明神山トンネルの掘進進む 双海橋などを含む橋梁はまず仮設道路から
NEXCO西日本 愛媛 現場まで入るのに仮橋1kmを要する難工区
西日本高速道路
四国支社 愛媛高速道路事務所
所長
田中 満 氏
張出し施工により進め、バックステイアンカー不要に
A2橋台を剛結構造化し、P3~A2間もバックステイアンカー不要
――架設は側径間から攻めていく形ですか
田中 1期線はピアから斜材によって張り出しを保ちながら施工しました。2期線はバランスドアーチですので、両方に張り出していきます。バランスドアーチであるP2は、同橋脚を中心に左右対称に施工を進める予定です。そうすることで、橋脚への負担が軽減でき、アーチアバット基礎を小規模化できるため、極力地山に負担をかけずに済みます。また、左右でバランスを取りながら張出架設を進めるため、バックステイアンカーも不要となります。
P3~A2はバランスドアーチではないですが、A2の下部工の杭を長めにとり、A2橋台を剛結構造にすることで、P2~P3側の張出のカウンターウェイトを取れるようにし、ここでもバックステイアンカーを不要にしています。
――NEXCOではこうした急峻地に架ける橋の下部工は竹割式土留め工を採用することが多いのですが、ここではどうですか
田中 P1、P3で採用しています。P2は仮の作業構台を作るため、フーチングの一部のようなものを地山に建てて先に作ります。基礎は全て大口径深礎を採用します。A1のみ通常の場所打ち杭を採用しています。
――P2、P3を軸とした施工になるということは、コンクリートの圧送はどのように行うのですか
田中 横に工事用仮橋を構築し、配管してポンプ車による打設ということになろうかと思います。
トラス張出架設工法を採用
高強度鉄筋や充填性の高いコンクリートが必要
――コンクリートは現場打設ですよね
田中 そうです。アーチリブや鉛直材を含めて密な配筋になるので、高強度鉄筋や充填性の高いコンクリートを使うことが求められます。十分な充填確認をしなくてはいけないため、受注者も、施工性に優れたものを使うべく詳細設計を行っています。
アーチの上で鉛直材を打ったり、補剛桁を作ったりしますので、それも張り出しをしながら施工せねばなりません。アーチ部の斜めの部分に水平な足場を設けて、安全性の高い足場で施工するという計画で考えています。
――アーチ区間は移動作業車(ワーゲン)を使うということですがどのような形状ですか
田中 普通のディビダークで使用するようなワーゲンに、アーチリブと鋼材を施工するので、その下まで抱え込むような形状を有しています。高さに応じて、ワーゲンの高さも調整する形になります。補剛桁、アーチリブ、鉛直材及び仮設斜材でトラスを形成しながら架設するトラス張出架設工法で施工していく計画です。
――防食面での工夫は
田中 壁高欄のつなぎ目の部分にエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用する予定です。
上灘川橋 送り出しとトラッククレーン+ベントを併用
烏谷橋 2期線は重防食塗装で対応
――上灘川橋は
田中 橋長339.5m、幅員9.31mの鋼単純非合成細幅箱桁+鋼5径間連続非合成2主鈑桁橋(いずれもPC床版、下図)です。双海橋と明神山トンネルの間に位置しています。
架設については送り出しと、仮橋上からのトラッククレーン+ベント架設で計画しています。下部工(全部で7基)は柱式橋脚、橋脚基礎は大口径深礎、橋台基礎は深礎杭です。橋脚高は30m前後です。下部工も仮橋を施工しないと建設できないので、これからです。現在は詳細設計中です。橋脚の施工はオールステージングによる足場を計画しています。
上灘川橋イメージ
――烏谷橋は
田中 橋長140.5m、幅員9.31mの鋼3径間連続非合成2主鈑桁橋です。ここはトラッククレーン+ベントにより施工できます。現在は橋脚部において大口径深礎、橋台部において深礎杭の施工を進めています。
烏谷橋イメージ
――防食上の工夫は
田中 烏谷橋は1期線当時において耐候性鋼材を採用していますが、2期線は重防食塗装で対応します。
――新設における新技術・新材料について、現在の適用例および、今後適用を模索しているものはありますか
