宝満川橋、許田高架橋などで大規模更新工事も進む
NEXCO西日本九州支社 12箇所78kmの4車線化を推進
佐世保高架橋 鋼製の拡幅梁を施工し、拡幅桁を架設
門構や相吊り、吊り上げなど様々な架設方法を採用
――橋梁については
大久保 佐世保中央IC~佐世保みなとIC間は全て橋梁形式となっています(佐世保高架橋)。このうち1.9kmの拡幅区間は、両側に拡幅する必要があります。高速道路の両側は県道11号が並行しておりますが、その県道11号の直上に架かる形で橋脚の拡幅梁を設置し、PCケーブルで緊張して一体化した後、両側に拡幅桁を架設します。
佐世保高架橋同構造概要図
佐世保高架橋構造詳細図と拡幅部工事状況①
県道沿いで工事を行うため、安全配慮の観点から、高速道路本線や県道を夜間通行止めしながら、施工を進めていきます。夜間通行止め期間を最小限にするため、下部工の拡幅梁を鋼製にし、架設工法についても工夫を凝らすなどしています。
両側拡幅の他には、片側のみ張出す、橋脚を新設するなどして2車線を新たに確保する区間もあります。昨年9月からPC橋部分(全部で8ブロック)の1ブロック目の施工を開始しており、現在は桁架設まで完了しています。
拡幅部工事状況(左)PC桁部、(右)鋼桁部
――PC橋部分の拡幅はどのように行うのですか
大久保 まず支保工を設置し、次いで夜間通行止めで鋼製梁をトラッククレーン工法にて設置します。1ブロック目のPC桁は2台のトラッククレーンを用いた相吊りと門構を用いた架設の2つの工法により施工しました。門型架設を使用しているのは、信号機や標識が近接し、トラッククレーンを用いることが出来ない箇所があるためです。本線上に門構を設置して、桁を横取り架設します。その後門構を撤去して、朝には交通を開放しました。
――門構の設置、桁架設、門構の撤去を1夜間で良く行えますね
大久保 スムーズに行えるようにするため、トラッククレーンで架設した桁の上に門構をあらかじめ仮置きしておき、それを規制開始後にクレーンで吊り上げて所定の位置に設置します。その後、多軸台車で本線上に搬入した桁を横取りして架設します。終了後はまた門構を桁の上に仮置きして完了となります。
――佐世保高架橋はPC桁なのですか
大久保 鋼桁とPC桁が混在しています。
――PC桁部分も鋼製梁で支えるんですね。鋼製梁内にはグラウトなどを行うのですか
大久保 RCの既設梁と接続している箇所に関しては、鋼殻セルになっており、充填コンクリートを打設し、PCケーブルで緊張して、その部分はグラウト充填により一体化します。
――鋼桁部位については
大久保 今後施工していきますが、こちらについてはジャッキの吊り上げ装置による一括架設工法も併用して施工していきます。
支点部の桁のみトラッククレーンで先行架設し、その桁の上に吊り上げジャッキを設置しておき、中間部の桁は多軸台車で運んだ上で吊り上げ装置で上げて桁を接合するというものです。また、本線上に桁を運搬し、横取り架設する手法も併用します。具体的には既設高欄をかわすような形で吊り上げて、張出した梁に桁を据え付けます。既設の壁高欄の前には、仮設壁高欄を置いて防護し、少し路肩幅員を狭くした形で施工しています。
鋼桁部ジャッキの吊り上げ装置による一括架設計画図
――吊り上げやクレーンによる架設を行う場合、側道の(長崎)県道11号はどのように規制するのですか
大久保 県道11号については、夜間は交通量が減少すること、また、並行している国道35号を迂回路として使用できることから、架設する夜間は上下2車線とも全面通行止めとします。また、門構を使用する際は、高速道路上の当該IC間を夜間通行止めして施工することもあります。
――佐世保高架橋以外では
大久保 沖新高架橋(鋼)、小野橋(PC)など、11の橋梁の4車線化を計画しています。
沖新高架橋については、既設橋脚は1期線の際に建設していますが、耐震性能を向上させるため、上部工架設前に下部工の耐震補強を行っています。小野橋は下部工を施工中です。
沖新高架橋(左)/小野橋概要図および工事状況写真(右)
隼人道路 加治木JCT~隼人西IC間は今年冬の完成目指す
清水川橋 陸上部を全面展開、海上部はこれから
――一般国道10号隼人道路について
大久保 同事業は鹿児島県霧島市隼人町住吉~姶良郡加治木町反土間延長7.3kmを4車線化する事業です。区間内に建設予定の橋梁は3橋で延長0.7km、トンネルは1箇所0.3kmあります。
同事業は、①加治木JCT~隼人西IC、②隼人西IC~隼人東ICの2区間に分かれています。両区間とも全面展開していますが、①については、2022年冬の完成を目指して舗装・施設工事を進めています。(右図:事業概要)
②については構造物の工事が全面展開しており、野久美田トンネル、清水川橋下部工などの施工を進めています。野久美田トンネルに関しては延長258mを全て発破掘削で掘進していきます。現在はトンネル掘削に先立って西側坑口付近の切土法面の施工を行っている状況です。この法面の工事が終わりトンネルの施工ヤードが構築され次第、掘削に着手します。
野久美田トンネル工事概要と西側坑口施工状況
野久美田トンネル西側坑口完成予想図
――清水川橋は
大久保 橋長507mの11径間連結プレテンホロー+PC4径間連続箱桁+単純ポステンT桁橋です。海上部分を横架するため、塩害対策としてエポキシ樹脂塗装鉄筋の採用や、検査路にはFRP製を採用しています。
