張出し架設と逆方式でワーゲンを用いて撤去・切断
鋼桁架設は 端部からは送り出し、中央部はドーリー
――桁撤去も大変だと思いますが
渡辺 既設PC桁を覆うようにワーゲンを設置して、空中施工でワーゲンの中で切断・撤去する工法を検討しています。
――張出し架設の逆パターンということですね。では垂れ下がりを防止している外ケーブルの撤去はどのように行いますか
渡辺 外ケーブルは松原線の通行止め後、桁下を夜間通行規制した上で、撤去します。
――手順としては
渡辺 サドル及び外ケーブルを撤去後、両側に仮設桁を架けて、ワーゲンをぶら下げて、その中で既設PC桁をワイヤーソーで切断・撤去していきます。センターから4つのワーゲンが縮んでいく感じです。切断・撤去は柱頭部を含めて2年ぐらいかかるイメージです。ワーゲンを取って、仮設桁を取り払った後、柱頭部を壊します。
架設は1年程度かかるとみています。
――架設は基本的にドーリーとジャッキによる架設かと思いますが、両脇の桁は高速道路上から架設するということはありますか
渡辺 両端部は送り出し架設を一部採用して施工することも考えています。支点部は桁下道路を夜間規制してクレーンで架設し、落とし込み部はドーリーとジャッキで架設することになろうかと思います。
――ここは鋼製高欄でもいいのですか?
渡辺 特に制限はありません。
――であれば、岡山市の2号立体や東京都の新小岩陸橋(たつみ橋交差点)で用いたすいすいMOPなどが使えそうですね。桁の内側に高欄を畳む形で配置しておき、架設後に開いて設置する方法で、設置後に外側からクレーンで高欄を設置する手法に比べ、施工を簡略化し工期を短縮できます
渡辺 将来の耐久性を含めて考慮しなくてはなりませんが、検討できるとは思います。
――工期は
渡辺 2025年に開催される大阪・関西万博までに完成供用させる計画です。ですので現場工事着手から完成までは正味2年8か月ほどしかありません。
――設計・施工に従事する会社は
渡辺 大成建設・富士ピー・エス・MMBの共同企業体です。
京橋 基礎から全て橋脚を更新
連続鋼床版箱桁を採用予定
――次に神戸線京橋付近の大規模更新について
渡辺 既設橋は1966年に供用されました。設計示方書は鉄筋コンクリート道路橋示方書(昭和39年)となっています。支間中央部にヒンジを有するPC5径間ディビダーグ橋で、設計当初に想定した以上の沈下が進行したことから、1988年、箱桁内面に直線配置の外ケーブル補強を行いました。沈下進行のスピードは抑制されましたが、完全な抑止に至っていない(現状で沈下量は12cmに達する)ため、長期的な耐久性を維持することは難しいと考え、ディビダーグを取り替える方針で神戸市と協議を行っています。現場は船溜まりになっている個所ですので、海上保安庁の船や民間船の繋留がかなり多い箇所でもあります。そのあたり(船舶の移転)は港湾当局との協議も行わなくてはいけません。
京橋付近高架橋と損傷状況
――架替える上部工の形式は
渡辺 連続鋼床版箱桁形式を採用する予定です。
――ここは、橋脚は生かせるのですか
渡辺 ここは既設基礎がケーソンとなっていて、その頂版部分が基礎耐力的に非常にきつい状態となっています。そのため、上部工だけでなく、基礎から更新することを検討しています。ケーソンの周りを鋼管矢板で巻いて補強する案も考えたのですが、結局その補強ではケーソンに何も期待できなくなり、路下利用にも支障をきたすような3m厚もの頂版になってしまうという概略設計になりました。
――鋼床版箱桁の防食手法はどうしますか。海に近接している状況ですが
渡辺 まだ考えが及んでいない状況です。ただ、高架下の利用状況によりますが、そんなにメンテナンスが難しくなるとは考えられません。
――工期は
渡辺 協議相手がいる現場ですので、難しいですが、発注は来年度ぐらいに行いパートナーを選定し、検討業務を先行して行っていきたいと考えています。
――現在の橋梁は5径間のPC桁ですが、鋼床版箱桁形式にするとスパンを飛ばせますから径間数を減らせますね
渡辺 径間数は減らせると思います。橋脚配置もフリーハンドで行えると考えています。
――う回路の有無は
