4車線で設計、下部工施工しているところが多くを占める
NEXCO西日本新名神京都 6車線化対応、国道24号との並行区間の工事が鍵
鋼管ソイルセメント杭を多用
狭小なヤードへの影響や杭本数の削減などを考慮
――富野高架橋から城陽高架橋は、基礎形式について鋼管ソイルセメント杭がほとんどとなっていますね。地盤はあまり良くないようですね
西谷 木津川(一級河川、淀川水系の支流)周辺の平野部であり、基礎地盤まではだいたい15~25m程度となっています。施工スピード(単位当たり杭本数の削減)と、後述しますが国道24号拡幅があることによるヤード狭小を避けるため、そしてコストの面から鋼管ソイルセメント杭を採用しました。
――富野高架橋は基礎から6車線で建設していきますか
西谷 まだ現場に入っていませんので、6車線で建設していく予定です。
富野高架橋についてはいまだ現場には入っていない状態だ
城陽高架橋 下部工118基中68基が完了
上部工も鋼桁部は63径間中15径間を完了
――城陽高架橋の形式と進捗状況は
西谷 下部工はだいぶ進捗し、橋台・橋脚118基中68基(58%)が完了しています。一部は上部工にも着手しています。上部工は、近鉄の西側を主に架設を進めており、鋼橋63径間のうち15径間(約24%)の橋桁架設が完了、PC橋64径間のうち1径間の床版架設までが終わっています。
上空から見た城陽高架橋の進捗状況(NEXCO西日本提供)
――下部工は4車線で建設しているのですか
西谷 基本的に4車線で建設しています。城陽高架橋はすぐ横で国土交通省による国道24号の拡幅工事が並行して行われており、工事は非常に狭いエリアで錯綜しています。
建設中の国道24号BP越しにクレーンで施工(井手迫瑞樹撮影)
――昨夏に4車線分の橋梁を架けた近鉄京都線直上も6車線化するわけですが、両側には国道24号の現道と建設中の同拡幅橋があります。これはかなりの区間と隣接するわけですが、どのように6車線化を進めて行くのですか
西谷 正直悩んでいます。この近鉄京都線付近は、少なくとも国道24号の拡幅部ができるまでは6車線化の工事はできません。現在、施工計画を検討しているところです。
―― 国道24号の拡幅部と並行している区間はどのくらいありますか
西谷 並行している区間は約2kmあり、城陽高架橋のP5~P46まで至ります。P5から並行して、拡幅区間はP46(門型鋼製橋脚)の股の間を潜り抜けて分岐します。
国道24号との並走区間(井手迫瑞樹撮影)
輻輳している城陽JCT・IC付近1(井手迫瑞樹撮影)
輻輳している城陽JCT・IC付近2(写真右がP46橋脚)(井手迫瑞樹撮影)
輻輳している城陽JCT・IC付近3(井手迫瑞樹撮影)
――NEXCO西日本だけでは工程管理は如何ともしがたいですね
西谷 国土交通省の工事とお互い施工ヤードを譲り合いながら施工していかなればいけません。
――城陽高架橋は鋼桁の区間もあればPC区間もありますね
西谷 鉄道や城陽JCTを跨ぐ部分周辺が鋼桁で、それ以外はPCのプレキャスト セグメント箱桁で施工しています(右写真、井手迫瑞樹撮影)。城陽高架橋は総延長約2,700mの高架橋です。A1~P6が橋長390.5mの鋼6径間連続細幅箱桁橋です。一部はJR奈良線と交差します。続いてP30~P35が橋長228.0mの5径間連続鋼・PC混合桁+PCプレキャストセグメント箱桁橋で、近鉄京都線を跨ぐ(P31-P32間)橋梁となっています。P39~P45(橋長374.5m、鋼6径間連続細幅箱桁)とP45~木津川のP1(城陽高架橋のP56相当)(橋長599.5m、鋼11径間連続鈑桁橋)については、京都府道や供用区間の京奈和道本線や城陽JCTのA,B,G,Hランプ橋と交差しますので、そうした箇所については鋼桁を採用しています。それ以外はPCプレキャストセグメント箱桁橋を用いています。
JR奈良線を跨ぐ部分(井手迫瑞樹撮影)
橋梁一覧(城陽市域)
宇治田原トンネル 地盤はあまり良くなくAGFを一部併用
――唯一のトンネルである宇治田原トンネルの構造的特徴と進捗状況は
西谷 既に開通している新東名や新名神の3車線断面と比べると、少し路肩は狭くなっています(上下線とも3車線断面で建設しており全幅は12.75m、路肩は両側1m)。現在は両方向から掘削を進めており東側は280m程度の掘進状況です。西側はまだ掘り始めたばかりで18m程度です。(令和3年2月時点)
――掘削方法はNATMですか
西谷 NATMです。
――地山の状況は
西谷 丹波群層の頁岩を主体とし、砂岩や頁岩と砂岩との互層、一部チャートを挟んだ、全体的に亀裂の発達した不連続な岩層が想定され、NEXCOの地山等級では「D」等級主体の山と言えます。特に東側が思ったより悪く、坑口からAGFを併用した補助工法を使いながら掘進しています。施工においては今後ロックボルト自動打設機を導入し、安全性を高めながら工事を進めていく予定です。
