UFC床版、鋼管集成橋脚、新たな継手セグメントを適用検討
2022年新春インタビュー③ 阪神高速道路 淀川左岸線、大阪湾岸道路西伸部がいよいよ本格化
阪神高速道路株式会社
執行役員建設事業本部長
宮口 智樹 氏
阪神高速道路は、淀川左岸線延伸部のトンネル区間7.6km、供用中の淀川左岸線を結ぶ区間(淀川左岸線(2期))4.4km、大阪湾岸道路西伸部14.5kmの建設を進めている。いずれも、現在の日本にとっては1、2を争うビッグプロジェクトだ。トンネルは大深度地下で2本のチューブの離隔が最小2mしかないという難工事で、さらには上町断層への対策も取らねばならない。大阪湾岸道路西伸部は2本の斜張橋を予定しており、陸上部では鋼管集成橋脚、UFC床版の採用も期待される。そうした内容について執行役員建設事業本部長の宮口智樹氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
淀川左岸線延伸部は7.6km、同(2期)4.4kmを担当
大阪・関西万博に関連するインフラ整備
――阪神高速道路が一部建設を担当している淀川左岸線と大阪湾岸道路西伸部は日本でも指折りのトンネルあるいは橋梁事業ということで、非常に関西は元気だと感じています。まず、淀川左岸線から内容を教えてください
宮口 淀川左岸線延伸部については、トンネル(7.6km)に加えてNEXCO西日本が1.1kmを担当していますので合計8.7kmになりますが、当社事業分は7.6kmとなります。それに加えて、供用中の淀川左岸線を結ぶ区間(淀川左岸線(2期))が4.4kmとなります。
路線別に説明していくと、まず淀川左岸線(2期)は5号湾岸線と淀川左岸線延伸部を接続し、大阪都市再生環状道路(延長約60km)の一部として、ネットワークを形成する路線です。整備効果としては、都心に流入する交通を周辺に分散させることにより、都心部の渋滞緩和、利便性の向上、事故および災害時などの迂回路機能の確保、臨海部と内陸部の物流ニーズなどに対応し、関西経済の活性化の支援につながる効果が期待されています。「2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)へのアクセスルートとしての利用を目指す」という大阪市の方針のもと、阪神高速道路としても万博開催に向けて積極的に協力して事業を推進しています。国土交通省が8月に「2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)に関連するインフラ整備計画」を発表され、その5つの柱のうちの「■会場へのアクセス向上」のメニューの一つとして、淀川左岸線(2期)整備が記載されています。
起点は大阪市此花区高見(3号神戸線海老江JCT)、終点は大阪市北区豊崎(国道423号(新御堂筋)接続部)となります。構造別では、トンネルが3.9kmと大部分を占め、高架橋0.3Km、土工(掘割)0.2kmとなります。
淀川左岸線(2期)概要及び概要図
2006年9月に公共事業(大阪市)と有料道路事業との合併施行方式を導入しました。道路本体構造物施行は、大阪市の街路事業が大部分を占めており、阪神高速道路は、主に舗装と設備の一部を担当しています。ただ、道路本体構造物については一部を大阪市から受託し、阪神高速道路が工事を進めています。海老江地区および豊崎地区の工事(開削トンネル・橋梁・換気所)で、本体工事着手に向けた開削トンネル土留工や橋梁基礎工事などを実施中です。
豊崎地区の工事進捗状況
――大阪市ではなくて、最終的に阪神高速道路がトンネルの本体工などもすべて受託して行うのですか
宮口 大阪市が大部分を行いますが、3号神戸線との接続部や新御堂筋との接続入路部などを受託しています。
淀川左岸線(2期)の標準幅員は8.5m(車線幅員3.25m×2車線)で、1層2径間開削トンネルです。
――トンネルの舗装も阪神高速道路が担当ですか
宮口 本格供用に向けた舗装については、当社で施工予定です。
淀川左岸線延伸部 延長は7.6kmは全てトンネル構造
地下河川のシールドトンネルも含め3本併設区間が出てくる
――淀川左岸線延伸部の路線概要、期待される整備効果は
宮口 淀川左岸線延伸部としては延長8.7kmですが、東側1.1kmはNEXCO西日本施行区間で、阪神高速道路としての起終点は大阪市鶴見区緑地公園から大阪市北区豊崎(淀川左岸線(2期)接続部)となります。延長は7.6kmで、すべてトンネル構造です。
淀川左岸線延伸部概要および概要図
