高架橋工事では下部工施工が進展
NEXCO西日本 新名神大阪東 淀川渡河部は最大支間長210mのエクストラドーズド橋
環境保全のためにエクストラドーズド橋を採用
最大支間長は210m
――淀川を渡河する橋梁が事業区間としては最西端となりますが、その橋長と形式は
森脇 橋長920mのPRC7径間連続エクストラドーズド橋で、淀川橋工事として上下部工一体で施工しています。
淀川橋概要図
――エクストラドーズド橋を採用した理由は
森脇 淀川橋の架橋地である淀川右岸の河川敷には「鵜殿(うどの)ヨシ原」と呼ばれるヨシの群生地があります。そこで採取される良質なヨシは雅楽で用いられる楽器「篳篥(ひちりき)」のリード(吹き口)「廬舌(ろぜつ)」として珍重され、宮内庁の楽部の方も代々、鵜殿のヨシを廬舌に使われてきました。このような自然環境だけでなく、歴史・文化的にも極めて重要な場所の環境保全が可能な橋梁形式で、経済性を比較したうえで決定しました。
鵜殿ヨシ原位置図(NEXCO西日本「鵜殿トシ原と新名神高速道路 環境保全の取組み(Ver.9)」から)
――鵜殿ヨシ原を阻害しないように支間長を長くするということですね
森脇 そうです。最大支間長は210mで、鵜殿ヨシ原に架かる径間となります。
環境保全では有識者の方々をメンバーとした検討会を2013年に発足して、さまざまな調査を行って、次のことがわかりました。
まず、篳篥用のヨシはヨシ原全体で採取されているものではなく、新名神高速道路の計画ルートから南側に約60m以上離れていることがわかり、事業による土壌などへの直接的影響がないことがわかりました。日照の影響についても、淀川橋は東西方向に架かることになりますので、類似橋梁の事例から篳篥用ヨシの生育に影響はないと推察されました。
地下水位についても調査と解析を行っています。ヨシ原の再生のために国土交通省淀川河川事務所が導水路で淀川から水を引き込まれて、導水路から浸透した水が堤防側から河川側へと流れています。篳篥用ヨシの根はその地下水位より上にあることから、雨水が水分供給源となっていると考えられました。また、地下水の流れが阻害されない構造物の配置としています。
さらにDNA分析も行って、篳篥用ヨシは特殊なものではなく、環境的要因によるものとなりましたので、環境保全を最重要として事業を進めることになりました。
篳篥用ヨシの採取エリアと地下水位の調査結果
(NEXCO西日本「鵜殿トシ原と新名神高速道路 環境保全の取組み(Ver.9)」から)
鵜殿ヨシ原の改変を可能な限り低減
淀川右岸河川内のP11とP12橋脚は鋼管矢板井筒基礎を採用
――施工における環境保全への配慮は
森脇 鵜殿ヨシ原の改変範囲を可能な限り低減し、篳篥用ヨシ採取エリアの改変は避けた計画としています。
鵜殿ヨシ原のある淀川右岸には橋脚2基(P11とP12)を配置します。P11は鵜殿ヨシ原と淀川の間となり、鵜殿ヨシ原は避ける形となります。P12は鵜殿ヨシ原内となりますが、橋脚はその1基となりますので施工時の改変範囲はより小さくすることができます。
工事用道路についても既設の管理用道路を活用するとともに、北側から迂回する形で河川側に設置しています。
篳篥用ヨシの保全を目指した橋梁計画
(NEXCO西日本「鵜殿トシ原と新名神高速道路 環境保全の取組み(Ver.9)」から)
――P11とP12の基礎形式は
森脇 鋼管矢板井筒基礎です。平面形状を一番小さくできることから採用しました。
――杭径と本数、杭長の最長は
森脇 杭径は1200mmで、約120本。最長で約23mです。
――施工状況は
森脇 P11、P12ともに杭の打設は完了して、掘削に向けた準備を行っているところです。
――残りの橋脚位置を教えてください
森脇 P9が淀川左岸河川敷内、P10が河川内、さらに淀川右岸の堤防超えた位置にP13~P15があります。
――P9の基礎形式と施工状況は
森脇 鋼管ソイルセメント杭で、杭の打設が完了し、掘削をしています。
――P10の基礎形式と施工状況は
森脇 鋼管矢板井筒基礎で、杭の打設が完了し、掘削に向けた準備を行っているところです。
――P13~P15の基礎形式と施工状況は
森脇 P9橋脚と同様に鋼管ソイルセメント杭で、杭の打設を行っています。
淀川左岸の施工状況(手前からP9~P12)
淀川右岸の施工状況(手前からP13~P15)
――P9~P12は非出水期のみの施工だと思いますが、非出水期間は
森脇 10月16日から6月15日までとなります。
――上部工の断面形状とその採用理由は
森脇 長大のエクストラドーズド橋であり、斜材張力伝達特性に優れるため、逆台形断面のコンクリートウエブを採用しています。
――河川部の架設工法は
森脇 張出し架設及び支保工架設を予定しています。
――柱頭部と支間中央部それぞれの桁高は
森脇 柱頭部で5.5mまたは7.0m、支間中央部で5.5mです。
――淀川右岸堤防外(P13~P15間)の架設は
森脇 張出し架設及び支保工架設を予定しています。
――付言して
森脇 街中での工事となりますので、地元の皆様のご理解をいただきながら進めていくことが一番重要だと考えています。そのための工事説明会を都度開催してきましたし、今後も地元の皆様にしっかりと説明しながら事業を進めてまいりたいと考えています。
――ありがとうございました
(2021年3月18日掲載 聞き手=大柴功治)