明神山トンネルが貫通 双海橋は仮設道路完了し、下部工施工中
2022年新春インタビュー④ NEXCO西日本 愛媛 伊予IC~中山SIC間が全面展開
西日本高速道路株式会社
四国支社
愛媛工事事務所
所長
渡邉 浩延 氏
双海橋 下地山を緩めず、1期線に影響を与えない様な施工が必要
現場までの進入路は軽量盛土工法、Sqcピア工法、LIBRA工法を採用し施工
――双海橋について1期線と変わることは
渡邉 1期線時(双海橋の隣接する1期線の橋)は、PC補剛桁(箱桁)を有するRC逆ランガーアーチ橋ですが、2期線の双海橋(橋長232.3m、幅員9.31m、PC4径間連続バランスドアーチ橋)は1期線に近接して作りますので、地滑り地帯にあることと相まって、下部工の施工においては地山を緩めず、1期線に影響を与えない様な施工が必要となります。このため1期線と若干、橋長およびスパン割は変わっています。A1橋台およびP1橋脚には支承を配置しますが、P2、P3、A2はアーチリブや鉛直材を含めてすべて剛結構造とし、施工性と維持管理に配慮した構造にしています。地滑り対策を要する箇所は、国道から進入路を設けて1期線の時と同じように仮設道路を作り、橋梁の下部工に着手していきます。進入路は大規模な仮橋が必要となり、仮橋までのアプローチ盛土には、一部軽量盛土工法(EPS)を採用し施工しています。軽量盛土工法を用いるのは、先ほどから話しているように地滑り地帯の地盤に負担をかけないためです。仮橋だけで1km近くに達します。
――こうした箇所に使う仮橋は特殊なものが要求されそうですが
渡邉 仮橋の高さやスパンに対応して、Sqcピア工法およびLIBRA工法を併用します。
Sqcピア工法/LIBRA工法
バックステイアンカーが難しい地盤条件
バランスドアーチを採用し、トラス張出し架設工法で施工進める
――架設は側径間から攻めていく形ですか
渡邉 1期線は逆ランガーアーチ型式を採用しており、橋脚から斜材によって張出しを保ちながら施工しました。
2期線はバランスドアーチを採用してバックステイアンカーを不要にした構造を採用しました。
双海橋側面図
支点上の負反力に関する検討
――2期線はそもそもなぜバックステイアンカーを不要とした構造にしなければならなかったのでしょうか
渡邉 1期線施工時に、大規模な構造物の掘削が行われており、それを埋め戻した箇所であるため、バックステイアンカーを入れるための土被り量や耐力が期待できないためです。そのためバランスドアーチを採用しました。バランスドアーチであるP2は、同橋脚を中心に左右対称に施工を進める予定です。バランスドアーチの施工方法については、トラス張出し架設工法を用います。
A2橋台付近地盤形状図/A2橋台付近地盤解析モデル
双海橋の施工手順概要
――それはどのような工法ですか
渡邉 通常であればアーチを組みながら施工していくという方法も考えられますが、施工時におけるアーチの緊張部材も大掛かりなものが必要となってきて、アンカーも巨大なものが必要になってきます。
そのため、先に補剛桁を先行させて、後追いでアーチを架設していく上下分離の架設方法を採用しました。
補剛桁は、桁橋の場合と同様に張出し架設を行い、補剛桁に吊り下げた作業足場を使ってアーチを架設していくといった要領です。
双海橋補剛桁アーチリブの施工順序
アーチリブ作業床を併設した移動作業車(ワーゲン)による張出架設
補剛桁を先行して張出し、トラス構造を構築してまた張出す
――補剛桁を吊り材の吊り点とするということですか
渡邉 上部工の補剛桁の架設に使っている移動作業車(ワーゲン)の下側に、アーチリブ施工用の作業床を併設したもので張出架設を計画しています。補剛桁張出し後のアーチリブや鉛直材施工時の足場として機能し、これにより補剛桁・アーチリブ・鉛直材のトラス構造を構築することができます。