ロックボルト自動打設機(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)
宇治田原トンネル東坑口からの施工状況(井手迫瑞樹撮影)
近鉄京都線直上部 1,250t吊クレーンで夜間一括架設
常設足場に『Cusa』
――特徴ある現場について
西谷 昨年6月および7月の2夜間において、交差する近鉄京都線上空の夜間一括架設を行いました。鉄道上ですので、き電停止から始発までの短い時間内での一括架設をしなくてはいけませんでした。ここでは将来の点検効率化のため、アルミ合金製常設足場(製品は『Cusa』)を下側に付けた上で一括架設しました。そのため架設重量が少し増え、最終的な架設重量は橋桁(長さ22m)と常設足場をあわせて156.5tとなりました。架設は、1,250t吊という非常に大きなクローラークレーンを用いました。
――クローラークレーンのブーム長さは96m、作業半径は52mですか、かなりの長さですね
西谷 長いです。クレーンのおける場所も限界があって、鉄道の近接エリアまで安全上近づけることができず、やむをえませんでした。
――ここは鋼管ソイルセメント杭を使うぐらいですから地盤もあまりよくありませんよね
西谷 はい。大型クレーン設置個所の地耐力を確保するため、スラリー方式機械攪拌柱状改良工法を用いて1,300㎡の範囲約2~3.7mの深さについて地盤改良を行いました。また、鉄道との近接施工となることから、工事着手前の軌道への影響検討に加えて、工事期間中は、地盤変動の常時計測を実施しました。
鉄道運航の管理限界値が±7mmでしたので、工事の管理限界値を±2.6mmと設定し、それ以上の地盤変動が出ないように工事を進めました。
――P31とP32の支間長は64mあり、この近鉄京都線直上の架設前にP31とP32側の桁はかけていたわけですが、近鉄京都線直上の桁ブロックを架ける時は両端のクリアランスは相当少なかったのではないですか
西谷 架設する側の橋桁と既に固定している側の橋桁の遊間はそれぞれ両側1cmずつしかありませんでした。そのわずかな隙間に限られた時間の中で橋桁を落とし込み添接するわけで、難易度の高い工事であったといえます。
近鉄京都線上空での架設概要図
同架設概要状況
架設後の近鉄京都線を跨ぐ高架部1
架設後の近鉄京都線を跨ぐ高架部2 右写真はCusa(井手迫瑞樹撮影)
切盛土区間は2021年度から順次発注
盛土は切土やトンネルからの発生土を活用
――切土盛土区間は
西谷 2021年度に順次発注していきます。各橋梁の基礎工や切土、宇治田原トンネル掘進で発生した土もうまく使っていきます。土を新たに買うということは必要ありません。
城陽市域の丘陵部では、古くから山砂利採取の事業が行われており、公共残土の受け入れ事業も実施していた地域で、そうした地域に広がる埋土層は、地山に比べて軟弱な地盤になるため必要に応じて地盤改良しながら工事を進めて行くことになります。
現場では交差点を交わすために仮橋も効果的に活用している(上記箇所では「PABRIS」を使用)
(井手迫瑞樹撮影)
鋼橋防食はAl-Mg溶射を採用
床版防水はグレードⅡ基本、鋼床版部は今後の検討課題
――鋼橋の防食について
西谷 JCT部との交差箇所における鋼桁部にはAl-Mg合金による金属溶射を採用します。鉄道交差部は今回、常設足場で囲ってしまうので、通常の塗装としています。桁端部や支承付近のパラペット部や橋座コンクリートについて、凍結防止剤を含む漏水による破損・劣化を防ぐため、表面塗装による保護を施します。
――床版防水はグレードⅡから改質グースや高剛性舗装など新しい床版防水を施す予定はありますか
西谷 通常のグレードⅡで施工しますが、上部工の一部を鋼床版に変えることを検討している区間があります(宇治田原第一高架橋)。そうした箇所のアスファルト舗装構造については今後の検討課題です。
――最後に付言して
西谷 4車線の施工をしている最中に6車線化の許可をいただきましたので、4車線の開通を遅らせない範囲内で、できるだけ6車線構造にしておきたいと考えています。ただ、技術的にどこまで工程を見ながら対応していけるかというのには苦労しています。
国道24号寺田拡幅事業(国土交通省)をはじめ、府道山城総合運動公園城陽線(京都府)、国道307号拡幅(京都府)、都市計画道路 東部丘陵線(城陽市)、宇治田原山手線(宇治田原町)など、新名神と関連する事業も同時に動いており、こうした事業と協働しながら、今後も新名神高速道路の建設事業を進めていきます。
――ありがとうございました