耐震補強は現在精査中
ロッキング橋脚の耐震補強は全数完了
――耐震補強の進捗状況は
伊藤 昭和55年(1980年)道示以前の設計によって施工した橋脚については耐震補強を概成しています。
――平成8年(1996年)道示以前では
伊藤 対象としては東海北陸道の橋梁となりますが、今後、耐震補強を行っていきます。
――精査は終わっていますか
伊藤 まだ、精査中です。
――発注は
伊藤 これからです。
――落橋防止装置の設置状況は
伊藤 北陸道はほとんど手がついていなくて、これからとなります。さらなる耐震補強のなかで、リニューアルプロジェクトとの工程調整を鑑みながら進めていきます。
――耐震性能2に合わせるということですね
伊藤 そうです。
――リニューアルプロジェクトのなかで耐震補強を行うということですか
伊藤 まだ決まっていませんが、そのなかで行ったほうが足場の架設や現場に入るタイミングを考えると理想的な場合があります。ただ、橋梁によって状況が違いますので、一律でセットにするということではありません。
――設計や受注時の不落・不調で名古屋支社は頭を悩ましていますが
伊藤 現状、設計も工事も発注段階に至っていないので、他支社の状況を見ながら進め方を思案しているところです。震度6弱以上の地震発生確率26%以上の地域から管内は外れていますが、今後対策は行うことになると思いますので、そのときにスタートできるように模索しています。
――2020年度に行う耐震補強工事はないということですか
伊藤 そうです。
――ロッキング橋脚の進捗状況は
伊藤 管内には本線橋で18橋あり、昨年度末にすべて完了しました。管理外の跨道橋3橋(受託分)についても完了しています。
――長大・特殊橋の耐震補強については。東名、中央道では苦労しているようですが
伊藤 当社では順次、太平洋側から進めてきているところで、管内ではすぐに着手するという状況ではありません。時期をみながら補強をしていきます。
――トラス橋やアーチ橋は管内にありますか
伊藤 斜張橋はありません。アーチ橋、トラス橋は数橋存在します。
――具体的に耐震補強設計が進んでいるものは
伊藤 ありません。
――耐震照査そのものは完了していますか
伊藤 これからです。
――今年度に行う予定はありますか
伊藤 リニューアルプロジェクトなどのほかの事業との絡みをみながら、優先順位を決めていきたいと考えています。
健全性診断Ⅲは151橋 20年度に48橋で措置
ASR 常願寺川、神通川、早月川産などの骨材が反応しやすい
――長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況と、床版以外の補修・補強事例について
伊藤 健全性診断Ⅳで評価された橋梁は管内にはなく、Ⅲについては次回点検までに措置することで進めています。2019年度末でⅢの橋梁は151橋あり、2020年度は48橋の措置をする予定です。床版以外では、やはり塩害ですので、張出部や端部の断面修復がおもな補修内容となっています。
――断面修復では塩分吸着や電気防食を行うケースもありますが
伊藤 必要に応じて亜硝酸リチウムを添加したりしていますが、それは斫り後のコンクリート構造物のなかに塩化物イオンが若干残っているなどのことを含めて、再拡散のシミュレーションをして、必要であればそのような対応を取っています。ただ、基本は一般的なポリマーセメントモルタルによる断面修復です。
――ASRや塩害などによる劣化状況は
伊藤 ASRの影響、懸念される地域としては富山、金沢、福井ですが、損傷として顕在化しているのは富山保全・サービスセンター管内のみです。劣化部位では、橋台やボックスカルバートなど、水に接する箇所が顕著に現れています。
管内のASRによる損傷事例
――早く反応する骨材と遅いものがありますが
伊藤 そのようなことも含めて継続的にモニタリングをしていますが、具体的な対策には至っていません。これまで遮水を目的としたひび割れ注入工やライニングを実施していて現段階では収束傾向をモニタリングで確認しています。
――骨材の特定ができているという資料を見たことがありますが、管内でも特定は進んでいるのですか
伊藤 当時使用した骨材の調査はしていて、顕在化しているものでは常願寺川、神通川、早月川などの骨材が反応しやすいことがわかっています。
――それらの骨材は富山のみで使われているのですか。それとも金沢などのほかの地域でも
伊藤 金沢では顕在化していませんので、富山のみで調査をしています。遅行性の骨材については今後、調査をしていくことになります。
――遅行性骨材の損傷の仕方はケースとして掴んでいるのですか
伊藤 河川水系ごとに発現するスピードが違うということだけが見えてきています。常願寺川、神通川、早月川は早いということがわかってきました。
――上部工にASRが出るケースもありますが、管内では
伊藤 まったくないわけではありません(常願寺川橋など)が、ほとんどが下部工です。
――旧JHでは古いタイプの排水溝が漏水を助長して、床版と高欄の継ぎ目部からハンチへしみ出し、塩害を拡大している箇所があります。管内ではそうした事態での対策を行っていますか
伊藤 対策としては継ぎ目さえつくらなければそうした事態は起こらないだろうということで、更新事業ではプレキャスト床版製作時に床版と地覆を一体打設を行うことで止水性を向上させています。管内では、除雪トラックなどが通りますので、現在において鋼製排水溝はありません。