基本的に構造が逆ランガー系の構造にしていますので、メインの負曲げは補剛桁で、アーチ部材は軸力だけが入るようにしています。つまり、補剛桁の張出しについてはある一定の延長は桁だけで持たすことができるように補剛桁を設計しています。
施工サイクルとして、補剛桁を先行して張出し、1つ後ろのブロックに配置したワーゲンおよびアーチリブ作業床によりアーチリブを施工します。アーチリブは架設斜材を使用して構築していき、鉛直材と接合します。こうして補剛桁とアーチリブ、鉛直材、架設斜材でトラス構造を形成することで、これが一つの構造体になり、次の張出しの起点ができます。これを繰り返して施工していくわけです。
補剛桁の架設に使っているワーゲン自体を支持材にする
――鉛直材は鉄骨を使用していますね
渡邉 トラス張出し工法では、鉛直材の施工が工期の長短を左右します。そのため一次的に鉄骨でトラスを形成して施工を進め、後で巻き立ててSRC構造にします。鉛直材は1柱(両側で2柱)当たり3本の鉄骨で構成しています。鉛直材に用いる鉄骨の上下端部の固定は補剛桁およびアーチリブとPC鋼棒で緊結する構造としました。
また、架設斜材はトラス構造において重要な役割を担うため総ねじPC鋼棒(φ32mm、φ36mm)を用いてアーチリブ側はコンクリート内部に定着させ、鉛直材側は鉄骨に定着させる構造としました。
――斜ベントを毎回作っているような感じで施工していくわけですね。バックステイを使わないこうしたやり方はNEXCO西日本でも例が少ないと思いますが
渡邉 当社としても初の試みだと思います。そもそも最近は、バランスドアーチを使って施工することがあまりありません。過去、四国では、池田へそっ湖大橋で採用された事例があります。
――スプリンギング(アーチ基部)はどのように施工するのですか
渡邉 トラス張出し架設が始まる前に、支保工で1m程度施工します。
A2 橋台と上部工を剛結構造にして負反力に対応
FEM解析の結果を用いてφ8m、深さ19mの深礎を構築
――P2~P3~A2間の変則的なアーチ構造についても設計思想や施工方法を教えてください
渡邉 P3橋脚はA2側が桁橋で、P2側がアーチという変則的な構造となっています。このような構造を施工するにあたっては、A2側にバックステイアンカーを設置することが一般的です。しかし、A2橋台背面の地盤は、亀裂の多い基盤岩であり、張出し架設時における安定したバックステイアンカーの固定支持定着が得られないことや、主桁の架設用PCケーブルが多く、配置が困難な課題を有しました。また、支承構造とした場合、完成系においてA2橋台部に負反力(上揚力)がかかり、P3側に前倒れが起きるためその対策を必要としました。そのため、A2橋台と上部工を剛結構造にすることにしました。
バックステイアンカーを不要にした構造を採用
――深礎杭の径や深さが結構大きいですね
渡邉 A2橋台深礎の側面は1期線施工時に斜面を大きく掘削しており、水平土被りが薄くなっていました。一般的な深礎の基礎は、十分な土被りや岩盤のつながりがあることが前提ですが、それが途中で切れているのは想定されておらず、適切な規模の深礎を構築するため、FEM解析を行いました。その結果、φ8m、深さ19mと基礎を太く長くすることで、作用する負反力に対して耐えうる構造としました。
――A2基礎の岩質はどうでしたか
渡邉 Cl級の良好な岩盤が出ており、支持層としては問題ありませんでした。
――NEXCOではこうした急峻地に架ける橋の下部工は竹割式土留め工を採用することが多いのですが、ここではどうですか
渡邉 P1、P3で採用しています。P2では基礎掘削のための人工地盤(FCB盛土)を施工していきます。基礎は全て大口径深礎を採用します。
――現在の進捗状況は
渡邉 A1が土留め工の構築を進め、P1は深礎の構築中、P2、P3、A2は橋脚および橋台の施工を行っています。
P3の施工状況/P1の施工状況
A2の施工状況/A1の施工状況
P3橋脚の施工状況/A2橋台の施工状況