渡辺 できればう回路を作って本線を切り替え、既設橋を撤去し、架替えを行いたいと考えています。
池田線大豊橋 架替えなしも選択肢
――池田線大豊橋付近は
渡辺 対象延長は300m程度です。供用は1967年で設計示方書は鋼道路橋設計示方書(昭和39年)を採用しています。本橋は、先の大阪・関西万博開幕に供用を間に合わせるため、一旦府道として整備した橋梁に、コンクリートで高さ調節し、阪神高速道路として再整備した橋梁です。その嵩上げ部分に舗装の損傷や床版および桁部の劣化が出ている状況です。
大豊橋付近の現況と損傷状況
現在は詳細な調査に入っている状況です。ただ、神崎川渡河部の鋼ゲルバー橋は嵩上げがほとんどなく、大きな損傷もありません。一方、大豊橋の南側にPC桁区間があるのですが、そこで大きな嵩上げがあって、その影響が鋼桁の南の部分に少し出ています。PC桁の方も遊離石灰などは出ていますが、あまり激しい損傷は見られていません。架替えまでいかずに、長期耐久性を向上させる施策がないかということも検討しています。
――鋼橋ゲルバー部の予防保全的な措置は考えますか
渡辺 ゲルバー部の損傷はさほど激しくありません。連結となると、既設橋脚への地震時の力がよりダイレクトに伝わる構造となりますから、なかなか難しい状況です。府道と一体となっている構造ですので、大阪府さんとも調整しながら方針を決めていくことになろうかと思います。
――床版や桁のひび割れについては
渡辺 ひび割れといってもそれほど重篤ではなく、修繕方法を検討すれば対応できるのではないかと思っています。
法円坂 桁高約70cmで長期的な耐久性が懸念材料
架替えは構造を変更し、盛り土形式に
――次に東大阪線法円坂付近の高架橋についてですが、過年度(2012年)に三菱重工鉄構エンジニアリング(現在のエム・エム ブリッジ)が鋼桁の弱点となる短支間のジョイント部を切断して連結する箇所を増やしたリニューアル工事を行っていますよね。それほど大きな手当てが必要ですか
渡辺 同高架部は延長約200mで1978年に供用されました。設計示方書は道路橋示方書(昭和47年)です。おっしゃる通り、過年度に連続化はできています。いわゆる死活荷重比は変わらないかもしれませんが、軸方向と横断方向のバタつきは解消されています。今までの疲労も軸方向に対して横断方向が長いという形状によるいびつな変形が疲労を招いていた可能性が高く、その意味では現状で大きくリスクを低減できています。ただ桁高が70cmと低いため、耐久性の面で大丈夫か? という懸念もあります。
法円坂付近高架橋の過年度の対策状況
法円坂付近高架橋の現況と損傷状況
――架替えは必要ですか
渡辺 現在の応力状態をきっちりと把握すべく、今年から調査に入っています。主構造の一次応力だけでなく、二次応力(ガセット部など)も取って、二次部材との接点なども含めて将来的に損傷が出ないのか見極めて考えようと思っています。
また、あれだけクリアランスが低いので高架構造から軽量盛土を用いた土工構造への改良を考えるというのが架替え案です。
――下には難波宮遺跡がありますが、それへの影響はありませんか
渡辺 杭さえ打たなければ大丈夫です。メンテナンスを考えた時に、架替えの方がメリットがあるのかどうかということも、選択の際の検討事項となります。
大規模更新の技術開発は受注会社決定後に模索
インハウスエンジニアリング教育は若い時からキャリアプランを設定
――技術開発について、どのようなことを要求したいですか
渡辺 大規模更新に関しては、実際に受注した相手と現地条件や制約条件を踏まえて、何ができるかを検討した方が良いと考えています。そのため現時点では、更新に関しては純粋技術を募集するということは考えていません。
――インハウスエンジニアリングの技術力向上という点では
渡辺 当社はゼネラリストもしくはスペシャリストを育てるために、若い段階からキャリアプランを設定して、実際の職に就かなくてもOJTや見学を踏まえて、育成していきたいと考えています。
――グループ会社との人材交流は
渡辺 結構行っています。土木分野は阪神高速技術の各出先事務所に若い社員が1人ずつ、(技術)本社の方に2人ほど出向しています。阪神高速技研にも、管理側に複数名出向しています。