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床版取替工事で渋滞抑制の取り組みを実施

NEXCO中日本八王子支社 中央道の2区間で付加車線設置事業に着手

中日本高速道路株式会社
執行役員
八王子支社長

湯川 保之

公開日:2020.10.13

橋梁657橋とトンネル64チューブを管理
 中央道や長野道に診断区分Ⅲが集中

 ――管内の橋梁の内訳は
 湯川 当支社で管理している橋梁は657橋(延長112.1km)です。橋種別では、鋼橋が約4割と一番多く、RC橋が約3割、PC橋が約2割です。管理橋梁の64%を占める中央道では、地形的要因や建設年代の関係から鋼橋が約48%と半数近く、RC橋が約34%で、PC橋、PRC橋は少なくなっています。
 供用年次別(橋長比、以下同)では、31年以上が約77%と多くなっています。路線別では、中央道のほとんどの橋梁が41年以上、長野道、東富士五湖道路、中央道の一部が31~40年、安房峠道路が21~30年、中部横断道と圏央道が20年以下となります。


橋種別比率と経過年別橋種構成比率(橋長比)

路線別割合(橋長比)

 ――管理されているトンネルは
 湯川 64チューブ(延長67.2km)を管理しており、工法別(延長比、以下同)では在来矢板工法が約39%、NATM工法が約59%、その他(シールド工法、開削工法)が約2%です。旧JHでは1983年にNATM工法を標準化工法として採用しましたので、30年以下はほとんどNATM工法となっています。路線別のトンネル延長比では、圏央道が約35%を占め、次いで中央道が約31%です。


工法別割合と経過年別工法構成比率(延長比)

路線別割合(延長比)

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果は
 湯川 2019年度末時点での橋梁の健全性診断結果では、診断区分Ⅱが81%と一番多くなっており、Ⅰが5%、Ⅲが14%です。Ⅲは供用後31年以上経過する中央道や長野道などの路線に集中しています。トンネルでは、診断区分Ⅰが21%、Ⅱが59%、Ⅲが17%です。


橋梁の健全性診断結果

トンネルの健全性診断結果

 橋梁の部位別では上部工に全体の半数を占める変状が発生していて、次いで高欄・地覆、伸縮装置、下部工の順に変状が多くなっています。大型車の繰返し荷重による疲労の進展、凍結防止剤に含まれる塩水の浸透による桁腐食が顕在化しているほか、伸縮装置から凍結防止剤を含んだ水が桁端部や下部工に流れて、支承の腐食やコンクリート部材の損傷が見られています。下部工や高欄・地覆は鉄筋被りが薄い箇所での凍結防止剤散布による塩害損傷が多い状況です。
 トンネルの変状については、おもに覆工コンクリートの目地部のひび割れや漏水が確認されています。


橋梁(左側)とトンネル(右側)の変状部位別割合

中央道 花岡トンネルの変状

塩害は松本保全・サービスセンター管内でおもに発生
 重交通区間では溶接部に疲労き裂が発生

 ――管内で疲労および塩害で劣化・損傷が発生している区間は
 湯川 疲労劣化は、中央道(高井戸IC~伊北IC)と長野道(岡谷JCT~塩尻北)で発生しています。都市部では膨大な交通量を50年間活荷重として受けていることや、中央道は最低床版厚の頃に建設された橋梁が多いので疲労の影響を受けやすくなっています。
 塩害については、供用からの凍結防止剤累積散布量が1,000t/km以上となっている松本保全・サービスセンター管内の中央道(小淵沢IC~伊北IC)と長野道(岡谷JCT~安曇野IC)でおもに発生しています。ただ、そのほかの区間でも松本管内と比べて少ないですが凍結防止剤を散布していますので、塩害劣化は見られています。
 ――具体的な損傷事例を教えてください
 湯川 凍結防止剤散布の影響による鋼橋の腐食事例では、中央道の一宮御坂IC~甲府南IC間に架かる境川橋(下り線/橋長47.6m/鋼単純合成鈑桁橋)があります。伸縮装置からの漏水で桁端部および支点上下フランジに孔食と断面欠損が発生し、2015年度の点検で診断区分Ⅲと判定されました。支点部手前にLアングル材とサンドル設置での応急処置後、WEBカメラでの24時間監視や、地震時の橋軸直角方向への影響を考慮した通行止め基準の見直しなどの対応を行い、本補修として当て板補修を実施しました。


中央道 境川橋(下り線)の損傷と対策

 重交通区間の中央道・高井戸IC~調布IC間の高井戸高架橋(上り線/橋長1,296.7m/鋼単純合成鈑桁橋)では、主桁および横桁取付部(溶接部)に長さ19cmにわたり疲労き裂が発生し、当て板補修を行っています。


中央道 高井戸高架橋(上り線)の損傷と対策

 床版の疲労損傷事例としては、中央道(上野原IC~大月IC)の御前山第一橋(下り線・右ルート/橋長138.0m/鋼ランガー橋)で床版下面にひび割れと剥離が発生しました。耐力不足と判定された箇所では炭素繊維補強工を実施し、その他の箇所は剥落対策シートを施工しています。


中央道 御前山第一橋(下り線・右ルート)の損傷と対策

 ――疲労き裂ではどのような損傷事例がありますか
 湯川 高井戸高架橋と同様に、主桁および横桁取付の溶接部のき裂が生じています。確認された損傷の補修対応は進めていますが、疲労劣化については過積載重量車両の取り締まりが重要です。支社管内で2015年度から2019年度に実施した大型車の検問では、検問台数の10%前後の車両が総重量を超過する違反車両でした。そのため、違反車両対策強化の観点から、検問所やIC入口での取り締まりに加えて、本線での自動計測を開始しています。
 ――御前山第一橋の炭素繊維補強工と剥落対策工での採用工法は
 湯川 炭素繊維補強工はPVM工法(ショーボンド建設)を採用し、剥落対策シートはVM-3(コニシ)とスマートメッシュ(西日本高速道路エンジニアリング四国)を採用しています。
 ――ASRによる劣化は
 湯川 管内での発生は見られていません。
 ――トンネルでは、おもに覆工コンクリートの目地部のひび割れや漏水が確認されているとのことでしたが、地山が影響していると推察される変状は発生していないですか
 湯川 中央道の辰野トンネル(延長 上り線261m、下り線220m)の補修・補強工事を実施しましたが、同トンネルでは車線方向に重大なひび割れは発生していませんでした。在来矢板工法のトンネルですので、継目部などに損傷が目立っていました。


辰野トンネル(下り線) 施工前(左)と施工後(右)(弊サイト掲載済み)

 ――背面空洞注入対策が必要なトンネルは
 湯川 NEXCO中日本では過去に全チューブを対象に調査を行い、背面注入工を実施しました。しかし、点検で覆工に損傷が出てきている箇所については新たな背面空洞がないかをさらに調査しています。

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