宝満川橋、許田高架橋などで大規模更新工事も進む
NEXCO西日本九州支社 12箇所78kmの4車線化を推進
西日本高速道路九州支社は、12箇所78kmの4車線化事業及びPAやICの新設事業、さらには大規模更新事業、橋梁の耐震補強など多くの案件を進めている。その内容について詳細を同支社建設・改築事業部長の大久保良和氏に聞いた。(井手迫瑞樹)
苅田北九州空港~行橋間は舗装工等が進む
八木山BP4車線化は舗装・施設工事を担当
――管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について
大久保部長 九州では、毎年のように災害が発生しています。安全性・走行性に加えて、災害時の代替機能を確保するため、4車線化事業を推進しています。
4車線化事業は、12箇所78kmを進めています。長崎自動車道 長崎IC~長崎芒塚IC間3kmは3月17日に4車線化が完了し、長崎市~大分市に至る九州横断自動車道延長257kmが全て4車線になりました。
3月30日に国土交通省から事業許可が発表されましたが、2022年度から新たに4車線化に着手する区間として、東九州自動車道の津久見IC~佐伯IC間3.3kmが選定されています。
4車線化事業に加えて、利便性向上を図るべく、スマートIC2箇所、地域活性化IC1箇所、PAを1箇所を建設しています。
――進捗中の事業を東九州道苅田北九州空港IC~行橋IC区間4車線化事業から教えてください
大久保 同区間の延長は1.1kmであり、全てが土工区間となっています。概ね土工工事が完了しており、現在は舗装や標識などを設置する工事に着手しています。
東九州道苅田北九州空港IC~行橋IC区間4車線化事業概要図および工事状況写真(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)
――八木山バイパス4車線化事業は
大久保 延長13.3kmの事業です。現在は国土交通省福岡国道事務所さん及び北九州国道事務所さんが工事を進めています。NEXCO西日本は、舗装および施設工事などを担当します。
――現在の進捗状況は
大久保 国土交通省さんの方で、区間西側に位置する篠栗~筑穂間は全面的に工事が進められています。また、その東側の筑穂~穂波東間については順次工事が進められています。当社は舗装及び施設の調査・設計を進めています。
八木山BP事業概要図
味坂SIC(仮称) 本線跨ぐランプ橋を夜間に一括架設
7万台の交通量に配慮しながら施工を進める
――味坂スマートIC(仮称)については
大久保 福岡県と佐賀県の県境に建設が予定されているETC専用のスマートIC(以降、SIC)です。現在は土工工事を進めています(右下概要図)。ここには高速道路本線を跨ぐ位置にランプ橋を1橋建設する予定です。こちらは本線を夜間通行止めして桁架設を行う予定です。当該箇所は6車線区間であり、多軸台車を使用し1夜間で架設する予定です。現在は工事を発注して詳細設計を行っている状況です。
――6車線を跨ぐということで長さも相応にありそうですが
大久保 橋長43mの鋼ポータルラーメン(3主鈑桁)橋です。
ここは7万台以上の交通量がありますので、それに配慮しながら施工することが必要です。
――施工会社は決まっているのですか
大久保 大林組が上部工の製作架設を行います。
――下部工の建設はどのような状況ですか
大久保 現在両側の橋台部を施工している状況です。また、カルバートボックスや土工部の施工も合わせて行っています。下部工や土工部の施工は村本建設・大藪組JVです。
味坂SIC施工状況写真
佐世保道路 佐世保高架橋が全面展開
天神山トンネル、弓張トンネルの掘削も進む
――佐世保道路の4車線化については
大久保 延長が16.9km(長崎県北松浦郡佐々町沖田免~佐世保市大塔町)あり、工事は全面展開中です。
構造物は橋梁が12橋で延長5.7km、トンネルは2本で3.6kmあります。現在は弓張トンネル(延長2,671m)の掘削が1,800mほど完了している状況です。東側坑口は、家屋が近接しているため機械掘削による施工を行います。それ以外は発破掘削により施工します。
佐世保道路全体事業概要
弓張トンネル西坑口の工事状況と東坑口の完成予想図
――地盤や水などの懸念材料はありませんか
大久保 水については、幸いなことに1期線側のトンネルを供用していることもあり、大きな出水は無いようです。地盤的には中央部に弓張断層がありますが、これまでは順調に掘り進めることが出来ています。
――もう一つの天神山トンネルについては
大久保 同トンネルは延長909mあります。東坑口の方から掘り進めており、現在は80mほど掘進しています。
トンネルを掘り進める前に斜面対策工が必要でした。西坑口の方には近接する家屋や交差道路があります。1期線施工の際に沈下が見られた記録が残っているため、施工に伴う沈下を防止するため、深礎杭による抑止杭を先行して施工しているところです。トンネルの掘削が到達する前に斜面対策工は完了させます。
東側坑口には、工事を安全かつ効率的に行うため工事車両用エレベーターを構築しました。
天神山トンネルで使用されている工事車両用エレベーター
――このようなエレベーターを作った理由は
大久保 東側坑口はトンネルを出ると土工は僅かですぐに橋梁となっています。そのため、一般道からトンネルの坑口にタッチできない地形となっています。本線から進入することも考えられますが、トンネルを抜けてすぐに現場に入らねばならず、安全性の確保が困難と判断し、工事車両用のエレベーターを構築したものです。ここから資機材の搬入やずり出しなどを行います。エレベーターは10tダンプ2台が入れる構造です。施工ヤードも限られ、供用線も近い中での苦肉の策といえます。エレベーターは2期線側の橋梁建設予定地をヤードとして使用し設置しました。
一般道からトンネルの坑口にタッチできない地形
――掘削方法は
大久保 家屋がトンネルの上に点在していることもあり、全て機械掘削としています。
天神山トンネル施工状況