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2023新年インタビュー④ 大阪モノレール 門真市駅から約8.9km延伸、5駅新設

大阪府モノレール建設事務所
所長
岸川 大洋 氏(写真右)

大阪モノレール株式会社
南伸事業室長
今田 吉信 氏(写真左)

公開日:2023.01.01

PC軌道桁 工場のような製作ヤードを設ける
 約580本を製作、架設は相吊り施工

 ――さて、次に軌道桁の架設について聞きます。PC軌道桁の製作・架設から詳しく教えてください
 今田 PC軌道桁は、直線桁や曲線桁など1本、1本がオーダーメイドです。製作には、高度な精度管理を要するため、前回の延伸工事と同じく、門真市桑才新町の近畿自動車道と大阪中央環状線の間の未利用地に幅25m、長さ400mのPC軌道桁製作ヤードを設けます。ヤード内にはバッチャープラントを設け、コンクリートを自前で製造できるようにします。PC軌道桁は、約580本を製作します。台車の上で鉄筋組立からコンクリート打設と養生、一次緊張までが流れ作業でできるようにしています。桁は最大38本仮置きできるようにする予定です。PC軌道桁の標準は、長さ22m、高さ1.5m、幅0.85m、重量59tとなるため、特殊トレーラーで夜間に運搬し、オールテレーンクレーン2台で相吊り架設を行います。


以前のPC軌道桁の製作状況

 ――相吊り架設はどのようなクレーンを用いるのですか
 今田 夜間に大阪中央環状線を交通規制して、オールテレーンクレーンをその中に入れて架設するもので、200tと360t級を用いる予定です。1晩に同じ箇所の上下線、すなわち2本ずつのPC軌道桁を架設する予定です。

鋼軌道桁架設は550tオールテレーンクレーンで架設
 阪神高速、JRを跨ぐ箇所では合計約176mを送り出し

 ――鋼軌道桁の架設については
 岸川 主に550tオールテレーンクレーンで架設します。また一部の箇所では送出し架設を行います。支柱もそうですが鋼製部材同士は添接によって繋げます。
 ――どのような箇所で送出しを行いますか
 岸川 阪神高速道路の東大阪線やJR学研都市線などを跨ぐ箇所は、阪神高速道路上は2径間合計103m(58.5m+44.5m)、JRは1径間45.85mの長さの桁を送り出す予定です。阪神高速道路上は斜角も有しており、一定期間高速道路を通行止めした上で、慎重に施工する必要があります。
 ――桁の地組はどのように行いますか
 岸川 基本的に大阪中央環状線の未利用地などを地組ヤードとして用いて、そのまま架設します。離れた箇所しか地組ヤードがない箇所については自走多軸台車を用いて運んだうえで、同様にクレーンで吊って架設します。
 ――200t、360t、550tと比較的大きなクレーンを架設に用いますが、現場の地盤は強いのですか。また地下埋設物はどのような状況ですか
 岸川 軟弱地盤の箇所もあり、地下埋設物も沢山あります。地下埋設物については事前に把握できていますが、現地でも調査すると共に、地盤の弱い箇所については改良を行うなど対策を取ったうえでクレーンを据え付けます。
 ――架設時の精度は、道路橋と違って非常に高いものが求められると聞きますが
 今田 軌道桁は形式・材料を問わず、±3mmの精度を要求しています。桁をつなぐジョイント部も同様です。これはモノレールの乗り心地の良さにダイレクトに影響するため、特に気を使っています。
 駅部および分岐部の軌道床版は現場打施工が基本となりますが、(精度をより向上させるため)プレキャスト床版の採用についても比較検討が必要と考えています。

阪神高速・JRを跨ぐ箇所には常設足場を設置
 PC軌道桁にはBSPCの採用を検討

 ――鋼・コンクリート問わず、防食などLCC縮減の手法について教えてください
 岸川 駅舎については、基本的に道路上空への建設になるため、容易に維持管理が行えないことから、屋根にはガルバリウム鋼板、外壁はアルミで計画しています。一方、景観についての配慮が求められることから、大阪府景観審議会よりアドバイスを受けて、デザイン整理を進めていきます。
 鋼製支柱や鋼桁の防食については、従来の重防食塗装で対応します。但し、大阪北部地震を受けて、阪神高速道路とJRを跨ぐ箇所については、緊急点検に対応可能な常設足場を設置することで、防食性能の向上も合わせて図ることが出来ます。
 PC軌道桁については、高炉スラグをセメント比50%置換したBSPCを用いて、コンクリートの耐久性を向上させることを検討しています。

支承セットボルトの緩み対策としてノルトロックワッシャーを考慮
 マンホール開口部はハンドル式に

 ――新技術、新材料の活用について教えてください
 今田 既設区間の維持管理を経て、延伸区間に反映している改善事項がいくつかあります。
 従来の支承セットボルトの緩み対策として、今回はノルトロックワッシャーの採用を考えています。また、定期点検時の落下防止装置を取り付ける吊りピースを桁などに追加することにしました。
 鋼箱桁については構造物内部への雨水侵入防止対策としてシール施工を予定しています。滞水防止対策として水抜き穴の設置を考えています。さらに箱桁に設けるマンホールについては、従来のようにボルトで留める構造ではなく、ハンドル式を用いることにしました。合わせて開口寸法も大きくしました。

マンホール取付部の構造

建設事業への府民へのPRを強化
 施工は安全第一を貫く

 ――現在の延伸事業はどの程度進捗していますか
 岸川 設計は全体約8.9kmのうち約3.3kmが完了しており、さらに約6.2㎞が発注済です。
支柱建設工事は全体延長約8.9kmのうち約5.2km(99本分)を発注しました。令和4年の7月末には、支柱第1号が完成し、現在までに7基が竣工しています。
 鋼軌道桁全体約3.7kmの内0.4km、PC軌道桁は全体約4.9kmを軌道桁製作ヤードも含めすべて発注済みです。


詳細設計発注状況/工事発注状況(いずれも拡大して見てください)

支柱建設(北鴻池町工区)

支柱建設(桑才新町工区)北側

支柱建設(安田工区その2)

 ――付言して
 岸川 大阪中央環状線、近畿自動車道に挟まれており、施工時は昼夜間に車線規制しての工事が多く必要であることから、ドライバーや沿線住民の方々の協力が特に必要な現場であると考えています。そのため、モノレール延伸事業のPRもしっかりと図っていきます。また、早期完成を目指していますが、同時に現場の安全第一に工事を進めていかなければならないと考えています。
 今田 大阪モノレールの延伸については、府民全体になぜ必要なのか? という理解が未だ浸透していないと痛感しています。そのため、YouTubeを立ち上げて、ドローンによる現場空撮映像や、施工時のタイムラプス画像など、府民が理解していただけるような進捗状況の映像を上げていき、PRしていきたいと考えています。
 施工に関しては、最大で25m幅と非常に狭い施工ヤードであり、さらには近畿自動車道や大阪中央環状線、民家などに挟まれていることから、安全第一の施工を心がけていきます。
 ――ありがとうございました

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