宝満川橋、許田高架橋などで大規模更新工事も進む
NEXCO西日本九州支社 12箇所78kmの4車線化を推進
大規模更新 許田高架橋で現場に合わせた門型クレーンで床版を架設
宝満川橋 7万台の交通量に配慮して3分割施工
――次に大規模更新・修繕事業については
大久保 九州支社管内で開通後30年以上経過した橋梁は、6割を超えています。そのため老朽化や劣化は顕著になりつつあり、リニューアルプロジェクトを着実に進めている状況です。
その中で現在床版取替工事を行っているのは8箇所、法面や盛土補強を行っている個所が9箇所あります。(右図)
例えば沖縄自動車道では許田高架橋南他1橋で床版取替工事を行っています。内訳は許田高架橋が449.5mの鋼(3+3+3+4径間)連続非合成鈑桁橋、伊芸橋が橋長75.8mの鋼2径間連続非合成鈑桁でそれぞれ約5,200㎡、約800㎡の床版取替を行い、伊芸橋については、約500㎡の塗り替え塗装も行うもので、4月中に床版取替が完了しました。
両橋の既設床版損傷状況
許田高架橋(上り)および伊芸橋(上り)の橋梁床版取替工事概要と橋梁概要図
この工事で特徴的なのは、国道58号と並行する中、対面交通規制で施工を行うため作業ヤードが限られます。その解決策として、安全を考慮した門型クレーンを有する架設機を現場に合わせて製作し、それを用いてプレキャストPC床版の架設を行ったことです。
昼夜連続の対面規制を行うということで、お客様に次のICまでの所要時間を提供するなど様々な情報提供に取り組んでいます。
床版設置状況① トレーラーからの吊り上げ/架設位置への移動
床版設置状況② 旋回/架設
――2022年度から施工する橋梁は
大久保 九州自動車道の宝満川橋床版取替工事があります。鳥栖JCTから久留米IC間に位置する橋梁の床版取替工事です。同橋は橋長154.7mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋です。床版取替約4,800㎡、塗替え塗装約12,000㎡を行うほか、桁補強、支承取替、変位制限装置(ダンパー)の設置も合わせて行う予定です。
鳥栖JCT~久留米ICは日交通量が7万台に達する重交通路線です。
宝満川橋床版取替概要と同橋位置図
――床版取替の嚆矢となった九州自動車道向佐野橋床版取替工事を思い出しますね
大久保 施工中の渋滞対策ということで片側3車線のうち2車線を確保しながら3分割で施工を行っていく計画です。まずは追越車線側、次いで中央部分、最後に第1走行車線側をそれぞれ分割する形で床版取替を行っていきます。
宝満川橋構造概要/分割施工概要図
――分割部の継手構造はどのように考えますか
大久保 同工事は大林組・大本組のJVが受注しており、橋軸方向も橋軸直角方向もすべて大林組保有のスリムファスナー工法による継手構造としています。
――架設工法は
大久保 門型架設機を用いて施工する計画です。
天降川橋では長寿命化を考慮しFRP製の検査路を採用
――その他の床版取替工事については
大久保 久留米高速道路事務所管内では、宝満川橋の他に矢部川橋でも床版取替工事を行う予定ですが未発注です。また、鹿児島高速道路事務所管内では、天降川橋の床版取替工事を完了し、現在は塗替え塗装や検査路の設置を進めている状況です。同管内の本名川橋(上り線)他1橋については1月に契約したばかりでこれから詳細設計を行う予定です。宮崎高速道路事務所管内の池島川橋(上り線)の床版取替工事についても昨年11月に発注したばかりで現在詳細設計を進めています。
沖縄管内では、億首川橋(下り線)他1橋床版取替工事は、床版取替自体は完了しており、現在は塗替え塗装や耐震補強を行っています。また、許田高架橋北他1橋床版取替工事(その1)も1月に契約したところであり、これから詳細設計を行う予定です。