清水川橋構造概要図
清水川橋現況空撮状況(左)/基礎工施工状況(中)/フーチング施工状況(右) 場所打ち杭基礎は33m~最大50mの長さが必要
(中)、(右)写真は井手迫瑞樹撮影
――基礎工は
大久保 海上部はニューマチックケーソン基礎、陸上部は場所打ち杭を採用しています。
――現在の進捗状況は
大久保 海上部は発注して間もなく、これから施工していきます。現在は陸上部の下部工を施工しているところです。
――陸上部はホロー桁を使用していますね
大久保 桁高制限があることからプレテンホロー桁を採用しています。
――1期線との離隔は
大久保 海上部は十分ありますが、陸上部は近接施工となります。
清水川橋海上部現況(1期線の海(写真左側)側に)2期線が建設される(井手迫瑞樹撮影)/完成予想図
隼人港橋 鋼管矢板井筒基礎の深さは52mに達する
鋼桁は航路のため塗替えが難しく金属溶射を採用
――隼人港橋は
大久保 橋長140mの鋼3径間連続2主鈑桁橋です。橋台部については既に1期線の時に建設しています。隼人港に出入りする船の航路を横架するということで、将来の塗替え塗装の際に航路の関係でクリアランスがとれないため、金属溶射を計画しています。2期線の海中部基礎は鋼管井筒矢板基礎を採用しています。
隼人港橋構造概要図
隼人港橋空撮状況/隼人港橋桟橋設置状況。同橋の海上部は鋼管矢板井筒基礎で施工する(井手迫瑞樹撮影)
1期線側の耐震補強も行う。足場にはクイックデッキライトを使用している個所も(左、中)/陸側から見た隼人港橋(井手迫瑞樹撮影)
――図面を見ると鋼管矢板井筒基礎の長さが深いですね
大久保 軟弱地盤層が予想されており、基礎は52mと深くなっています。ただし1期線の実績もありますので、それに従って施工していけば問題ないと考えています。
――下部工および上部工の施工は
大久保 下部工は仮桟橋を設置して施工し、上部工はA1側から送出し架設を採用する予定です。
美山~伊集院 今年度から工事に着手
宇佐別府道路 香下トンネルの掘進が始まる
――南九州西回り自動車道美山~伊集院の4車線化事業について
大久保 同事業は美山IC付近から東側の2.3kmを4車線化する事業で、構造物はPC橋梁が2橋(0.9km)あります。現在は調査設計を行っている状況です。2022年度から工事に着手する予定です。
南九州西回り自動車道市来~鹿児島西の4車線化事業概要/東九州自動車道(椎田道路)4車線化事業概要
――東九州自動車道(椎田道路)4車線化事業は
大久保 築城IC~椎田南IC間7.7kmを4車線化する事業です。現在は調査設計段階となっています。
――東九州自動車道(宇佐別府道路)4車線化事業は
大久保 宇佐IC~院内IC間4.6kmを4車線化する事業で、構造物としては5橋1km、トンネルが1本1.2kmとなっています。現在は香下トンネル(1,205m)の掘進を進めています。
同工事は北坑口の方から片押しで掘進するもので、全て発破掘削により施工していきます。現在はその掘進が始まった状況です。
東九州自動車道(宇佐別府道路)4車線化事業概要/香下トンネル工事状況
――橋梁工事はどのような状況ですか
大久保 橋梁工事については、これから順次工事発注を行っていく予定です。
――東九州自動車道 大分宮河内IC~臼杵IC間の4車線化事業は
大久保 同事業は延長6.8kmを4車線化するもので、現在は調査設計中です。
東九州自動車道 大分宮河内IC~臼杵IC間4車線化事業概要
――東九州自動車道佐伯弥生PA事業については
大久保 上り線側は2019年9月23日に完成していますが、下り線側にも新たにPAを設置する事業です。現在は工事着手に向けて準備中です。
東九州自動車道大分宮河内IC~津久見IC 4橋、1トンネルを計画
幸地IC(仮称) 本線を跨ぐ部分の橋梁を今年度架設
――東九州自動車道大分宮河内IC~津久見ICの4車線化事業については
大久保 事業延長区間は6kmあり、構造物は、橋梁はPCが4橋で0.8km、トンネルは1本で1.9kmとなっています。現在は工事を発注したところであり、現場はこれから施工に着手していくという段階です。
東九州自動車道大分宮河内IC~津久見IC間4車線化事業/新富SIC設置事業概要
――東九州自動車道新富SIC(仮称)の設置について
大久保 高鍋IC~西都IC間の宮崎県児湯郡新富町内に新たにSICを設置する事業で、今後用地取得に着手する段階です。
――東九州自動車道高鍋~西都4車線化事業については
大久保 事業延長は4.7kmで、構造物は3橋0.7kmを予定しています。現在は調査設計段階です。
東九州自動車道高鍋~西都間4車線化事業概要/同宮崎西~清武間4車線化事業概要
――東九州自動車道宮崎西~清武4車線化事業については
大久保 事業延長は3.7kmで、構造物は2橋0.7kmを予定しています。こちらは全線で土工工事を進めています。橋梁工事はこれからです。
――沖縄自動車道の幸地IC(仮称)設置事業については
大久保 同ICは、西原IC~西原JCTの中間にあたる箇所に新たに地域活性化ICである幸地IC(仮称)を新設するものです。同事業は沖縄県から受託する形で本線を跨ぐ橋長62mのランプ橋があり、架設はクレーン+ベント工法で予定しています。
現在は橋梁の架設ヤードで使用する部分の土工工事を行っています。架設時期は今年中を予定しています。
幸地IC事業概要図と同施工状況