新たに鉄道4路線と結節、奈良から伊丹、北摂方面が便利に
2023新年インタビュー④ 大阪モノレール 門真市駅から約8.9km延伸、5駅新設
大阪府モノレール建設事務所
所長
岸川 大洋 氏(写真右)
大阪モノレール株式会社
南伸事業室長
今田 吉信 氏(写真左)
大阪府は、大阪モノレールについて門真市駅から南へ約8.9kmの延伸を進めている。同延伸事業では5駅を新設し、新たに4つの鉄道路線とつながることになり、大阪モノレールの都心部を通らずに環状的にバイパスする性格がより強化されることになる。一方で延伸事業は近畿自動車道や、人家、何より大阪中央環状線に囲まれた狭いヤード内で行われるため、非常に難易度が高い施工を要求される。構造物直下も地下埋設物が多数存在し、さらに軟弱地盤箇所も抱えることから、非常にセンシティブな施工を要求される。そうした難しい事業について大阪府モノレール建設事務所の岸川大洋所長、大阪モノレール株式会社の今田吉信南伸事業室長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
大阪モノレール南伸事業概要(大阪府モノレール建設事務所提供、以下注釈なきは同)
松生町駅、門真南駅、鴻池新田駅、荒本駅、瓜生堂駅を新設(いずれも駅名は仮称)
時間的ロスや大阪都心部の渋滞解消にも寄与
――延伸事業について。延伸事業の目的と予想効果、延伸箇所と延長、新設する駅舎について
岸川所長 延伸事業区間は現在開通している門真市駅から南へ8.9kmで、松生町駅、門真南駅、鴻池新田駅、荒本駅、瓜生堂駅の5駅(いずれも駅名は仮称、以下同)も合わせて新設します。現在、大阪モノレールは大阪市中心部から放射状に伸びる6路線と結節していますが、延伸事業によってさらに大阪メトロ長堀鶴見緑地線、JR学研都市線、近鉄けいはんな線、近鉄奈良線の4路線と新たに結節することになり、広域的な鉄道ネットワークが強化されます。松生町駅は他鉄道との結節点ではありませんが、最も長い駅区間である門真市駅から門真南駅間に設置されます。同駅は現在商業系複合施設の開発が行われている箇所に隣接します。年度内に、都市計画事業認可、軌道法工事施行認可の変更に向けて実施してまいります。
大阪モノレールの南伸による整備効果と路線計画図(大阪モノレール延伸事業パンフレットより抜粋)
――モノレールは定時性確保という意味でも非常に大きな効果があると思います。ゆいレールは国際通りなど慢性化した渋滞をスルーして首里城や西原の高速バスとの結節点まで乗客を運ぶことが出来るようになった結果、定時制の確保、地域の発展、観光の振興に大きく寄与しています。この延伸事業もそうした点からも大きな効果があるのではないでしょうか
岸川 おっしゃる通り、南北のネットワークの交流は間違いなく広がると思います。また、近鉄奈良線との結節により、奈良県側との交流の促進はさらに拡大できると考えます。
今田室長 そもそも大阪モノレールは、鉄道サービスを受けられない地域に対する鉄道の環状的な整備が目的です。現在は、都心部を通過しないと大阪(伊丹)空港に行けない方々が延伸によることで鉄道サービスを享受することが出来ます。またそれによる時間的ロスや、交通渋滞の緩和にもつながることで、排気ガスの削減など環境負荷の軽減にも寄与できます。また、モノレール駅にバス停などの結節点を同時に構築することができれば、それにより二次交通の充実にも寄与できます。加えて、事故時などのう回路の確保も行えます。
大阪府 支柱以下および鋼軌道桁を施工
PC軌道桁、(仮称)瓜生堂車両基地はモノレール会社に委託
――延伸部の建設について、大阪府と大阪モノレール株式会社の事業分担はどのように行うのですか
岸川 基礎、支柱、軌道桁、駅舎躯体などのインフラ部については大阪府が整備します。
今田 車両、信号通信線、電車線、変電所、建物などのインフラ外部については大阪モノレール会社が整備します。
――一部、大阪府からモノレール会社への事業委託などはないのですか
今田 PC軌道桁は大阪モノレール株式会社が大阪府から受託し、製作・架設を行います。また、延伸部の南側終点である瓜生堂駅近くに整備する(仮称)「瓜生堂車両基地」(下写真図参照、提供大阪府モノレール建設事務所)についても、インフラ部とインフラ外部が輻輳するため、大阪モノレール株式会社が受託して整備を行います。
――現場を見るととても細長く、大阪中央環状線や近畿自動車道、住宅地に囲まれた箇所にありますね
今田 幅25m、長さ750mの狭い箇所に建設しなくてはなりません。全体的に言えることですが、交通や既存構造物への影響を考慮しながら施工する必要があります。
――大阪中央環状線はどの程度の交通量ですか
今田 平成27年度のセンサスでは24h自動車類交通量で112,203台(東大阪市本庄西)、102,707台(大阪市鶴見区茨田大宮2丁目)となっています。大変な交通量のため、車線規制はできるものの、夜間においても全面通行止めなどはできません。
構造物はPC軌道桁が約4.9km、鋼軌道桁が約3.7km
支柱はRC製が約283基、鋼製が約54基
――延伸部の構造物比率を教えてください
岸川 軌道桁の比率はPC軌道桁が約4.9km、鋼軌道桁が約3.7km、モノレール橋が1橋90mとなっています。支柱本数は、RC支柱が約283基でそのうちT型が191基、L型が70基、門型が22基、鋼製支柱が約54基でT型が3基、L型が13基、門型38基となっています。支柱本数を約と申し上げるのは、一部区間ではまだ設計中であり、支柱本数が増減する可能性があるためです。
軌道桁・支柱の基本構造(上)と各桁の構造(下)(大阪モノレール延伸事業パンフレットより抜粋)
PC軌道桁は径間長が22m未満の個所で使います。鋼桁は径間長22m以上50m未満までが対象となります。それ以上の径間長としてはモノレール橋などを用います。
――モノレール橋とはどのような構造ですか
岸川 橋脚の上に支承を介してまず土台となる鋼箱桁を架設し、さらにその上に支承と一体のPC軌道桁を並べるものです。
基礎 多列杭、圧入ケーソン、アーバンリングを採用
RC支柱は現場打ち、門型鋼製支柱の梁はオールテレーンクレーン架設
――橋脚の基礎はどのような構造を用いていますか
岸川 地下構造物との離隔が確保でき、施工ヤードが十分確保できる箇所は多列杭(現場打ち杭)を採用します。地下構造物と近接するような箇所や、施工ヤードに制限がある箇所は、圧入ケーソン、アーバンリングなどを用いています。
――現場環境を考えると振動や騒音には非常に気を付けなくてはいけませんね
岸川 それも考えて低騒音の重機で施工を行う工法を用いています。
また、現場の制約がある箇所については、基礎の面積もできるだけコンパクトになるよう設計しています。
――RC橋脚躯体の建設方法はどのようにしますか
岸川 現場打ち施工です。
――鋼製支柱はどのように施工しますか
岸川 オールテレーンクレーンにより架設する手法が基本です。