100m近いハイピア、2層RCアーチなど様々な形式
NEXCO西日本新名神大津 新設が8橋、拡幅が27橋 全てで難易度高し
大戸川橋は柱頭部を施工中
天神川橋は2層アーチを採用
――上部工に着手している橋梁は
大城 現場着手しているのは大戸川橋です。3~4ピアの柱頭部にとりかかっているところです。
――上部工について工夫していることは
大城 新設区間では特別新しいことや工夫は行っていません。特殊な橋梁では天神川橋(新設)があります。橋長552mのRC7径間連続2層アーチ橋です。下が開腹アーチで上に充腹アーチが乗る構造です。
天神川橋一般図①
――2層アーチ構造にした理由は
大城 周りには琵琶湖疎水から始まって、オランダ人土木技師のヨハネス・デ・レーケ氏が指導された土木遺産の堰堤がたくさんあります。石積みアーチが特徴的な構造です。その遺跡の玄関口となるのが天神川橋となります。そこで、アーチ橋を採用しました。2層としたのは、床版の損傷を考えてPC床版にすれば耐久性は確保できるのですが、もっと耐久性の高い構造を考えた時に、床版が不要な充腹アーチとしました。土工管理ができる橋梁ということです。また、支承がないため、支承取替等の維持管理が不要であり、伸縮装置がないため、伸縮装置の劣化に伴う漏水による桁端の劣化を回避できるなど維持管理性に優れています。 一方、充腹アーチの適用最大支間は35m前後であり、本橋のような幅の広い交差物件がある場合や、谷地形で地域分断が懸念される場合での適用事例はほとんどありません。また、中詰土の地震時慣性力が大きいため、本橋のように大規模かつ高橋脚を有する山岳地橋梁への適用実績もほとんどありませんが、仮想地盤として開腹アーチを構築し,上層に小さい充腹アーチを造る構造を採用することにより制約をクリアしました。
――開腹アーチのスパン割は
大城 側径間72m、中央径間で84mとなっています。
――どのように施工するのですか
大城 支保工施工を予定しています。
――普通の単径間アーチ橋であれば、斜吊りをして、長いところではメラン工法で巻き立てる形で施工しますが、支保工施工ということは下にアーチ形状の階段状の支保工をつくるということですか
大城 そうです。
――斜吊りはしないということですか
大城 はい。架橋地が急峻な谷や大きな河川であれば、メラン工法などで架設すると思いますが、天神川橋はそのような現場環境ではないので、支保工により、RCでつくったほうが経済的と判断しました。
――施工手順は、開腹アーチをつくって剛結させて、それを使って充腹アーチをつくるのですか
大城 そうです。
天神川橋一般図②
――オールステージングで施工するということは、それほど難しくないのかもしれませんが、工夫点や気を付けるべきことは
大城 開腹アーチのステージングですが、打設した部材自重による支保工の変形を抑制するために支保工に工夫をしなければなりません。
――具体的には
大城 ジャッキで支保工の高さ調整をすることや,タイロッドによる変形拘束を考えています。
――アーチなので少しずつ変形していきますものね
大城 そうです。
――充腹アーチ施工時の気を付ける点は
大城 排水です。床版がありませんので、路面水はすべてアーチの中に入るものとして対策を考えます。うまく導水して、速やかに外に出さないとアーチ部材が腐食しますし,中詰め土の流出にもつながります。
――導水はどのようにするのですか
大城 防水シートや暗渠のような感じです。パイプ(有孔管)をたくさん埋めて、排水溝に導水します。
――橋長552mですが、端部で排水する計画ですか
大城 排水計算中ですが、途中で排水しないと耐えられないかもしれません。
――景観の問題もあると思いますが、配水管はどのように収納するのですか
大城 ふたつあると思います。ひとつは路面排水で、それは橋面をU字溝などで処理します。もうひとつは,充腹アーチの中に入った水は、上層アーチの一番深いところのすべての箇所から水を抜かなければなりません。それはたいした水量ではないので、中梁上に導水して、下層アーチの大きな柱で下に落とします。
――配水管ではなく自然流水ということですか
大城 縦は配水管ですが、排水溝でうまく流せないかを考えています。
防錆鉄筋や「錆びない」補強材を使用したい
――RCで被り厚は
大城 設計要領に従っています。
――では、被り厚を厚くすることやエポ鉄筋の使用は考えていないのですか
大城 防錆鉄筋をどのように使うかは考えています。錆びない補強材を使用したいとも考えています。
――アーチの鉄筋の被り直下の上端だけ、アラミド筋ということですか
大城 非鉄が使えたら面白いですよね。面白いと言っているだけで、違うことをやるかもしれません。今はまだ、見えていません。
――波形鋼板ウェブでは工夫はされていますか
大城 とくに工夫はしていません。
――例えば、NEXCOでは波形鋼板ウェブの鋼板とコンクリートの境部の防食を工夫しているケースがありますが
大城 それは標準的に行っており、金属溶射+ふっ素樹脂塗装を使います。
上中野橋上り線で片側剛結を採用
延長床版もしくはセットバックジョイントの採用を標準
――鋼桁での工夫は
大城 形式で工夫しているのは、片側を剛結している上中野橋(上り線)です。
――片側剛結とはどのような構造ですか
大城 上中野橋(下り線)は橋長67mのポータルラーメン橋です。基本的に、単純桁よりもポータルラーメンで剛結したほうが耐震上有利になります。また、桁端の漏水による腐食も防げます。そのため、このような形式を積極的に採用しています。しかし、上り線は橋長69mで若干長くて、うまく両方を剛結できませんでした。そのため、片側はゴム沓で支持して構造的に成り立つようにしています。
上中野橋上り線側面図
――片側もそんなに動かない感じですか
大城 必ずどちらかは剛結して、耐震性と漏水の防止には努めています。PC橋も鋼橋もすべてにおいて桁端部の空間は確保しようとしていて、あとは延長床版もしくはセットバックジョイントの採用を標準にしています。桁端の腐食防止のためです。