大日本塗料は、橋梁などにおける土木分野の塗料において、トップクラスのシェアを有する。汎用的な重防食塗料はもちろん、『メタモルシート♯1』、『タイエンダー』、『ポールダンサー』、『エポティ』、『ケルビンα2.5』、『サビシャット』などの独自性のある商品群、MS工法などの溶射、コンクリート防食分野などにも浸透している。さらに最近は防食技術センターも設立し、その商品開発力に磨きをかけている。同社塗料事業部門 構造物塗料事業部長の徳田宏氏に今後の意気込みを聞いた。(井手迫瑞樹)
他社との差別化が重要
土木分野の社内売り上げ比率を30%まで上げたい
――大日本塗料のここ2、3年の全体売上に占める土木分野の比率、また今後の中期的な展望は
徳田事業部長 売り上げの25%前後を構造物(土木)分野が占めています。ここ数年は他分野に比べるとコロナ禍の影響も小さく、売り上げに占める比率は大きくなっております。
――御社の土木売り上げに占める、鋼・コンクリート比率は
徳田 95%が鋼で、コンクリートは5%です。
--今後、土木分野は御社の中でどう位置付けていきますか
徳田 売り上げを向上させ、当社内における売り上げに占める割合を30%以上にしていきたいと考えています。構造物(土木)分野における当社シェアも現在の30%から40%まで上げていくことを目標にしております。
――そうしたことを実現するための中期的な取り組みは
徳田 商品戦略です。定番の塗料だけでなく、他社との差別化、ニーズ、シーズ商品を開発し提案していくことが重要と考えております。つまり、当社でその商品の市場を作り、価値を上げることでシェアを広げていき、大日本塗料に相談すれば安心だ、とおっしゃって頂けるようにしていきたいと思っております。
塩害環境向けに特化した高遮断塗装システム『タイエンダー』
-5℃での施工も可能な錆止め塗料『エポティ』
――売り上げを伸ばしている商品・分野は
徳田 特に伸びている商品群は、新たに開発した①貼る重防食シート『メタモルシート♯1』、②塩害環境向け高遮断塗装システム『タイエンダー』、③地際・基部腐食対策塗装システム『ポールダンサー』、④弱溶剤系防食下地塗料『エポティ』、⑤剥離抑制型弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料『ケルビンα2.5』、そしてロングセラーの⑥塗布形素地調整軽減剤『サビシャット』です。
メタモルシート施工例 ①施工前
メタモルシート施工例 ②施工状況 左:貼付け状況、右:塗布状況
メタモルシート施工例 ③施工完了状況
『タイエンダー』は鋼構造物分野における塩害環境向けに特化した高遮断塗装システムです。下塗塗料は、通常の塩害地区で用いられる従来品と比べて、塩水噴霧試験の結果では3倍の防食性を有しています。塗料の中に鱗片状アルミニウム顔料を並列配向させ外部から入ってくる塩分等の劣化因子を遮断します。樹脂は疎水性を特長とする特殊変性樹脂から構成される高密度架橋ポリマーで、腐食性物質の塗膜内への侵入・拡散を抑制します。さらに複数の無公害特殊防錆顔料を鱗片状アルミニウム顔料・高密度架橋ポリマーの合間に配置することで、従来品と比べて3倍の耐塩害性の能力を発揮します。また、塩害対策に加え、省人・省力・省工程化も図っております。つまり、鉄・非鉄金属に対応でき、-5℃の施工性を有し、120μmを1回の工程で施工できます。
タイエンダーの施工前後例
『ポールダンサー』は橋脚や標識ポール、照明、ガードレールなどの付属物の地際・基部に特化した腐食対策の塗装システムです。最大の特徴は4工程ある塗装を1日で施工できることです。なおかつ基部の形状、ひび割れに対し追従性が優れ、防食性も有した国土交通省の「新たな道路照明に関する技術」公募において、塗料としては唯一有望技術に認定された商品です。
ポールダンサー施工前後
『エポティ』は鉄・非鉄を問わずオールマイティに塗装でき防食性能を発揮する錆止め塗料です。-5℃の低温環境下でも施工できることも特長です。
――エポキシ系塗料なのに、氷点下でも施工できるのですか?
徳田 できます。通常、エポキシ樹脂塗装は5℃以下での施工性が悪く、乾燥速度が極端に遅くなります。そうした(寒冷地における施工)ご要望にもふまえて開発した商品です。
――『ケルビンα2.5』は
徳田 上市してから3年ほどたちますが、毎年使用実績が増えています。
道路橋、鉄道橋、水管橋、屋根、鉄骨、タンク、化学プラント等多岐に採用されております。
某私鉄では、有効性を評価頂きケルビンα2.5が採用されております。
また、NEXCOの構造物施工管理要領 令和2年7月版に『はく離抑制型変性エポキシ樹脂塗料下塗』の塗料規格が新たに設けられました。これから中長期的に販売を伸ばしていきたい商品です。
ケルビンα2.5施工例
――『サビシャット』は取材先でもよく聞きます
徳田 発売して20年強経ちますが、毎年右肩上がりに伸びておりロングセラー商品になっています。
こうした、他社にない技術を営業展開していくことで、大日本塗料の土木分野でのアドバンテージを広げていきたいと考えています。