――天降川橋については、トラス橋であり、塗替えが難しそうです。さらに検査路も同橋の景観性に配慮しつつ長寿命化を図るため、FRP製のものを採用したと聞きますが
大久保 トラス橋は部材が多く、格点部など狭隘な部位もあるため既設塗膜の剥離作業は時間を要します。また、既存塗膜に鉛などの有害物質が含まれているか事前に調査を行い、有害物質が含まれる場合は、厚生労働省通達や関係法令に基づき塗膜剥離剤による旧塗膜剥離を行っています。
検査路については、床版取替に併せて増設する計画です。点検を合理的に実施するための使用形態を考慮して条数、設置個所、および範囲を選定しています。また、検査路増設に伴い軽量化を図るためFRP製検査路を採用しています。
天降川橋で設置したFRP製検査路
――九州支社管内では、今後合成桁の床版取替工事というのはありますか
大久保 鹿児島高速道路事務所管内にある本名川橋(上り線)で計画しています。本名川橋は鋼3径間の連続トラスと単純合成桁で構成されており、単純合成桁の床版取替工事を予定しています。
過年度に更新した本名川橋(下り線)の工事状況。合成鈑桁・サグや曲線・厳しい縦横断勾配と厳しい施工環境だった(井手迫瑞樹撮影)
――耐震補強の進捗状況は
大久保 ロッキングピア対策については全数で完了しています。
現在は佐賀管内で5橋、鹿児島管内で11橋、北九州管内で13橋、大分管内で9橋、宮崎管内で6橋、沖縄管内で14橋の耐震補強工事を進めています。対策は橋脚の炭素繊維シート巻き立て補強、落橋防止装置の設置、支承取替、制震ダンパーの設置、縁端拡幅、段差防止構造の設置などです(右は位置図)。
――どのような補強を行っているでしょうか
大久保 主たる補強は落橋防止装置の設置と橋脚の炭素繊維シート巻き立て補強です。
耐震補強施工状況
――上部工耐震を伴う耐震補強があれば詳細を教えてください
大久保 沖縄の億首川橋でトラス部材の補強を行っています。対傾構および下横構の当て板補強を行っています。
――大規模更新における法面補強についてはどのような補強を行っていますか
大久保 のり面補強は、切土のり面の補強と盛土のり面の補強を行っています。切土のり面補強は鋼材の防食機能が不十分な旧タイプグラウンドアンカーを新タイプアンカーに更新しのり面の長期安定性を確保するものです。現在21箇所で施工完了し、7箇所で施工中です。盛土については3段以上の高盛土などを対象に水抜きボーリングを施工し、盛土内の浸透水排除により安定性を高めています。現在29箇所で施工完了し、3箇所で施工中です。切土、盛土ともに、今後調査が完了した箇所より順次工事を進める計画です。
のり面補強の施工状況及び完了状況
遠隔臨場を原則導入
現場には不定期に赴き品質を確保、自社の技術力向上も目指す
――最後に今後の建設事業の進め方について
大久保 建設事業に従事される担い手が少なくなっている中で、効率的に事業を行っていく観点が非常に重要になっています。例えば遠隔臨場やICT土工も積極的に採用していきます。一方、4車線化事業や床版取替工事は、供用線に近接した施工となり安全に最大限の配慮が必要なこと、施工上必要となる交通規制に対し、社会的影響を最小化する必要があること等から、新技術・新提案を積極的に取り入れていきたいと考えています。
――効率化もさることながら、品質確保のためには立会願を出した上での検査だけではなく、抜き打ちなどの検査を行うことも考えなくてはいけないのではないでですか
大久保 モデル施工等施工条件の決定・確認をするものや支持層の確認等、監督員の判断が必要なものは現場で確認します。また、現場に赴き、施工状況を確認していくことは重要であると考えています。現場を把握するということは、我々自身の技術力を上げることにもつながると考えています。
――ありがとうございました