラケット構造にしている

PB6 鋼管集成橋脚接合部は独特の構造 回転杭を採用、杭長は44m
 圧入ケーソン基礎を採用し、基礎をコンパクトにしている橋脚も

 ――鋼管集成橋脚の鋼管柱部と基礎の鋼管杭を接合する部分は独特の構造になっていますね
 坂井 接合部は、基礎の鋼管杭をさや管として上部の鋼管柱を差し込んだ構造ですが、杭頭部と上部鋼管柱が重複する区間に、管円周に沿って突起部(ずれどめ)を十数段設けています。さらに、上下部構造それぞれに孔あき鋼板プレートが配置され、D51の鉄筋を配置した箇所に、コンクリートを打設して接合部を一体化させるものです。


鋼管集成橋脚の採用箇所と今回採用した構造


鋼管集成橋脚のソケット部


建設中の鋼管集成橋脚(左)、橋脚最下部(中)、制震部材(右)(井手迫瑞樹撮影)


鋼管集成橋脚施工例(阪神高速提供)

 ――鋼管集成橋脚基礎の鋼管杭径を教えてください
 坂井 PB6(BランプP6)鋼管杭径はφ1,600を用いました。杭長は44mに達しましたが、1ロット11mずつ施工し、3箇所の継手は溶接構造を用いています。


圧入オープンケーソンを用いて施工した橋脚

 --圧入ケーソン基礎の採用も行っていますね
 坂井 下水処理場施設との離隔から、基礎をコンパクトにする必要がある箇所においては、圧入ケーソン基礎を採用しており、その径は最小φ6000~最大φ8000㎜で、ケーソンの深さは最小でも30m、最大では50mに達しています。ケーソンは1ロット5~7mで圧入していきました

カーボンネガティブコンクリート『スイコム』を採用
 RC橋脚の柱部の埋設型枠として用いる

 ――PC5(CランプP5橋脚)では二酸化炭素の減量を行える新しいコンクリートを用いているようですね
 坂井 受注者の鹿島建設からの提案に基づき、柱部の埋設型枠にCO2排出量を実質ゼロ以下にできるカーボンネガティブコンクリート『CO2-SUICOM』(シーオーツー スイコム、以下スイコム)を採用しています。
 スイコムはCO2を純減することを可能にした世界初のCO2吸収コンクリートで、鹿島建設、中国電力、デンカ、ランデスが共同開発したものです。1㎥のスイコムは高さ20mの杉1本が1年間に吸収する量以上のCO2を削減できます。

 ――どのようにCO2をコンクリート中に固定するのですか
 坂井 分離回収されたCO2をセメントの主成分である酸化カルシウム(CaO)と反応させ、炭酸カルシウム(CaCO3)を生成させます。生成された炭酸カルシウムはコンクリート中に安定した形で固定されます。
 ――スイコムは橋脚部全体に使うのですか
 坂井 今回はRC橋脚の柱部の埋設型枠として用います。
 12月中旬から型枠施工を始めており、年内に全ての型枠の配置を完了しました。橋脚のコンクリート打設は2月初旬には完了する見込みです。

海老江JCT 上部工架設が最盛期
 2基の門型ベントの架設桁から箱桁を吊下げる工法を採用した箇所も

 ――上部工の進捗状況は
 坂井 桁架設が最盛期を迎えています。桁下に下水処理場があるため施工ヤードの制限をうけることから、架設も様々な工夫を施しています。700t吊のクレーンや350tのクローラクレーンを採用し、できるだけカウンターウェイト積替えを伴う場内移動回数を減らしています。
 P本5(本線P5橋脚)~P本8(同P8)までは、3主桁のRC床版箱桁構造となりますが、先に2本の主桁を架けて、それを横取り架設して、空いたスペースに3本目の主桁を架ける手法を採用しました。P本7、P本8についてはラケット構造であり、桁をクレーンで中に挿し込む形で入れなくてはいけないため、慎重に介錯しながら架設しました。

P本5~P本8の施工(P本8橋脚付近断面図)


横取り架設状況

ラケットの中に橋桁が挿入されている(井手迫瑞樹撮影)

ギリギリのところにベントを立てている(井手迫瑞樹撮影)

 また桁下に下水処理施設(濃縮槽)がある区間は通常のベントが建てられないため、2基の門型ベントの架設桁から箱桁を吊下げる工法を採用しました。上下分割されたブロック長6mの箱桁を2組地組して横桁で連結したあと、それらを工事桁で吊下げ一体化したもの(総重量85.1t)を700t吊のクレーンで一括架設しました。


2基の門型ベントの架設桁から箱桁を吊下げる工法を採用(井手迫瑞樹撮影)

 P本9~P本10間はちょっと特殊な線形となっています。
 ――というと
 坂井 同径間は3主桁の非合成箱桁構造となっていますが、平面線形がR=150m、横断勾配が9%となっています。同現場は現場打RC床版を施工しますが、このような横断勾配を考慮した打設計画が重要です。


手前のRC橋脚から上がりながら曲がるかなりの縦横断勾配およびRである(井手迫瑞樹撮影)

さらにCランプ桁の一部が1期線(Aランプ)と2期線の本線桁の間に位置している
一番右の橋脚の真ん中の突起部に箱桁(梁兼用)を架設しなくてはいけない(井手迫瑞樹撮影)

 ――それは凄いですね。Cランプ桁の一部が1期線(Aランプ)と2期線の本線桁の間に位置しているようですが、どのように架設するのですか
 坂井 下部に位置する2期線の本線桁を架設し、床版まで施工した後に、Cランプ橋(PC3~AC2)の桁を架設します。本線の主桁床版上にクレーンやベントを設置して架設しますが、Aランプによる空頭制限を受けるため、横取り、縦取、ジャッキアップ工法と3つの架設工法を併用して架設します。これら鋼製橋脚と鋼桁の製作・架設は MMB・横河・宮地JVが担当しています。

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