田中 双海橋における高強度鉄筋や高流動コンクリート、機械継手やユニット鉄筋の採用などを検討しています。
――内子五十崎IC~大洲IC間4車線化等事業の約4.4kmの区間について構造物は
田中 現在は調査設計中です。(1期線においては、6橋519.2mを施工している。最大は堂成川橋の147m。またトンネルは山口トンネル257mの1箇所、カルバートボックスは9箇所)。
――中山スマートIC~内子五十崎IC間の4車線化等事業約9.7kmの区間についての構造物は
田中 これから調査設計を進めていくところです。(1期線においては、トンネル3箇所、橋梁12箇所)
合計349橋、54チューブのトンネルを管理
橋梁延長は54km トンネル延長も40km
――次に保全です。現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
田中 橋梁数・延長は松山道で308橋(48km)、今治小松道41橋(6km)の合計349橋(54km)です。
橋種別はRCが22km、鋼が10km、PCが22kmです。
橋長別は100m未満が203橋で、その内訳はRC35橋、鋼32橋、PC78橋、その他(溝橋(カルバート含む))58橋です。また100m以上の橋は146橋あり、RC44橋、鋼45橋、PC57橋となっています。
経過年別は10年以上20年未満が21km、20年以上30年未満が30km、30年以上が3kmです。最も古く開通した管内区間は三島川之江IC~土居IC間で1985年に供用され35年が経過しています。
トンネルは、延長が松山道で40kmあり、工種はNATMが54チューブ39.5km、開削による上下線一体型の函渠が500m(舟木トンネル250m×2)です。経過年別延長は10年以上20年未満が12.5km、20年以上30年未満が27.1km、30年以上が0.4kmとなっています。
トンネルの延長比率は100m未満が1チューブ、100m以上500m未満が25チューブ、500m以上1㎞未満が19チューブ、1km以上が11チューブとなっています。最長は大洲北只IC~西予宇和IC間にある鳥坂(とさか)トンネルで3,206mに達します。
松山道は四国山脈の山すその斜面を東西に延びていますが、新居浜IC~川内IC間、伊予IC~内子五十崎IC間はトンネルが連続して存在しています。大洲北只IC~西予宇和IC間もAAクラスのトンネルがありますので、トンネル本体あるいは設備の点検補修を進めているところです。
伸縮装置や床版の打継目からの漏水が劣化の主因
床版防水は75%が設置済み 今後五年間でさらに5%設置へ
――点検を進めてみての管内の構造物の管理状況及び劣化状況について詳しくお答えください
田中 橋種ごとの劣化状況・劣化原因を松山道から申し上げます。PC橋における主な損傷は水に関係しており、伸縮装置あるいは床版の打継目からの損傷が目立っています。
伸縮装置については、止水ゴム・シールの経年劣化による漏水の発生や後打ちコンクリートの経年劣化によるひび割れが発生するためそれらを注視して伸縮装置の取替などを行っています。
床版コンクリートについても床版上面から浸透してきた水により、ひび割れや浮き、剥離が部分的に発生しています。詳細点検の結果から、断面修復や床版防水を実施しています。
床版の損傷状況
RC橋もPC橋同様の損傷が生じており、同様の対策を施しています。
鋼橋も橋台、橋脚の伸縮装置部で生じる漏水により鋼材腐食などの劣化が生じており、該当部は伸縮装置取替などの対策を施しています。
鋼材腐食事例(烏谷橋)
――床版防水の敷設率は
田中 全体数652連のうち75%にあたる490連が施工済みです。今後5年内に35連(5%)を施工していく方針です。
床版上面補修状況
床版の研掃および防水工
端部保護塗装
――同様にトンネルは
田中 トンネルは監査路の手摺りと円形水路で劣化が生じています。手摺りは部分的に経年劣化が生じており、必要に応じて取替を進めています。円形水路は、路面排水の浸透によるひび割れや浮き、剥離が生じており、劣化程度が大きいものについて取替を進めています。
――NATMの継ぎ目部分のひび割れや漏水は
田中 過去には打継目の目地からの漏水があり、補修を進めていましたが、現在はそうした損傷による補修をすることはほとんどありません。