2017年4月に国との合併施行方式により事業化しました。2019年1月に淀川左岸線延伸部技術検討委員会を設置して、審議をいただいています。2020年2月には中間とりまとめをいただき、大深度地下の特定等を公表いたしました。豊崎側は、淀川堤防との一体構造(2期も同様)となり、淀川左岸堤防区間に関する技術検討委員会を2020年9月に設置して、堤防との一体構造物の安全性等について学識者から意見をいただいております。いずれもトンネル構造、施工方法等について検討中です。現在、本体工事着手に向けて、2020年3月契約済みの地中障害物撤去工事を実施中です。
主なトンネル設計検討内容は、大深度地下区間でのシールドトンネル設計手法、シールドトンネルの併設影響、堤防と道路構造物を一体とした場合の安全性の照査方法などです。
淀川左岸線延伸部は、2期と同じ幅員構成で、トンネルの外径が約13mで計画しています。
淀川左岸線(2期)および延伸部のトンネル構造
――シールドトンネルの併設影響とは
宮口 東行きと西行きで別のシールドトンネルになりますし、大阪府の地下河川のシールドトンネルも横にあるので、3本併設区間が出てきます。
――大和川線のように横に併設する形ですか
宮口 大部分が横に併設する区間ですが、一部縦に併設する区間もあります。
――東行き西行きの離隔は
宮口 近いところ、広いところありますが、約2mです。
――地下河川はどこにありますか
宮口 西行きの南側にあります。
――2mの離隔は薄いと考えていいのでしょうか
宮口 かなり近いといえます。
――大和川線と比較すると
宮口 1m~2m程度で、最小離隔としては1mを切っている箇所もあります。
――大和川線よりも若干余裕があるということですね
宮口 そうはいっても2mで、大深度になりますので掘進時は細心の注意が必要です。
――断層がある箇所はシールドトンネルのセグメントを工夫しなければならないという話があったと思いますが、延伸部での工夫は
宮口 上町断層が通っていますので、同じような工夫が必要になります。
――断層部は鋼製のセグメントを使ったりするのですか
宮口 現在、検討中です。
――断層にあったセグメントは考えなければならないのではないですか
宮口 設計に反映していきます。
――断層は上町断層だけですか
宮口 そうです。
――シールドの離隔が2mしかない中での掘削の仕方と、東京外環で地表面陥没が起きたことによる上の地盤に対する配慮は
宮口 東京外環の地表面陥没等事象の調査結果を参考に、今後の設計を行い、新たな課題が生じた際は事業者間で調整を行った上、必要に応じて有識者による委員会において議論を進めていきます。
海老江工区開削トンネル工事 2022年度から躯体構築
海老江工区鋼桁及び鋼製橋脚工事 鋼製橋脚部は鋼管集成橋脚の採用も
――淀川左岸線(2期)と淀川左岸線延伸部の進捗状況は
宮口 弊社受託工事の最初の発注が「海老江工区開削トンネル工事」(鹿島建設)となります。橋脚工、地盤改良工、掘削・支保工を進めており、2022年度から躯体構築に入る予定です。進捗率(執行ベース、以下同)は約50%となります。また、「海老江換気所新築その他工事」(青木あすなろ建設)は土留工、基礎工を進めていて、2022年度から換気所工事に入っていきます。進捗率は約40%です。「海老江工区鋼桁及び鋼製橋脚工事」(MMB・横河・宮地JV)は鋼製橋脚の製作・架設と鋼桁製作を進めており、2022年度から鋼桁架設に入っていきます。海老江JCTの橋梁工事となります。
淀川左岸線延伸部、同(2期)の進捗状況
――橋脚は鋼製ですか
宮口 RCと鋼製が混在しています。
――海老江というと日本で初めて鋼管集成橋脚を採用したところですが、本工事では
宮口 本工事でも採用を考えています。
海老江工区開削トンネル工事の進捗状況
海老江換気所新築その他工事の現場施工状況写真
――その他、淀川左岸線(2期)および同延伸部で主な工事は
宮口 「国道2号交差部工区開削トンネル工事」(鴻池組)も受託しており、10月中旬から着手し、2021年度は支障物撤去工、土留工を行い、2022年度は基礎工まで行う予定です。
淀川左岸線延伸部に関して、「淀川左岸線工業用水導水施設等撤去工事」(奥村組)では支障物撤去を鋭意進めています。「豊崎換気所新築及び開削トンネル・下部工事」(清水・東亜・大豊JV)は建築と土木を一体にした工事で、支障物撤去、土留工、基礎工、共同溝・ダクト工、橋脚工といった地下の函体工事や橋脚基礎の工事を進めていて、2022年度も引き続き行っていきます。
国道2号交差部工区開削トンネル工事現場施工状況
――豊崎換気所新築及び開削トンネル・下部工事で、地盤や支障物で課題になることは
宮口 元々ゴルフ練習場の跡地であり、かなり既存基礎等の地中障害物が残っています。その撤去に少し苦労しています。